8月8日、100年企業のビルを活用したチャレンジショップ「VASE」誕生

▲「かぁてん、かべがみ、かぁぺっと」の看板がレトロポップなツダインテリアのビル。まちづくり岡崎の交渉により、2年限定で活用できることになった▲「かぁてん、かべがみ、かぁぺっと」の看板がレトロポップなツダインテリアのビル。まちづくり岡崎の交渉により、2年限定で活用できることになった

徳川家康生誕の城「岡崎城」から歩いて15分ほどの岡崎市街地「康生(こうせい)」エリア。
クルマからも歩行者からも目を引く空色のビルが8月8日「VASE the social market hub」として生まれ変わった。

老舗インテリアショップの廃業に伴い売却されたビルを、2年間限定で活用するというVASEプロジェクトは、まちづくり会社「まちづくり岡崎」による大きな取り組みのひとつ。店づくりのノウハウに長けた運営チームと街の人々が手作業で解体し、リノベーションしてつくりあげた。

1階にはベトナム料理「フォー」の専門店、カフェ&バー、アンティーク家具、オリジナルオーダー家具、2階には手づくりはんこ、雑貨店、3階にはカイロプラクティックと、小さなお店が軒を連ねる。今後は「みんなで創るみんなの遊び場」として出店者を随時募集し、進化させていくという。

さて、このチャレンジショップとは? まちづくり岡崎とは?
地方都市の課題となっている「中心市街地の活性化」に向けて、新たな一手を打ち出している「まちづくり岡崎」。その熱く楽しいプロジェクトを紹介してみたい。

家賃2~3万円台でスモールビジネスを応援。中はとってもアートな空間!

オープンする4日前、「VASE」の中を案内していただいた。中はインテリアショップの面影を残しつつも、ウッディでカッコイイ空間。さらに2階、3階へつづく階段や廊下には、個性を爆発させたようなポップな絵が描かれている。
各フロアは既存の形態をうまく生かし、1階の店舗部分はフードコートに、2階の住戸部分は和室やキッチンごとに区画分けをし、1区画の賃料は2~3万円台/月で収まるようにプランニングされている。

VASEの運営チームをサポートする「まちづくり岡崎」の役員、長谷川伸介さんは、この1年間、康生エリアの出店希望者のサポートを行ってきた中でひとつの気づきがあったという。
「昨年、出店希望者40名ほどに会いましたが、初めての店舗経営で家賃が10万円以上出せる方はなかなかいません。僕たちは街に面白い仲間を呼び込みたいと思っていますが、その方たちも人生がかかっているため、無謀な計画の後押しはしたくはありませんでした」

ちょうど時同じくして、ツダインテリアのビルを2年借りるという話がまとまり、「小さなビジネスの集合体の場」であるVASEプロジェクトが進むことになった。
「家賃負担の少ないVASEは、まさにチャレンジショップ。ここで人の輪を広げて力をつけてもらい、2年後には康生エリアの空き店舗を借りられるようになればうれしいですね」

▲2年後にビルを解体するVASEは、大胆なアート空間に変身(トイレにも不思議な女の子が!?) 内装は、造作の専門チーム「みせづくり岡崎」が手掛けた▲2年後にビルを解体するVASEは、大胆なアート空間に変身(トイレにも不思議な女の子が!?) 内装は、造作の専門チーム「みせづくり岡崎」が手掛けた

空き店舗事業で大事なのは、「店を続ける」ための仲間づくり

中心市街地の活性化を目的として、全国に「まちづくり会社」が生まれている。「まちづくり岡崎」もそのひとつ。商店街の垣根を超えて60名の商店主が株主となり、2013年に誕生した。

「2013年は空き店舗のリサーチ、2014年は出店希望者の相談や支援を行ってきました。僕たちはまちの生の情報と人のつながりを持っていますし、自らが店舗経営者であることを活かして、収支の見通しもある程度アドバイスできます。出店希望者と一緒にまちを歩いて、気になる物件に直接交渉しようとしたら、偶然オーナーが先輩だったのですんなり進んだケースもありました(笑)」(長谷川さん)

