誰でも自由に行き来できるパークを上に伸ばすイメージの、新ソニービル

2022年に開業予定の新ソニービルも、街に開かれたデザインになるだろう。ソニーの情報発信基地として、またブランドの象徴として銀座の街を彩るはずだ2022年に開業予定の新ソニービルも、街に開かれたデザインになるだろう。ソニーの情報発信基地として、またブランドの象徴として銀座の街を彩るはずだ

前回、2017年のソニービルの解体後、2018年に「銀座ソニーパーク」ができるまでのいきさつなどをご紹介した。今回は、その後に完成する新ソニービルの話などを紹介しよう。

銀座ソニーパークの運営終了後の2020年秋以降ビルの建設を開始し、2022年秋に新ソニービルの営業が開始される予定となっている。
「新ソニービルは、パークと同様に街に開かれたビル、invitingという構想を引き継ぎます。公園が縦に伸びるといったイメージでしょうか。単にショールームやレストランという決められた機能を持たせるだけでなく、もっとフレキシブルな、パークというプラットフォームの中で色々なアクティビティが催されるような施設にしたいと考えています」と永野さん。さらに続ける。

「平井(現社長)が提唱している我々のミッションが『商品やサービスを通じてお客様に感動をもたらす』こと。この軸をぶらさずにエレクトロニクスの商品であるとか、エンターテインメント、音楽・映画、金融ビジネスなどの事業は進化させていきます。しかし、これから新しい事業がどうなるかということは、まったくわかりません。50年前にはエレクトロニクス事業しかなかったわけで、映画や音楽会社を持つことはわからないことでした。ましてや保険会社、不動産会社を持つことなど想像もつくはずがありません。
逆に考えると、今後どのような事業に参入するかわからない、時代がどう変化していくかわからない中で50年先を見据えて新しい建物を建てるとなると、どこまでフレキシビリティがあるかが求められるでしょう。そういった意味では、パークというコンセプトは自由度が高く、色々な使い方ができるのではないかと思います」

「銀座の街全体でお客様をおもてなしする」。その役目を果たしたソニービル。その思想は新ソニービルにも受け継がれる

建築中、1964年10月の写真。ソニービルが建ったことで銀座の街が大きく変わった。今回のソニービルの建て替えも、一企業だけの問題ではなく銀座の街全体の問題でもある。大いに注目が集まる一大イベントともいえるだろう建築中、1964年10月の写真。ソニービルが建ったことで銀座の街が大きく変わった。今回のソニービルの建て替えも、一企業だけの問題ではなく銀座の街全体の問題でもある。大いに注目が集まる一大イベントともいえるだろう

ビルの建て替えは一企業だけの問題ではない。街全体の問題でもある。
「建物自体が街の一部ですので、我々が好き勝手に建てていいわけではありません。銀座の街、ひいては東京がどういう歴史をたどってきて、これからどこに行くのか、我々が新しい建物を建てることによって銀座の街がどう変わるのかということも考えながらプランニングを進めてきました」と永野さん。

「この場所の特殊性を考慮した建て方が必要だと考えています。と言うのも、ソニービルが建つのは、銀座でも1・2を争う目に留まりやすい場所だからです。晴海通りと外堀通りというメインストリートの交差点に面していること、地下鉄や駐車場と直結した交通アクセスの良さ、電車からも見える非常に良い立地にあります。その魅力を最大限に生かすにはどうしたらよいかということを今も議論しています」(菅原さん)

銀座の街には、自分が所有する建物だけ繁栄すればいいという考え方はやめて、街全体としてお客様をもてなし、楽しめる場所にしましょうという思想があるという。
「ひとつのビルでお客様を囲い込んで『ショッピングはすべてうちのビルの中でやってください』という考え方はやめましょうということです。ビルへの出入りをしやすくすることで、ひとつのビルを楽しんだら次のビルも同じように楽しめるという、ヒューマンスケールを大切にした考え方ですね。気軽にビルに出入りして、ぶらぶらショッピングを楽しめる街にしたいですし、新ソニービルにもそのような考え方を引き継いでいきたいと思います」(菅原さん)

社員一人ひとりに宿る創業以来のDNAを、銀座ソニーパーク、新ソニービルでも具現化

お話を伺ったソニー企業株式会社 代表取締役社長 菅原健一さん(右)と、ソニー株式会社 GSPプロジェクト室 室長 永野大輔さん(左)。新しいソニービルの詳細は未定で、これから議論を重ねていくという。ソニーの提案を楽しみに待ちたいお話を伺ったソニー企業株式会社 代表取締役社長 菅原健一さん(右)と、ソニー株式会社 GSPプロジェクト室 室長 永野大輔さん(左)。新しいソニービルの詳細は未定で、これから議論を重ねていくという。ソニーの提案を楽しみに待ちたい

ソニービルが解体され、パークとして活用後に新しいビルを建てるという今回の壮大なプロジェクト。社内ではどのように受け取られたのだろう?

「驚いていましたよ、こう来たか、みたいな」と笑う永野さん。約3年前からスタートした今回のプロジェクト。そのプロジェクトメンバーは、ソニーの社員はもちろん、建築の専門家や建築の歴史家、キュレーター、菅原さんのようなビルオーナーなど外部関係者も名を連ね、時期や案件に合わせて入れ替わり議論を交わしたという。建て替え発表後、有識者を招いたトークセッションを何度も行っているが、その内容はすべてインターネット上で公開されている。一企業がここまでオープンにした形で建物の建て替えを進める事例はなかなかないだろう。

「既存のルールにしばられずに人と違ったことをやる。人がやっていないことをやり、新しいルール、次のスタンダードをつくるという精神が、創業以来のDNAとして社員一人ひとりに受け継がれています。今回の建て替えをソニーらしくということも、ソニーの社風から来ているように感じています。このようなやり方が次のスタンダードになるかわかりませんが、まずは2018年夏に開く銀座ソニーパークを楽しみにしていただきたいですね」(永野さん)

「銀座の街が抱えている二面性というのでしょうか。一方で伝統と格式を重んじる、誇りをもった街であるということ。もう一方で、今までのステイタスを守るだけでは衰退していくだけであり、銀座が日本発、世界初となる新しいものをどんどんつくっていきたいという思いがあります。昭和のネオンの時代からそうなのですが、銀座で大規模な、驚くような広告がなされたという歴史もあり、この場所に建つソニービルがその役割を果たすことを期待されている部分も非常に大きいと思います。我々が銀座という街にいちばん貢献できる部分はそこではないでしょうか」と菅原さん。

銀座の一等地に公園をつくるという斬新な発想。そして、50年間お世話になった銀座に貢献したいという感謝の心。両方が融合し2018にオープンする「銀座ソニーパーク」、その後2022年秋に開館する新ソニービル。銀座にどのような新風を巻き起こすのか、今から楽しみでならない。

■銀座ソニーパークプロジェクト
http://www.sonybuilding.jp/ginzasonypark/

■It's a Sony展イベントページ
http://www.sonybuilding.jp/ginzasonypark/event/

■It's a Sony展リリース
https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201611/16-108/

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