調査報告書にみるリノベーション業界の課題

転職フェア冒頭で登壇したのはHOME‘S総研所長・島原万丈氏。業界の現状と今後の可能性について語った(会場:株式ネクスト 大会議室)転職フェア冒頭で登壇したのはHOME‘S総研所長・島原万丈氏。業界の現状と今後の可能性について語った(会場:株式ネクスト 大会議室)

今年6月、「STOCK&RENOVATION2014」という調査報告書が「HOME‘S総研」から発表された。まずはこの中から気になるデータを紹介しよう。この5年以内の住宅購入者のうち、リノベーション住宅の購入者は「中古を買ってリノベーション」と「リノベーション済み中古の購入」を合わせると22%。不動産住宅市場の中でリノベーション住宅は一定の割合を占めるようになっていると、報告書は分析している。その一方で、この調査報告書では2つの課題を指摘している。

1つめの課題は、消費者が住宅購入を思いついた初期段階でリノベーションを検討の選択肢に入れている割合が低いこと。新築マンションは50%、注文住宅は42%、建売戸建ては40%。それに対して中古戸建のリノベーションは21%、マンションリノベーションは22%と、新築住宅の半分程度の人しか選択肢に入れていないことがわかる。

2つめの課題として挙げられているのは、歩留まりの低さである。住宅購入を考えた初期段階でリノベーション住宅を選択肢に入れておきながら最終的に購入したのはマンションリノベーションで25%。戸建てリノベーションで14%。新築マンションのケースでは46%、注文住宅は58%、建売戸建で34%の歩留まり率となっており、これら新築と比べると、リノベーション住宅は購入を検討しているプロセスではずされる傾向が強いようだ。中古住宅を選択肢からはずした理由で最も多いのが「中古住宅はあと何年住めるか建物の寿命が不安だったから」というものだった。次いで「中古住宅には隠れた不具合がありそうだったから」「中古住宅の物件価格が妥当なのか判断できなかったから」と続く。

このようにリノベーションに対しての消費者の関心やニーズはまだ発展途上の段階にあるのが現状だ。しかし、政府が2020年までに、中古住宅の流通とリフォームの市場を、それまでの倍の20兆円規模に成長させる施策を掲げているなど、リノベーション業界は今後も成長が期待される業界である。HOME‘S PRESSでも頻繁に紹介されているように、魅力的なリノベーション住宅が次々と誕生している。

さまざまな事例をみていて感じるのは、リノベーションした住宅を、住まいの選択肢のひとつとして考える消費者が、今後はさらに増えていくだろうという予感だ。そして、ニーズが増えていけばいくほど、リノベーション企業は新たな人材が求められることになる。

ではどんな人材が求められているのか? 「業界で働く人材」という視点からリノベーションの今を考えるべく、6月28日(土)に行なわれたリノベーション転職フェアを取材した。2回にわたってレポート記事をお届けする。

ニーズは拡大しているが、人材が不足している

転職フェアで登壇するリノベーション住宅推進協議会の武部裕行氏転職フェアで登壇するリノベーション住宅推進協議会の武部裕行氏

この転職フェアを主催したのは一般社団法人リノベーション住宅推進協議会。今回が初めての実施となる転職フェアで、アートアンドクラフト、インテリックスグループ、秀建、NENGO、ブルースタジオ、ベツダイ、無垢スタイル建築設計、リノべる、リビタの9社が参加した。会場には100名を超える多くの転職希望者が集まった。

募集職種は企業により異なっているが、設計、施工管理といった建築デザイン系のみならず、営業、コンサルティング、広報、WEBデザイナーなど幅広い。「現状、ほぼすべての職種において人材が足りていないのです」と、リノベーション住宅推進協議会の事務局・武部裕行氏は話す。新卒を採用したとしても人材育成が追いつかないため、中途採用に力を入れる企業が多いのだという。また、武部氏は「リノベーションを手がける企業は創業して10年、20年と若い会社が大半を占め、従業員数も数十人規模のところが多いんです。ですから、新卒をゼロから教育する体系だった制度が、整っていないのが実情です」とも打ち明けてくれた。

新卒で採用した社員が育ってくれるのが待てないほど、急ピッチで成長している業界ということがよくわかった。

業界未経験者も活躍できる理由とは

さらに筆者の興味を引いたのは、「異業種からの転職者大歓迎」の業界であるということ。転職というと、一般的には業界経験者が求められる傾向が強いのだが、リノベーション業界は事情が異なっているのだ、

「設計や施工管理といった建築デザイン系は住宅・不動産業界での経験が必要ですが、それ以外の職種では業界外から転職してきた人たちも活躍しています。リノベーションとは、中古住宅に新しい価値を加えること。営業職でもただ売ればいいのではなく、お客様の多様なニーズに合わせて柔軟に対応する力や斬新な提案をする力が求められるので、他業種で培った経験も十分に発揮できます。むしろ業界に染まっていない人のほうが業界の常識や慣例に捕らわれない、フレッシュな発想ができるのでは、と思います」(武部氏)

武部氏によると、他業種から転職してきた人の前職は、フラワーショップ勤務、広告代理店のデザイナー、アパレルショップ勤務、プロスポーツ選手など実にさまざま。こういった他業種の世界をみてきた人たちが、リノベーションに新風を吹き込む力にもなっているわけだ。ちなみにこの転職フェアに集まった人のうち、およそ4割が住宅・不動産業界以外の業種で働く人だった。

次回は、転職フェアの様子をお伝えしつつ、リノベーション企業で働く社員のリアルな声、そしてどんな人材が求められているのかを紹介したい。


(関連リンク)
一般社団法人リノベーション住宅推進協議会
http://www.renovation.or.jp

転職希望者やリノベーション業界に興味のある20代、30代の男女が来場。フェア参加企業の資料展示に見入っていた転職希望者やリノベーション業界に興味のある20代、30代の男女が来場。フェア参加企業の資料展示に見入っていた

2014年 07月21日 11時14分