豊橋中心市街地の過去・現在・未来を物語る
「水上ビル会場」と「豊橋駅前大通会場」

あいちトリエンナーレ2016がスタートした。(2016/8/11~2016/10/23まで開催)
以前、過去のあいちトリエンナーレがまちにもたらした効果や空き家の活用や今回の見どころなどについて、あいちトリエンナーレ実行委員会事務局の方に話を伺って紹介した。そして今回は、古い建物が有効活用されていることに着目し、実際に豊橋・岡崎・名古屋の3会場を訪ねてみた。

まず足を運んだのは、豊橋の水上ビル会場と豊橋駅前大通会場。幸運なことに、豊橋市都市計画部まちなか活性課課長の伊藤紀治(いとう としはる)さんが会場にいらっしゃったのでお話を伺った。

会場となっている水上ビルが建った経緯について尋ねると、次のように教えてくださった。
「名豊ビル界隈には、もともと大豊商店街という戦後にできた商店街があったんですが、大豊商店街のあった場所あたりに商業ビルを建設することになりました。ちょうどその頃、中心市街地を流れる牟呂用水がむき出しになっていたので、蓋をする形でビルを立てようという計画があり、大豊商店街はそちらへ移転することになりました。それが現在の水上ビルです。あれから50年が過ぎ、水上ビルは今年で51年目を迎えました。将来は取り壊しになる可能性が高く、あと20年は生き延びますが21年後には、昭和の魅力あふれる水上ビルの姿を見ることはできなくなってしまいます」

また、あいちトリエンナーレ会場となったことで期待する効果については、こう思いを語られた。
「あいちトリエンナーレの会場になると決まったとき、これはチャンスだと思いました。豊橋には“sebone(せぼね)”という、水上ビルを中心とするアートイベントを10年ほど続けている有志団体があります。さらに、“穂の国とよはし芸術劇場PLAT”のスタッフたちには、まちに出て芸術文化を根付かせる活動をしていきたいという思いがありました。そうした背景があるなか、トリエンナーレ会場になることで新しい文化を創造発信する第一歩にできると期待したんです。たとえば、アーティストに水上ビルのテナントを工房として貸して、製作活動を見に来てもらうとか、そんなこともできるかもしれません。あいちトリエンナーレをきっかけに新しいまちのストーリーを生み出し、豊橋ならではの市民文化を創造発信していきたいですね」

あいちトリエンナーレの開催期間中、伊藤さんはできるだけ会場を訪ねるつもりとのこと。もしお会いすることができたら豊橋とアートの関係など興味深い話を伺えるかもしれない。

(左上)ラウラ・リマさんの“フーガ”を見ることができる水上ビルは、多数のビルが800mにわたって連なるビル群である<br />(右上)約100羽の鳥が昔懐かしい4階建ての居住空間のなかを自由に飛び回っている <br />(左下)開発ビルの10階から望む豊橋市内の風景 <br />(右下)会場の一つである、はざまビル大場(左上)ラウラ・リマさんの“フーガ”を見ることができる水上ビルは、多数のビルが800mにわたって連なるビル群である
(右上)約100羽の鳥が昔懐かしい4階建ての居住空間のなかを自由に飛び回っている 
(左下)開発ビルの10階から望む豊橋市内の風景
(右下)会場の一つである、はざまビル大場

生活空間と現代アートの共存を鑑賞できる会場

続いて訪ねたのは、岡崎の康生会場「岡崎表屋」と六供会場「石原邸」。

岡崎表屋のビルは国道1号線沿い、岡崎公園の東側にポツンと建っている。戦後に建てられたモダニズム建築の3階建ビルは、株式会社岡崎表屋というガソリンスタンドを運営する会社の事務所兼社員寮として使われていたという。1階の事務所は現在も使われているが、2階から上の寮は空き家になっており、ここにインド出身のアーティスト、シュレヤス・カルレさんのインスタレーションが展開されている。

もともと建物内にあった家具や雑貨を利用し、その空間に溶け込むようにアートが展開されているため「部屋の内装じゃなくて作品だったんだ…?!」と驚くこともしばしば。昭和の日常的な空間と現代アートが共存しているところがユニークだ。

一方、石原邸は幕末期に建てられ154年間生き続けている古民家で、正式な名称は「旧石原家住宅」という。戦時中、周辺一帯が戦火にみまわれるなかそれを逃れた建物だそうで、国の有形文化財に登録されている。もともと庄屋であり商家であったという建物だけに、隠し階段やかまど、井戸、土蔵といった幕末の生活がわかるような設えを見ることができる。日本式庭園を眺めながら現代アートを鑑賞できるのは、この会場ならではの醍醐味だ。

