超高齢社会に対応する、在宅介護を見据えた高齢期の住まい
中部地区で生まれた在宅介護対応住宅【くらしケアハイム】

「子育て目線の○○」「ママの声を取り入れた○○」など、
子育てをキーワードにした商品づくりやサービスに注目が集まる現代。
住宅分野においても、ラク家事が叶う動線や赤ちゃんにも安心の健康素材採用など、子育てのしやすい住まい提案が数多く行われている。

人にとって子育て期が大切なのは間違いないが、一生で考えれば成人してからの方が長く、ましてや今は超高齢社会。老いてからの暮らしと向き合わなければならないのも当然だろう。

「子育てを念頭にするだけでなく、これから介護を見据えた提案が必要」との想いを反映した住まいが今年2月に中部圏で登場した。セキスイハイム中部(本社:名古屋市東区)オリジナルの在宅介護対応住宅【くらしケアハイム】だ。

高齢期には健康維持期→介護予防期→介護対応期の3つのライフステージがあるとのことで、在宅介護事業を行うグループ会社の知見と社外専門家のノウハウやアイデアを融合させ、その高齢期3ステージにおいて「安心・快適に『自宅に住み続けられる』住まい」を創ったという。
そのモデル住宅が愛知県春日井市にあると聞き訪ねてみることにした。

駐車スペースに面したウッドデッキには車椅子用の昇降機を設置。介護される人が過ごす部屋の掃き出し窓につながっており、</br>気軽に出入りができて外出もスムーズ。例えば、介護施設の送迎車への乗り降りもとても便利になる駐車スペースに面したウッドデッキには車椅子用の昇降機を設置。介護される人が過ごす部屋の掃き出し窓につながっており、
気軽に出入りができて外出もスムーズ。例えば、介護施設の送迎車への乗り降りもとても便利になる

在宅介護サービスの知見活用など、各専門家と連携し
“自宅に住み続けるため”のハードとソフトを融合

靴の脱ぎ履きがしやすいようベンチを設置。階段式になった棚は、ベンチに腰掛けるまでの伝い歩きをする手摺にもなる靴の脱ぎ履きがしやすいようベンチを設置。階段式になった棚は、ベンチに腰掛けるまでの伝い歩きをする手摺にもなる

美しい植栽に彩られたタイル外装のモデル住宅は、段差の低い幅広ステップとスロープを設けた玄関アプローチで、一見すると「バリアフリー・ユニバーサルデザインの住まい」と感じる程度。しかし、住戸内には様々な“超高齢社会への対応”がなされている。

上写真のように、介護される人が過ごす居室から直接出入りができる車椅子用昇降機がウッドデッキに設置されているほか、奥行のある土間玄関は簡易スロープが置きやすく、歩行器を仕舞うスペースも。特に関心したのは半円形状にアールを描くベンチで、例えば帰宅時、土間に向かって腰掛けて靴を脱いだら座ったまま90度ターン。壁には手摺が斜めに設けてあり、それを支えにして握力の弱い高齢者がゆっくりと体を起こしながら家に入ることができるようになっている。デザイン性を損なわず、介護される人の使い心地を考えた設計には唸った。

また、同住宅の床には所々に格子状の空気口があり、そこからは微かな風が流れている。
これは家全体をほぼ均一の快適温度に保ち、空気の浄化も行う空調システムで、ヒートショックの原因となる温度差や雑菌などに弱い高齢者を守るエアコントロールを行うもの。年を重ねるほど注意が必要な“室内の空気環境”にも重きを置いているのは特徴だ。
他にも、緊急通報装置の設置や、毎日の測定を家族や医師へ自動送信可能な血圧測定サービスなどが標準仕様となっており、ソフト面でも高齢期への手厚い配慮がなされているのが興味深かった。

在宅介護の負担を減らすには、“本人ができることを増やす”ことも大切

毎日20分の運動習慣がつくよう自宅内にはフィットネスコーナーが。このように『運動の習慣化』を促進している</br>※出展:地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所(2013年12月リリース)毎日20分の運動習慣がつくよう自宅内にはフィットネスコーナーが。このように『運動の習慣化』を促進している
※出展:地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所(2013年12月リリース)