こうしたまちづくり岡崎の熱意が実り、2015年7~9月はVASEをはじめ、アロママッサージ店や唐揚げ店など何人もの仲間が増えることになった。「でも何軒出店したという実績より、そのお店が続くことが大切です」と長谷川さんはキッパリと話す。

とくに100年以上続く老舗の多い康生の商店街は“ご縁”が大切にされているため、お店を軌道に乗せるためには人のつながりが欠かせない。
「新たな出店者にはオープン前からまちづくりの会合に参加してもらったり、オープン時にはご近所の商店主へのあいさつ回りやチラシ配りをすすめています。株主を中心に発行している『MACHI NOTE』でも、新たな出店者の情報を発信して認知を広げていますね」
まちづくり岡崎は、老舗のベテラン商店主と新メンバーをつなぐ“架け橋”の役目も果たしている。

▲「まちづくり岡崎」役員として、主に空き店舗事業を担当する長谷川さん。アジアン居酒屋のオーナーでもあり、今回「VASE」1階にベトナムフォーの専門店を出店した▲「まちづくり岡崎」役員として、主に空き店舗事業を担当する長谷川さん。アジアン居酒屋のオーナーでもあり、今回「VASE」1階にベトナムフォーの専門店を出店した

老舗の商店主は「まちと商うプロジェクト」を始動。商店街の強みとは?

まちづくり岡崎では「空き店舗の活用、リーダー育成、観光客おもてなし」を事業の柱として掲げている。3つに共通するのは商店街の顔づくり。中でも、商店主を対象にしたリーダー育成事業は「まちと商うプロジェクト」となり、“魅力発掘の場”へと進化している。

「老舗は代々からの顧客が多く、お客様はそのお店をピンポイントで訪れるため、商店街のにぎわいにつながりません。できれば3店舗は巡ってほしい、そのために商店主同士の情報交換・つながりの場を持ちましょう、というのがこのプロジェクトの始まりでした」

実際に1年目の座学を経て、2年目は実地として各店のコラボ企画を実施した。例えば「多肉植物の店と書店がコラボ」「刃物専門店の道具についての座談会」などのコラボを通して、お客様が回遊する仕掛けを試し、各商店主の方も他店に視野を広げるきっかけになったそうだ。

そして3年目を迎える今年は、「まちのブランディング」に着手。
「これは商店街の強みを見い出そうというものです。会議を重ねて出てきたのが、顧客に長く愛される専門店が多い⇒買ってからがお付き合いの始まり⇒アフターフォロー商店街、というキーワードですね。電池交換や着物クリーニングといった各々のお店が行ってきたおもてなしを大切にして、ファストファッションやネットショッピングにはない商店街の価値を発信できればいいと考えています」

▲新たな若い顧客の獲得に向けて「ママ×まちモニターツアー」を実施。「メニューを書いた看板が外にあるだけで入りやすくなる」といったママの生の声が商店主の刺激になったよう▲新たな若い顧客の獲得に向けて「ママ×まちモニターツアー」を実施。「メニューを書いた看板が外にあるだけで入りやすくなる」といったママの生の声が商店主の刺激になったよう

まちを回遊する取り組みはこれからも続々!

「岡崎こども城下町」は大盛況「岡崎こども城下町」は大盛況

岡崎城、岡崎の花火大会、ジャズのまち―。岡崎市の観光コンテンツは点在しているため、なかなか中心市街地への回遊に結びつかない。そしてクルマ移動が主流のため、駐車場の確保も避けられない課題だ。こうした課題は「『このまちに来たいという強い魅力』を点在させて解決していきたい」と話す。

若者世代の取り込みとしては、昨年秋に子どもたちが職業体験をできる「第1回岡崎こども城下町」を開催し、約3000人を集客した。今年10月には「第2回岡崎こども城下町」を開催し、親子で商店街をめぐって楽しむプランを考えているそうだ。

若い商店主が立ちあがり、ベテラン商店主とともに熱く進める岡崎のまちづくり。近隣の市に住んでいた私は、幼い頃映画を見に行くといえば岡崎の康生だった。あの頃のにぎわいをまた楽しみにしたい。

取材協力/まちづくり岡崎

2015年 08月24日 11時00分