震災からの復興を続ける相馬市で行われた「国土政策フォーラム」

2月15日オープンした観光交流施設「相馬市千客万来館」。当日、オープニングセレモニーが行われ、その後市民に地元の食材を使用したシーフードカレーが配られた2月15日オープンした観光交流施設「相馬市千客万来館」。当日、オープニングセレモニーが行われ、その後市民に地元の食材を使用したシーフードカレーが配られた

国土交通省は、国土づくり、地域づくりへの地域住民の参加や情報発信等を通じて、国土政策の一層の推進を図ることを目的に、毎年度2・3箇所の地方自治体と共催で「国土政策フォーラム」を開催している。
2015年2月15日、今回のフォーラムは、東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県相馬市で行われた。この日、メイン会場である相馬市民会館の向かい側にオープンした観光交流施設の「千客万来館」でオープニングセレモニーが行われたほか、地元の食材を使用したシーフードカレーが無料でふるまわれた。

2011年3月11日、太平洋三陸沖を震源として発生した地震は、日本観測史上最大規模であり、地震の規模を示すマグニチュードは9.0であった。また、その地震により発生した津波は、東北地方の太平洋岸に甚大な被害をもたらし、この地震による死者・行方不明者計約1万8,500人にものぼっている。一方、地震と津波により福島第一原子力発電所事故が発生し、10万人を超える被災者が屋内退避や警戒区域外への避難を余儀なくされた。

福島県相馬市も、地震・津波・原発事故による甚大な被害を受けた地域の一つである。
今回のフォーラムは、テーマを「震災復興と新たな地域づくり」とし、相馬市の震災復興を基調講演として、国土交通省技監 徳山 日出男氏を進行役に、相馬市長 立谷 秀清氏、早稲田大政治経済学術院教授(元三重県知事)北川 正恭氏、東京農業大学理事長 大澤 貫寿氏、国土技術研究センター国土政策研究所長 大石 久和氏、日本損害保険協会副会長 牧野 治郎氏、認定NPO法人難民を助ける会理事長 長 有紀枝氏、福島民報社社長 高橋 雅行氏という有識者によるパネルディスカッションが行われた。

相馬市の震災時の対策とその後

海水浴場前の集落は壊滅状態…市長の実家もまた全壊したという。また残念ながら、津波到達前に避難誘導にあたっていた消防団員に犠牲が出てしまった。深い悲しみの中、相馬市は二次的な災害を出さないことを肝に対策を続けた海水浴場前の集落は壊滅状態…市長の実家もまた全壊したという。また残念ながら、津波到達前に避難誘導にあたっていた消防団員に犠牲が出てしまった。深い悲しみの中、相馬市は二次的な災害を出さないことを肝に対策を続けた

2011年3月11日、あの震災の日の相馬市の動きはどうだっただろうか?当日の対策から現在の震災復興の動きまでが、相馬市長 立谷氏から語られた。
その資料を見ると、相馬市は震災当日から次々と対策を打っているのがわかる。当日は、連絡を受けた被災状況が細かくホワイトボードに記載され、状況把握とそれに対しての打ち手を打っている。当日深夜には行動方針を決定し、ワンシートで全体の指示系統まで見える化をした。相馬市では①次の死者は出さない ②相馬はチームとして一丸 を掲げ、避難者の対応や救援物資の受け入れ、医療支援の受け入れなどを行った。

そうしているうちに原発事故の情報が入った。相馬市は「市としては、国からの避難指示がない限り動かない」ことを決め、原発避難者向けの避難所の開設を行うなどその決定に対しての対応体制をとった。さらに原発風評被害で物流がストップし、生活物資や燃料、医薬品などの必需品が不足していく。相馬市は"持ってこないなら取りに行く"と、直送ルートを確保、燃料はタンクローリーを2台用意するなど迅速な対応を行っている。また、3月16日には市独自の一人3万円の支援金を支給した。
その後も災害公営住宅の建設や被災者の健康管理のみならず、精神科医のアドバイスのもと心のケアチームや弁護士や司法書士等の協力による経済自殺対策など精神面でのサポートや買物弱者への対応として移動販売車などの対策をとっている。
相馬市の震災に対する対処、その後の復興への動きをフォーラムのパネリストは

