大規模修繕工事で発覚するユーザーの知らない事実

マンションに住む人にとって、“大規模修繕工事”は欠かせないもの。どんなに新しいマンションを買っても、時間の経過とともに古くなり、人間と同様にメンテナンスが必要になる。しかし、そのメンテナンスの時にフタをあけてみると予想外の不具合箇所が見つかることが多いという。

大規模修繕工事は50戸未満のマンションであれば期間は通常2~3ヶ月程度。50戸以上のマンションの場合は3ヶ月以上の期間が必要になることも多い。期間からみてもこの工事がどのくらい大規模なものかは分かる。マンションを良好な状態で維持管理するには欠かせない大事な工事。しかし、実際行われる数は「平成25年東京都都市整備局マンション実態調査」によると竣工後10~20年の間に約62%のマンションのみ。3分の1が行われていない結果となっているのだ。

また、大規模修繕工事の前の竣工後10年以内のマンションで専門家による建物診断を実施する数はごく少数とのこと。本来、「品確法(※住宅の品質確保の促進等に関する法律)」や「分譲会社のアフターサービス規準」などが適用され、雨漏りや住宅が傾くなどの不具合が起きた場合でも最長10年間の保証が受けられる。したがって、保証期間中に建物の点検を行い保証の範囲で無償で修繕する方が良いはずだ。しかし、保証期間中に建物の点検を行い保証制度を最大限活用しない管理組合が多い。

2013年12月18日に個人向け不動産コンサルティング会社の株式会社さくら事務所で『大規模修繕工事 開始後に発見される不具合事例と解決策』のセミナーが行われた。セミナーでは同事務所のマンション管理コンサルタント土屋輝之氏が講師をつとめ、大規模修繕工事にまつわる普段私たちがなかなか知れない予想外のケースや解決策を教えてもらった。今回、そのセミナーの内容をもとに“大規模修繕工事”に関するテーマでお届けしたいと思う。

『大規模修繕工事 開始後に発見される不具合事例と解決策』に関して話される、さくら事務所の土屋氏『大規模修繕工事 開始後に発見される不具合事例と解決策』に関して話される、さくら事務所の土屋氏

大規模修繕工事の時に見つかる予想外の不良~タイルの場合~

大規模修繕工事の際にはじめて様々な不具合が見つかることがあるという。
事前に想定できない予想外のことが多く、今回その具体的な不具合箇所について紹介する。

マンションの不具合箇所の中でも一番多いのが“タイル”に関連したもの。

特に多いのが「外壁タイルの浮き」で、私たちもよく目にすることができる不具合箇所の一つだ。タイルが剥落して通行している人の頭上に落ちる事故にもつながりかねないため、人通りが多いところに建物がある管理組合は特に注意が必要だ。一般的に一回目の大規模修繕工事では、建物全体の3%から5%程度のタイルの張り替えや補修の費用が予算に見込まれているケースが多い。

タイルの浮きは私たちでも見つけることができるケースもあるが、予想外の不良ケースとして多いのが「ジャンカ(豆板)」。ジャンカはコンクリートの打設不良の事例の一つ。建物のコンクリートに空洞部分があり、漏水やシミなどにつながることもある。これはタイルや塗装などの仕上げ部分を剥がさなければ確認ができないため専門家でなければなかなか発見するのは難しい。

専門家でなければさらに見つけにくいのが「目地の施工不良」だ。通常、コンクリート躯体には誘発目地と呼ばれる、ひび割れを意図的に誘発させるための目地が設けられるが、この部分にタイルを張る場合には、「伸縮調整目地」と呼ばれる目地が設置されシーリング材が施されている。本来は誘発目地と伸縮調整目地は同じ位置でなければならないが、これが全く違う場所に配置されている場合、タイルの浮きや剥落の原因となる可能性がある。何故、このようなことが起きるのだろうか?理由としては、デザインを優先させた物件などで見栄えを保つために、本来機能するはずの伸縮調整目地が設置されていないことや全く違う場所に設置されているケースがあるからだ。