セキスイハイム中部の担当者に伺ったところ、同住宅の特徴は大きく挙げて以下の4つ。

1.健康寿命を伸ばす
2.介護を予防する
3.在宅介護の負担を減らす
4.どんな時にも安心に暮らす

1では、前述のように、年間約1.4万人もの高齢者が亡くなるという(※)ヒートショック防止にもなるエアコントロールや血圧測定サービスを。
2では、要介護化を防ぐためには活動量を減らさないことも大切なため、外出しやすく・自宅で運動しやすく・活動を促すことに着目している。

特筆すべきは3だろう。
介護する側の負担を減らして“頑張りすぎない介護”ができる工夫がなされているのだ。

例えば、本人のプライドを尊重するのはもちろん、介助者にも大きな負担になりがちな排泄。
トイレは正面からではなく横から出入りできるスタイルで、3枚のスライド式扉。車椅子から便座への移乗がスムーズになるため、自身での排泄がしやすく、介助者もトイレ前のゆとりあるスペースでサポートすることが可能だ。そのスペースにはポータブルトイレの洗浄などにも重宝するスロップシンクも設置され、介護する人もされる人も使いやすい設計となっている。
他にも、シャワーチェアーを置き、座浴式のバスリフトを取り付けた浴室(下写真)では、椅子からリフトに滑るように移乗して自力での入浴も可能になる工夫であったり、車椅子のまま座位で身支度ができる洗面台を採用するなど、“介護される人自身ができることを引き出す”提案で介護予防に不可欠な自立性を尊重。それが在宅介護の負担を減らすことにも繋がっていく。

最後の4は、光熱費がかさみがちな介護生活をサポートする太陽光発電の導入や蓄電池の搭載。
災害弱者になりやすい高齢者が停電時もストレスなく過ごせるよう配慮されていることも加えておきたい。

取り外し容易なバスリフトなどはリフォーム時の参考材料にも

介護用バスルームと聞くと大掛かりな設備が必要なイメージもあるが、このように浴槽にリフトを付けて座浴式バスにすることも。</br>本人の自力移動や介助負担を減らせるだけでなく、取り外しが容易な点や、日常の住まい風景に馴染む様も魅力介護用バスルームと聞くと大掛かりな設備が必要なイメージもあるが、このように浴槽にリフトを付けて座浴式バスにすることも。
本人の自力移動や介助負担を減らせるだけでなく、取り外しが容易な点や、日常の住まい風景に馴染む様も魅力

今後ますます切り離せなくなる「高齢者介護と家づくり」

自宅での活動を促すため、タブレットPCで生活リズムをサポートする『くらしケアハイムコンシェルジュ』の提案も。</br>ネット電話で家族と顔を見ながら会話をしたり、薬の時間など設定した日課を声で知らせたり、介護予防体操ムービーを見ることができる自宅での活動を促すため、タブレットPCで生活リズムをサポートする『くらしケアハイムコンシェルジュ』の提案も。
ネット電話で家族と顔を見ながら会話をしたり、薬の時間など設定した日課を声で知らせたり、介護予防体操ムービーを見ることができる

【くらしケアハイム】担当者は全員3日間の介護体験をするのだとか。

「それはもう『大変!』です。
肉体的にも精神的にも…。
3日間でそうですから、これが毎日となれば健康維持や介護予防、在宅介護の負担減がいかに必要かを痛感します。
介護体験では、通路幅は広ければ広いほど良いわけでも、手摺がやみくもにあれば良いわけでもないことも知りましたし、やはり介護する側だけでなく、介護される高齢者の意見も重要だと改めて感じました。
ところが、介護されるご本人は住宅展示場などに出かけることが難しく、遠慮されることも少なくありません。
その点このモデル住宅ならば気兼ねなく体感頂けて、使い心地や意見を言って下さることも。
今後も、住まい・介護・医療の観点で改善を重ねていきたいと思います」(担当者談)

生を大切に育む場所が我が家ならば、生を穏やかに閉じる場所も我が家でありたい・・・
いつか介護が必要になっても住み慣れた自宅で家族と楽しく暮らしたい、との想いに寄り添う『終の棲家』のひとつのカタチとして、マイホームを考える際に知っておきたい事例に思う。


■セキスイハイム中部【くらしケアハイム】
http://www.816chubu.jp/lp/1401_kurashicare/

2014年 08月22日 11時04分