LEDは、どのくらい普及しているのか?
写真左から電球形蛍光灯、LED電球、一般照明用白熱電球。LED電球や蛍光灯は外形を一般白熱電球に近づけながら、省エネの効果を高めるために工夫が施されてきた。LED電球の進化で、従来の光源になかった機能も追加されるようになってきた。LED照明と聞くと今年はノーベル賞受賞で今までよりも多く耳にするが、実際私たちが日ごろ使っていても、本当のところよく分かっていないことも多いと思う。今回、知っているようで知らないLED照明のあれこれを、連載を通してお伝えしたい。第1回目は、LEDの現状とLEDは他の電球とどう異なるかについてお届けする。
2011年の東日本大震災の後の節電需要の高まりを機に、照明の節電意識も高まりLED照明が一気に一般家庭に普及した。その後も売上げは伸び続けており、電球類の年間出荷(販売)高の中で、LEDは2013年には2325万8000台に達した。パナソニックの推定では、住宅照明分野における照明業界全体での販売額のLEDの比率は、2013年に約80%がLED照明になったという。同時に低価格化も進んでいる。
こうした流れの中で、照明を扱うメーカーにも大きな動きがあった。東芝が2010年に白熱灯の一般照明用電球の生産中止をいち早く実施。続いてパナソニックも2012年に実施しており、さらに同社は2015年度末に住宅用の照明器具に使用する光源を全てLEDにする。
LED照明を使うことが当たり前になっている状況の中で、とどまることなく進化を続けて性能が向上するLED。LEDは実際はどのようなものなのだろうか。
LEDと他の光源とは違う3つのポイント。その1は、光の質が他の光源と異なること。
色温度のイメージ。LED電球や電球形蛍光灯で、自然光(太陽光)やロウソクの炎の色温度に似た光色を再現している。LEDは色温度を選んだり、調光調色によって自由に変えられるタイプもある。白熱電球は調光すると色温度が下がる。LED照明と白熱灯や蛍光灯など他の光源との違いは何か、ご存じだろうか。効率や価格が従来の光源に劣らなければ、定格寿命も長く、理想的な光源といえるのか。
LEDと他の光源の違いの1つ目は、光の質が他の光源と異なること。
光には太陽の光が時間と共に色を変えるのと同じような光の色の違いを「色温度」と呼んでいる。蛍光灯で多く使われてきたすきっとした青白い光は色温度の高い昼光色で、昼白色、白色、さらに白熱灯のように温かみのある電球色へと段々と色温度が下がると、それにともなって空間やものの見え方は異なる。
さらに、例えば同じ電球色に見える光も、LEDと白熱灯、蛍光灯、太陽光で光の波長が異なるため、黄色味や赤味が強くなるなど色が変わって見える。照明によって食事が美味しそうに見えたり、顔色がよく見えたり、服の色が鮮やかに見えたり、花の色に深みを感じたり、スーツの色や化粧品の色の微細な違いを見分けられたりするのは、この色温度と光の波長の違いによる影響だ。
光の波長の違いによる見え方の違いを「演色性」と呼ぶ。演色性の評価としては、平均演色評価数(Ra)が用いられることが多く、可視光の領域の波長を連続的に含む白熱灯はRa100と決められている。蛍光灯にはRa70程度のものから、より多くの色を見せるタイプの製品もつくられてきた。
LEDでも同じようにメーカーが開発を進めており、光の波長を調整することで人の肌や料理をきれいに見せる光など、Raの数値だけにこだわらず用途に応じて工夫した製品ラインアップを増やしている。LED照明は、白色光をつくり出すために青色LEDの光を黄色の蛍光体を通して使ったり、LED素子と蛍光体によってできた赤、緑、青色の三原色の光を組み合わせたりしている。LEDと蛍光体の組み合わせによって、白色光を構成する光の波長は限られてしまう。
白熱灯は最も演色性がよいが色温度は(特殊な電球を除いて)電球色に限られ、蛍光灯は、演色性が白熱灯に劣るものの使い勝手のよい光として開発され定着しており、色温度を幅広く選ぶことができる。LEDは演色性に課題があるものの技術の向上で蛍光灯を超える製品も増えており、色温度を選べる。さらに一つのLED電球の中で色温度を自由に変えられる製品も登場しつつある。
その2は、従来の電球からLED電球に交換できない照明器具があるということ。
左の写真は電球を横方向に取り付けるタイプのダウンライト。右の写真、右側はダウンライトに合う小型の白熱電球。左側のLED電球と外形が異なる。写真のダウンライトにはどちらのランプも取り付けられたが、照明器具によっては取り付けられない場合もある。2つ目は、従来の電球からLED電球に交換できない照明器具があるということ。
器具とランプの組み合わせによっては、ランプの外形が従来光源と少し違うことで、せっかく購入したLED電球が器具に取り付けられないという問題が起こることも多い。口金の大きさが同じLED電球でも、全長や一部の寸法が異なると、既存の照明器具の反射板などにぶつかって取り付けられないこともある。特に口金の寸法がE17の小型の白熱灯であるミニクリプトン電球を交換する場合は、従来の電球形蛍光灯よりもLED電球の方が外形が白熱灯に似ている分、口金付近の寸法の確認に注意が必要になる。
また電球はメーカーによる仕様の違いがあり熱量も異なるため、照明器具メーカーは自社で指定したランプのみ使用可能としている場合が多く、後から指定以外のランプに変えた場合は器具の製品保証を行わないことも考えられる。発熱量が少ないといっても放熱部分(ヒートシンク)は、部分的に熱が上がるため、子供の手が触れやすいスタンドライトなどに使う場合には特に注意が必要だ。
その3は、LED電球から発する光の広がりが他の光源と異なるということ。
3つ目は、LED電球から発する光の広がりが他の光源と異なるということ。
LED電球の光の広がりが、製品によっても300度、200度、集光タイプなどと異なるため、白熱灯や蛍光灯の電球に合わせてつくられた照明器具からは効率よく光が広がらない場合が多い。
明るさが同等であることを、光の量である全光束で表し、60W形なら810ルーメンと表記しているが、光の広がり方や照明器具との組み合わせ次第で、同じ明るさが得られなくなるということだ。家の電球を蛍光灯や白熱灯からLEDに交換すると暗くなったように感じるという話を聞くことがあるが、こういったことも原因のひとつだろう。光の広がり方が変わることで、スタンドライトやペンダントライトのセードがきれいに光らないこともある。
LEDまとめ
LED照明が節電につながる理由は、電力を光に変える「発光効率」が高く、少ない電力で明るさを得ることができるためで、効率が上がり電気代を抑える効果も高まれば、初期費用がかかっても導入が進みやすくなる。
だが、LED素子には温度が上がると発光効率が下がるという特性があり、従来の電球の形におさめようとすると放熱部分の面積が大きくなってしまい、その分、光の広がりが狭くなりやすい。小さく明るく効率のよい電球をつくるために、光の広がりを調整する技術にも工夫が凝らされ、LED素子の進化とともにLED電球の種類が増えている。
LED照明について今回色々と見てきたが、次回は実際にLED照明が既存の白熱灯と比べて、本当にエコで電気代もお得なのかを検証してみる。
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