(左上)「岡崎表屋」の外観。国道1号線「康生通南」交差点を西へ150mほど進むとビルがある <br />(右上)一見レトロな台所だが、実は作品 <br />(左下)縁側の奥に展示されているのは愛知県出身のアーティスト佐藤翠さんの作品「鏡のロイヤルブルークローゼットⅡ」 <br />(右下)土蔵に展示されている愛知県出身のアーティスト柴田眞理子さんの陶芸作品は、手にとって移動させることができる。<br />「陶芸作品を持ったときの手触りや緊張感を感じてもらいたいというアーティストさんの思いが込められているんです」と運営スタッフの方が教えてくださった(左上)「岡崎表屋」の外観。国道1号線「康生通南」交差点を西へ150mほど進むとビルがある
(右上)一見レトロな台所だが、実は作品
(左下)縁側の奥に展示されているのは愛知県出身のアーティスト佐藤翠さんの作品「鏡のロイヤルブルークローゼットⅡ」
(右下)土蔵に展示されている愛知県出身のアーティスト柴田眞理子さんの陶芸作品は、手にとって移動させることができる。
「陶芸作品を持ったときの手触りや緊張感を感じてもらいたいというアーティストさんの思いが込められているんです」と運営スタッフの方が教えてくださった

アートラボあいちにも作品が展示されている

名古屋では、あいちトリエンナーレに関する情報や、地域のアート情報の発信拠点となっているアートラボあいち大津橋と長者町を訪ねてみた。

まずはスクラッチタイルが貼られているのが特徴というアートラボあいち大津橋に足を運んだ。1933(昭和8)年に建てられた古い建物とのことだが、なかに入ってみると落ち着きのある洒落たつくりで古めかしさを感じない。2階に多目的スペース及び事務室があり、3階は展示室になっていて作品を見ることができる。

開催から1週間程しか経っていなかったが、事務室の運営スタッフに話をお聞きしたところ、1日平均50人ぐらいが情報収集や作品を見に訪れるとのことだった。ときにはランニングで付近を通る方が「前から気になっていて入ってみたかった」と立ち寄ることもあるそうだ。

多目的スペースには芸術などに関する書籍が豊富に揃っており、トリエンナーレの情報はもちろん全国の芸術祭や東海地域で開催される美術展などの情報も発信している。

続いて訪ねたアートラボあいち長者町でもスタッフに話を伺うと、まちなかにあるだけに1日平均150名ほどの人が立ち寄るとのことだった。1・2階が飲食店になっているため、店内の階段を使って上の階にあがっていく。3階が事務室及び情報スペースで4・5階に作品が展示されている。アートラボあいち長者町ではトリエンナーレの情報と、長者町界隈に特化した情報を発信している。

もう1軒、アートラボあいち長者町に程近い、長者町会場の純喫茶クラウンを訪ねてみた。ごく普通に営業している喫茶店になぜトリエンナーレの作品が展示されているのか気になったので店主に尋ねると、長者町のまちおこし活動の一環として快く協力しているとのことだった。

ちょっと変わった視点で3会場を紹介させていただいたが、もちろんどの会場のインスタレーションも個性的で魅力にあふれているので、1会場ずつじっくりとアートの旅を楽しんでいただきたい。

あいちトリエンナーレ2016
http://aichitriennale.jp/

(左上)アートラボあいち大津橋入口。通りかかる人は何の建物か気になるようで、じっと見つめたり振り返ったりしていた <br />(上中央)内装のところどころにスクラッチタイルを見ることができる <br />(右上)丸い窓や流線型の手すりなどが洒落ている<br />(左下)1階の飲食店内の階段を使って3階まで上がっていくと、アートラボあいち長者町がある<br />(下中央)トリエンナーレの情報と長者町界隈の情報が豊富にそろっている<br />(右下)愛知県出身のアーティスト今村文さんの作品を見ることができる純喫茶クラウンは創業64年の老舗店(左上)アートラボあいち大津橋入口。通りかかる人は何の建物か気になるようで、じっと見つめたり振り返ったりしていた
(上中央)内装のところどころにスクラッチタイルを見ることができる
(右上)丸い窓や流線型の手すりなどが洒落ている
(左下)1階の飲食店内の階段を使って3階まで上がっていくと、アートラボあいち長者町がある
(下中央)トリエンナーレの情報と長者町界隈の情報が豊富にそろっている
(右下)愛知県出身のアーティスト今村文さんの作品を見ることができる純喫茶クラウンは創業64年の老舗店

2016年 09月04日 11時03分