日本庭園や茶室はそのままに、シェアハウスとして生まれ変わった日本家屋
▲住所非公開となっているため外観の全景を掲載できないのが残念だが、邸宅街の高台に建つ見事な門構えの『Q邸』は、築36年の木造平屋建て。美しい日本庭園や茶室はそのまま残しながら、シェアハウスとして入居者が暮らしやすいようにリフォームされた。ちなみにQ邸の“Q”は、その形がネコの後姿に似ていることから名づけられたそう福岡市内に『ネコと暮らせるシェアハウス』が誕生したと聞いて訪れてみた。場所は『博多』駅から車で15分ほどの距離にある南区平和(以下住所非公開)。福岡屈指の邸宅街として知られ、うっとりするような豪邸が建ち並ぶ閑静なエリアだ。
確認した住所を訪れてみると、“シェアハウス”という横文字を使うことが憚られるほどの純和風の日本家屋が建っていた。
敷地面積約150坪・築36年の木造平屋建ての豪邸が、どのようにして“シェアハウス”として生まれ変わったのか?
ここ『Q邸』の管理人である株式会社リノベースの江頭聖子社長にお話をうかがった。
「小さな頃からネコ好きで、実家でもネコを飼っていたので“ネコのいない生活”は考えられませんでした。転勤で上京することになったときにも、飼っていた『びーた』と『りんだ』のネコ2匹を連れて東京の賃貸マンションに引越したんですが、出張で家を留守にすることが多くネコたちに寂しい思いをさせてしまったんです」と江頭社長。
筆者もネコ好きなのでその事情がよくわかるのだが、一人暮らしでネコを飼おうとすると、留守中の餌やりやトイレ掃除など何かと心配事が多い。加えて賃貸マンションの場合は、ツメ研ぎ等で室内が傷みやすいというイメージもあってか『犬はOK、猫は不可』という物件も多く、“ネコ好きの賃貸暮らし”には様々な制約があるのが現状だ。
“留守中にネコの面倒を見てくれる人がいてくれたら…”
の想いからスタートしたコンセプトシェアハウス
賃貸マンションでの“ネコ生活”の大変さを実感した江頭社長だが、その一方で様々な事情によりネコを飼えない人たちが、ネコに会う目的で自宅へ集まってくるという楽しい経験もしたという。
「それなら、“自分が留守中にネコたちの面倒を見てくれる人と暮らせたら良いのに…”と考えるようになり、前職を辞め福岡へ戻ってから、3LDKのマンション1室でネコシェアハウス『福岡Qhouse』をオープンしました。
シェアネコは『びーた』と『りんだ』の2匹。もともとは私もそこに住むつもりでルームシェアを予定していましたが、すぐに3名の希望者が集まりそのまま満室稼働が続いたため、私は通い管理人になりました」(江頭社長談)。
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『福岡Qhouse』のオープンから1年半が経ったころ、江頭社長にある相談が舞い込んだ。「家主が亡くなって売りに出ている空き家があるので、リフォームをおこなったあと、シェアハウスの運営を依頼したい」と、知人づてに不動産投資会社から打診を受けたのだ。
「3LDK+茶室の空き家を『寄宿舎』としてリフォームすることを計画しているというお話でした。物件を見てみるととてもステキなお屋敷で、日本庭園やゆったりとした広縁もある…
絶対に一人暮らしでは借りられないような立派な豪邸でネコと一緒に暮らせるなら、日本家屋好き・ネコ好きな人たちが集まってくるのでは?と思い、“ネコを飼ってOKなら”という条件で引受けることになったんです。不動産投資会社の社長さんがたまたまネコ好きだったという点も、本当に運が良かったと思いますね(笑)」(江頭社長談)。
こうして、シェアネコの『びーた』と『りんだ』、そして保護猫の『こうた』が加わり、ネコ3匹と暮らせるコンセプトシェアハウス『Q邸』が誕生した。
ネコたちが上手に関係をつないでくれる“同居人”
『寄宿舎』として用途変更を行うことで、空き家からシェアハウスへの転用を図ったという『Q邸』。ホームページやSNSで告知をしたのみだったがクチコミで噂が広がり、2015年4月上旬のオープンハウス直後にあっという間に満室になった。
各個室の広さは約4.7畳~約8.5畳で、賃料は3万円~5万5,000円。そこにネコの飼育費用や光熱費などを含めた管理費1万5,000円が別途プラスされる。入居ルールとしては、ネコの餌やりやトイレ掃除は当番制で入居者が担当。ネコたちが誤食してしまいそうな観葉植物やアロマの設置、喫煙が禁止されているほか、個人で飼っているネコを連れて入居することもNGとなっている。
「現在の入居者さんは、20代から30代まで、男女比は2:3ぐらいの割合です。“ネコを飼ってみたかったけど、一人では飼う自信がなくて…”という人が多く、基本的には『ネコ好き』が集まっているのですが、海外生活経験がありルームシェアに慣れている入居者さんが多い点も特徴です」と江頭社長。
入居者同士が集まってパーティを企画することもあるが、基本的には“お互いの生活に干渉しない”のが原則だ。「入居者さん同士は、家族でもなく、友人でもなく、仲間でもない…ネコたちがうまい具合に関係をつないでくれる『同居人』ですね(笑)」(江頭社長談)。
ちなみに3匹のネコたちは、各部屋のドアを少しだけ開けておくと勝手気ままに入ってくるので、室内で入居者と遊んだり、ベッドで眠ったりして過ごしているという。ネコも、人も、“過干渉にならない”のが『Q邸』の心地良さにつながっているようだ。
“同じ目標を持った人たち”が集まるシェアハウスは
借り手がつきにくい『一戸建て空き家』の活用法としても有効
▲「ネコが待っててくれると思うと、家へ帰る時のモチベーションが断然違いますね」と語る入居者のともちゃん(写真右)。約8.9畳の広さのアイランドキッチンには2台の大型冷蔵庫が置かれており、各入居者ごとに棚を決めて食材を保管している「一般的な賃貸物件と違って、他人と住空間を共有することになるシェアハウスの場合は“同じ目標や趣味・志向を持った人たちが集まりやすい”という傾向があります。
ただし、“他人と一緒に住むこと”だけがベストではないような気もするので、今後は『入居者同士が助け合える環境』と、『精神的な心の拠り所』のような住まいが作れたら…と思っています。
若い世代でも、古民家等に興味はある人が増えていているのに、なかなか暮らす機会に巡りあえないので、空き家を活用したシェアハウスがそのきっかけになると良いですね」(江頭社長談)。
「自分自身が“欲しい”と思った物件を作りたい」と語る江頭社長は、実は近々第一子を出産予定。ママさん社長となって、今後どんなユニークなシェアハウスを立ち上げるかが楽しみだ。
■取材協力/株式会社福岡リノベース
http://www.f-renobase.com/
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