・行政主導の強いリーダーシップと全体情報の共有、体系システムがしっかりしていた
・被災対策・復興への目標・方向性を一環させたこと
・プロのサポートや意見を効果的に入れ、しかし、全体の統括は行政が行ったこと
・頑ななマニュアル通りの対応ではなく、被災者のニーズに向き合ったこと
・住民の非常時の意識・認識をひとつにできたこと

により、震災で失ってしまったインフラやまちの機能だけでなく、住民の心身のケアまでを細やかに、またすみやかに対処できたのでは、と評価した。

相馬市長 立谷氏は「今、相馬市が負っている責任というものは、震災からの復興という観点だけではない。今後、数十年先の相馬市をどうしなくてはならないのか。地域住民にとって住みやすく、外から見て魅力的なまちづくりはどういったものなのか。未来に向けて、持続可能な地域社会を新たにつくっていくことが、本来の務めだと思っています」と語った。

地方創生の本質~「地方の競争が始まり、地方の覚悟が問われる」

続いて、テーマは「地方創生」に移った。地方創生の基本視点は、「若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現」、「東京一極集中の歯止め」、「地域の特性に即した地域課題の解決」の3本柱となっている。

パネルディスカッションでは、「被災地については、震災からの復興もあるが、今後は新たにどういったまちをつくるのかに向いてほしい」との相馬市へのエールを含めたものや、「原発事故は注目を浴び、福島は"フクシマ"として不幸にも世界が注目する地域となった。今後は復興・まちづくりの新たな取り組みが注目されるような"フクシマ"として、相馬市がその役割を担ってほしいと思う」という意見も出た。「地域の資源を活かす技術を育てる。匠の技というか、そういった人材を地域の中で育て、特色のある地場産業を創り上げていければと思う」という意見も出た。

元三重県知事の経験をもつ北川氏は「1995年に地方分権推進法という法律が通った、実は法律的にはこの国はそれを境に集権国家から分権国家に変わったはずであった。2000年には“地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律”一括法が施行された。法律は変わったのに、変わっていないのは制度や意識である。地方創生元年を迎え、これからは本質的に実質的な自治力が問われる時代になったということだ。今までは、格差を嘆いて国に陳述するという形だった。国に甘えすぎた今までの地方自治ではなく、地方創生の本質は“問われていくのは格差ではない。能力差が問われていく”ということを認識していただきたい。そこに向けて地域の特色を見つけ磨いていくこと、その本気度が強くのぞまれていく」と訴え、会場の大きな拍手を浴びた。

待ったなしの少子高齢化、人口減…都市でも避けられないこの課題は、地方においては特に深刻さを増していくだろう。
地方が地方創生をチャンスとし、本気度を高め、質の高い地方自治間の競争がいたるところで起きる…それが、震災を受けた地域だけでなくこの国の復興として、大きなエネルギーとなることを期待したい。

国土交通省技監 徳山 日出男氏を進行役に、立谷 秀清市長、早稲田大政治経済学術院教授(元三重県知事)北川 正恭氏、東京農業大学理事長 大澤 貫寿氏、国土技術研究センター国土政策研究所長 大石 久和氏、日本損害保険協会副会長 牧野 治郎氏、認定NPO法人難民を助ける会理事長 長 有紀枝氏、福島民報社社長 高橋 雅行氏という有識者によるパネルディスカッションの様子国土交通省技監 徳山 日出男氏を進行役に、立谷 秀清市長、早稲田大政治経済学術院教授(元三重県知事)北川 正恭氏、東京農業大学理事長 大澤 貫寿氏、国土技術研究センター国土政策研究所長 大石 久和氏、日本損害保険協会副会長 牧野 治郎氏、認定NPO法人難民を助ける会理事長 長 有紀枝氏、福島民報社社長 高橋 雅行氏という有識者によるパネルディスカッションの様子

2015年 03月11日 11時10分