誰でも楽しく家の履歴を蓄積できる「うちレコ」とは?

ホームインスペクター(住宅診断士)の育成と支援をしている日本ホームインスペクターズ協会は、2016年3月、自宅の修繕履歴やリフォーム箇所、設備の品番などの住宅の情報を手軽に記録ができるWebサービス「うちレコ(簡易版住宅履歴情報蓄積システム)」を公開した。
「うちレコ」は、住まいに対し、「いつ・だれが・どのように」新築や修繕、改修・リフォーム等を行ったかを記録した"住まいの履歴書"ともいえるシステムだ。無料会員登録することで誰でも利用ができる。
物件の住所や構造、間取りや面積といったスペック情報から、住戸内で使用している家電や設備の品番やサイズといった設備リスト、そして電球交換や掃除、メンテナンスなどのToDoを登録していくことで、マイページに表示される建物評価額(※金融機関による正当な評価額ではなく、サービスの利用を楽しむ上での数値)や、建物の情報を記録が増えていくことで増えていく愛情度が表示される仕組みだ。

「これまで住宅履歴情報蓄積システムが抱えていた課題の一つに、蓄積するデータが消費者にとって馴染みの薄いデータばかりで、自主的に活用したくなる仕組みではない点がありました」と語るのは、「うちレコ」の開発推進メンバーの一人である、日本ホームインスペクターズ協会理事 田中歩氏である。
田中氏は、「うちレコ」の開発に至った経緯について、
「我々が運営している住宅履歴情報蓄積システム『HIRO(Home Inspector's Recording Operator)』は、自宅所有者が住まいのプロに委託し、修繕やビルドアップといった住まいの住宅履歴一式を保存しようというものです。しかし、一般消費者の視点に立つと、住宅に関連する図面や住宅性能評価などの情報は、日常生活においてはあまり馴染みがなく、単にデータを蓄積するだけ。そのデータを進んで活用したくなるものではありませんでした。履歴を活用しきれていないのは、住宅を長く維持していく上で大きな問題だと捉えました。そこで、もっと簡易に、一般消費者の実生活に寄り添った形で、住宅履歴を記録することはできないかと考えました。
うちにまつわるレコード(履歴)を色んな形で残していく、それが"うちレコ"です」と語る。

簡易版住宅履歴情報蓄積システム「うちレコ」の入力画面</BR>
(左上)マイページには入力項目に応じて、建物評価額や愛情度が表示される (右上)住宅のスペックを入力する</BR>(左下)家電や設備のメーカーや品番を入力 (右下)ToDoリストとして、やるべきこと、実施予定日などを入力簡易版住宅履歴情報蓄積システム「うちレコ」の入力画面
(左上)マイページには入力項目に応じて、建物評価額や愛情度が表示される (右上)住宅のスペックを入力する
(左下)家電や設備のメーカーや品番を入力 (右下)ToDoリストとして、やるべきこと、実施予定日などを入力

"収納王子コジマジック"こと小島弘章氏が語る「収納」と「家」の密接な関係とは?

「うちレコ」は、住宅の情報を蓄積することを目的とするのではなく、消費者がすすんでデータを活用しやすいように設計されたという。日々行う収納や整理整頓をする上で必要な、家具や家電の製品情報や寸法、天井高や窓の寸法などが書かれた設計図を登録するなど、いつでも参照できるメモのような使い方ができるのだ。
2016年3月18日に開催された発表会では、この「収納からみた住宅の維持管理」というテーマについて、その整頓術が注目されているタレント"収納王子コジマジック"こと小島弘章氏が登壇し、収納のプロという視点から、収納と家どの関係性について語った。

小島氏によると、"収納や掃除は、家のことを知る第一歩"であるという。
「収納をしよう!と心がけることは、今ある環境を工夫するために家を隅々まで調べる、つまり、家を大切に扱おうという意識に直接結びつくものだと考えています。また、家の中を整理整頓することで、家の異常にいち早く気づきやすくなるという重要な役割もあります。新しく収納棚を設置しようと家具をずらしてみると、湿気で一面カビだらけだった…という経験はありませんか?人間の病気と同じで、家の異常も早期発見が大切。日々、収納や後片付けする意識や行動が、家のメンテナンスをすることにつながっているんです。
うちレコを実際に利用してみて、各家庭における家の取扱説明書のような存在になるツールだと思いました。外出先でもスマホで簡単に見ることができますし、家に関する情報なら、すべてこのサービス内にあるという状態がすごく安心感があります。家の履歴を入力をしなくてはという義務のような意識ではなく、愛着のある我が家の情報をどんどん書き込んでいく、自分だけの手帳のような感覚に近いかもしれません」。