タイル関連のトラブルは、目視ですぐ分かるようなイメージがあるが、実はタイルを剥がさないと分からないこともある。見た目でタイルのひび割れなどがないからといって、大丈夫と安易に考えるのは一番危険だ。一番多く起こる不具合箇所だからこそ、慢心せずにじっくりと診断する必要があるのだ。

大規模修繕工事の時に見つかる予想外の不良~建物自体の内部構造の場合~

タイルよりもっと深刻なのが、建物自体の内部構造の不具合箇所が見つかった場合。

近年地震による耐震性などを物件選びのポイントにしている人も多いはず。しかし、いくら耐震性が高くとも建物自体の構造に不具合があれば話は別だ。地震など災害が起きた時に分かる建物自体の不具合箇所について次に見ていく。

建物自体の見つかりにくい不具合箇所としてあげられるのが「鉄筋の配筋不良・かぶり厚不足」。
これは本来鉄筋が入っているはずの箇所に鉄筋が入っていなかったり、建築基準法で鉄筋はコンクリート躯体表面から3cm以上の深さに入れることになっているが、0.5cm~1.5cm程度の深さに入っているというもの。これにより鉄筋が入っている位置からひびが入り、壁全体に『亀甲割れ』が発生することもある。そのままにしておくと鉄筋が錆びて赤い錆汁がでてくるなど建物の耐久性などにも影響が出る場合がある。
かぶり厚不足は建物の耐久性に大きな影響をおよぼすことがあるので、専門家に相談することが望ましい。

さらに深刻なのが、「構造(耐震)スリットの未設置」。
現在の多くの建物には耐震スリットと呼ばれる仕組みが採られている。これは壁と柱の間に計画的にすき間を設けることにより、地震の揺れにより壁が柱を折ってしまうことを防ぐためのもので、建物構造上重要な役割を担っている。

しかし、不具合箇所の事例としてスリットが設置されていなかったり、設置されていても変形していたり防水や防火処理などに問題があるケースもあるという。

スリットが計画通り適正に設置されていない場合、スリットは後からも設置することはできるが本来の耐震性能を確保する事ができない可能性もあるため、スリットの不具合には十分に注意を払い慎重に対応したいところだ。

不具合箇所を知ること、大規模修繕工事の現状

このように、大規模修繕工事を行い、普段目にしない部分まで見ることで意外な不具合個所が見つかることが多々ある。そう考えると、大規模修繕工事がマンションの補修だけでなく、不具合を発見する絶好のチャンスであることが分かる。そのまま放っておくと、劣化が進行するだけでなく、災害に弱くなったり、事故につながったりと様々なマイナスの出来事が起こりやすくなる。

人為的ミスによる不具合がないマンションかどうかを知ることは難しいが管理組合が保管している竣工図を見ることで「耐震性や築年数などその物件にまつわる情報は調べることができるのでぜひこの機会にもう一度住んでいるマンションについて理解を深めていただきたい」と、土屋氏は言う。
住んでいるマンションの共有部分でタイルやコンクリートなどのひび割れ、錆び色の汚れや変色などを見かけたらマンション管理組合に相談するのも一つの方法だ。しかし、大規模修繕工事の着工後に予想外の不具合が発生すると、当初予定をしていた大規模修繕工事のための予算が不足するという事態が起こることもあるのは事実だ。

最後に大規模修繕工事の現状についてだが、2013年の夏以降工事費用が高騰している。原因としては消費税増税前の駆け込み需要だ。大規模修繕工事に必要とされる建材などの値段も同年の春より約20%ぐらいの高騰。そうした理由から、今後マンションの修繕積立金が増額される可能性もある。

大規模修繕を他人事と思わず、マンションに住んでいる人は進んで自ら意識して自ら行動することが時には重要だと感じた。

2014年 01月28日 11時07分