筑後地方のDIYリノベ1泊2日の旅に参加して
2015年11月14日、15日。八女、柳川、大牟田の筑後地方のDIYリノベーションスポットをバスで巡る「筑後地方のDIYリノベ1泊2日の旅」に参加してきた。
このバスツアーは、2015年11月9日~15日までの1週間に渡り、福岡県の全12エリアで実施されるイベント「FUKUOKA DIYリノベWEEK 2015」のプログラムの一つとして催行されたものである。実際に各地域のリノベーション物件を巡り、実際にそこに住む人との交流や、DIYによって生まれ変わった空間を実際に観て触れることで、まちの変化を体感できる内容となっている。
FUKUOKA DIYリノベWEEK 2015を主催するNPO法人福岡ビルストック研究会の吉原 勝己理事長は、福岡ではここ数年古い家屋をリノベーションして新しい動きを起こそうという若い人が増えており、彼らによって創り出された場所には活気のある人達が集まっていく様子を見てきたという。「こうした動きが将来衰退していく地方都市の在り方を変えるきっかけになる」そう感じた同NPOは2014年、第1回目となるFUKUOKA DIYリノベWEEKを開催。2回目となる今回は、前回の100人の参加者を大幅に上回る900人以上が参加するイベントへと成長した。
今回訪れる八女福島、柳川、大牟田は福岡県の中でも都市部から遠く、人口減少による空き家の活用が特に表面化している地域である。この3つの地域がリノベーションにより町にどのような変化が起こっているのか、①八女福島編、②柳川、大牟田編、③DIYリノベシンポジウム編という全3回の連載でレポートする。
白壁土蔵の町家をDIYリノベ、活用へ
まず最初に訪れた地が「八女茶」で有名な八女福島である。
八女福島は400年前に城下町として形成された町で、幕末は久留米藩の商人の町として栄えた。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、現在100棟以上の白壁土蔵の町家建築が残されている土地である。
中でも今回のまち歩きで内装を見学することができたお茶店「このみ園」の建物は築300年を超えている。
こうした建物の中には、空き家や、倒壊の危険から取り壊される家があるが、こうした物件を有効活用したいと2003年に発足したのがNPO法人八女空き家再生スイッチ(旧:八女文化振興機構)である。伝統的建造物群保存地区である八女福島地区の町並みの保存継承を目的に、民間企業からの資金調達などで運営されている組織で、これまで八女福島の店舗や住宅を中心に計40件の空き家を、他のNPOと協働して修復、DIYリノベーション、管理運営をしてきた。地元のUターン、Iターンを受け入れたり、空き家の相談を受ける窓口、民間で資金調達できる仕組みなどと共に、一緒に職人さんたちを育てていきたいという想いもあるという。
かつての町の中心部 旧八女郡役所の再活用に向けて
その八女空き家再生スイッチが現在手がけているのが、旧八女郡役所の建物だ。およそ130年前に建てられた500平米近い木造大型建築物は、老朽化からいよいよ屋根崩落の兆しを見せはじめ、住民から不安の声があがっていたという。
本来であれば建物を取り壊し、駐車場などに整備するのが一般的だ。しかし、数多くの歴史的建造物が残る八女でも、ここまで大型の木造建築は残されていなく、なによりも旧八女郡役所という町の主要な機関であったこの建物の歴史をどうにか繋ぎ続け、再活用したいという八女空き家再生スイッチが譲り受け修復することになった。地元大工と共に必要最小限の修理で建物を維持し、土壁と木工事の一部が終わり徐々にその全体像が見えてきた。
今のところこの建物の活用方法として店舗が入る予定だが、一部役所の機能を入れたら良いのではという意見もあり、その活用方法が期待される。
こうした重要伝統的建造物の外観の改修には、行政からの補助が出る。しかし八女空き家再生スイッチは、まずは自分たちの手で資金調達をしながらプロジェクトを進めることが大事だと考えている。「地元の町並み保存という意識を高めていくためには、老朽した建物の再生・活用は自分たちでもできるというところを見せたい、そして住みやすい街を作っていく」と同NPO事務局長中島さんは言う。
人と人を繋ぐ、まちをつくる左官体験
ツアー2日目のプログラムでは、ツアー参加者が実際に建物に漆喰を塗る左官体験ワークショップも開催された。
八女福島では小学校の総合学習の時間に「土壁塗り」も行われており、幼い頃からDIYに触れる機会があるのだそうだ。今回のワークショップは、そうした八女の建物がどのようにして造られているのかを実際に体験できるプログラムだ。
会場は元障がい者自立支援施設だった建物を、八女空き家スイッチが市から借り受けてDIYで改修した移住者向けシェアハウス「つどいの家」だ。
このワークショップの指導は、八女出身で京都の文化財、大阪城の修復にも携わった経験のあるベテラン左官職人の三宅洋児さん。現在、左官就業者の高齢化が進み、平成22年の国勢調査によると1975年(昭和50年)に30万人近くいた左官就業者も2005年(平成17年)には12万4,000人にまで減少している。こうした中、地元八女に戻り、左官を続ける数少ない職人の一人である。
今回は着色料も用意され、各々が真っ白な漆喰に好きな色を混ぜ込み、各々のオリジナリティ溢れる壁が仕上がっていった。
まちと人、人と人とを繋ぐ場に。
八女空き家再生スイッチの活動は、八女福島の建物やまちの良さを見直し、残された文化や歴史を繋いで活用することで、新しい人とまちのつながりを生み出している。
冒頭で触れた八女の老舗お茶店「このみ園」14代目店主の許斐健一さんは、この八女空き家再生スイッチの理念に賛同し、協力をしている一人だ。また、八女福島にある蕎麦店「史蔵」の店主は八女で生まれた後、信州で修行を積み、2010年にまたこの八女の地に戻り開業をしている。
ここ数年で八女福島には、町家を利用した新しい店舗が増え、新たな人の交流が生まれる兆しが見えている。
近い将来、八女福島のシンボルともなりうる旧八女郡役所の修復が完了し、まちがどのような場所になっていくのか。八女福島のまちの変貌に、引き続き注目していきたい。
次回は、バスツアーの後編である柳川、大牟田編をお伝えする。
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