収納と家庭の密接な関係についてトークが展開された</BR>
(左)収納と家庭の密接な関係についてトークが展開された
(左)"収納王子コジマジック"として活躍するタレント 小島弘章氏 (右)インタビュアーを務めた日本ホームインスペクターズ協会理事 大西倫加氏

政府主導で蓄積する住宅履歴 いまの住宅データベースに足りない「住宅のコンディション」

中古住宅のより根拠のある価格を出すには、3つの要素が必要だと語る日本ホームインスペクターズ協会理事長の長嶋修氏中古住宅のより根拠のある価格を出すには、3つの要素が必要だと語る日本ホームインスペクターズ協会理事長の長嶋修氏

この「うちレコ」のプロジェクトは、国土交通省平成27年度補助事業によって実施されている。消費者の住宅に対する意識を変化させて、住宅の耐用年数を伸ばそうと啓蒙することだけが目的ではないという。

2015年以降、IT(情報技術)を取り入れて、不動産取引データを"見える化"しようとするサービスが次々に登場している。
しかし、日本ホームインスペクターズ協会理事長の長嶋修氏は、ITを取り入れ、中古住宅の評価額を自動的に算出する仕組みに対し、価格推定の根拠がまだまだ弱い点を指摘する。
「これらの中古マンションの価格推定エンジンは、インターネット上に出ている不動産価格を参考に算出しており、価格に根拠が足りません。より根拠のある中古住宅の価格を出すには、①新築当時の図面(竣工図書)や、リフォーム・修繕をしたデータが揃う住宅データーベース、②住宅診断による現時点での建物のコンディションの把握、③住宅履歴、住宅のデータの3つが必要です」と語る。
特に建物のコンディションの把握に関して国土交通省は、2013年に、「インスペクションガイドライン」を公表している。
不動産売買時の重要事項説明書に「ホームインスペクションの有無とその内容」、売買契約書に「売り主提供情報の確認のため、売買契約後一定期間内にインスペクションでその状況を確認できる」といった条文を追加予定である。

こうした住宅の履歴からわかる「コンディション」は、建物の資産価値にも影響を及ぼす重要な情報なのだ。

住宅履歴情報による金融担保評価への影響は?

また、長嶋氏はこうした住宅のコンディションや住宅の修繕履歴などの蓄積は、アメリカなどでは既に行われていることだと語る。
「州によってその考え方は変わるものの、ある一定レベルの住宅情報を金融機関に提出することで、担保評価が変わってくるんです。ハワイ州を例にあげると、自宅所有者が過去のリフォームや修繕箇所といった住宅のデータベースに加え、設計図面やリフォーム図面を、たとえ有償であっても自主的に集めます。」

住宅の情報は、日頃馴染みがなくどうしても無味乾燥なデータになりがちである。当然、情報を蓄積するモチベーションは生まれづらい状態と言えるだろう。しかし、人生でもっとも大きな買い物の一つでもある住宅のことを、もっと知っていてもよいのではないだろうか。
自宅をより住みやすく、居心地の良い環境へ整えていく「収納」によって楽しく家の情報が蓄積されていけば、おのずと自宅の構造や異常を把握することにつながり、愛着を持つことにもなると思う。

今回、インタビュアーを務めた日本ホームインスペクターズ協会理事 大西倫加氏は、「今後の日本では、住宅を長持ちさせることが求められています。物を大切に扱おうとする気持ちや受け継ぎたいという気持ちは、住宅にも同じことが言えます。住宅の維持管理をするためには、いつ、何をどうしたのか、というこれまでの履歴情報が不可欠です。収納を通じて家に関心を持つことで、本来であればもっと長く使えるはずの住宅を、より長く使って欲しい。そして、同じ価値観を持つ人に受け継いでもらいたい」と語った。

近い将来、住宅のあらゆる情報が"見える化"され、消費者がより正当な不動産価格を、簡単に入手できる時代がやってくるのだろうか。「収納」を入り口として、一般消費者が能動的に住宅データを残す仕組みの構築が、不動産の"見える化"の一助になることを期待したい。

2016年 07月01日 11時07分