省エネ具合を計算、比較してみた

石炭、石油、ガスという3つの火力発電方式の全国の地域別平均石炭、石油、ガスという3つの火力発電方式の全国の地域別平均

電力会社に聞けば「電気が省エネ」だと言う。ガス会社に聞けば「ガスのほうが省エネ」だと言う。これでは消費者は迷ってしまう。しかし、当の電力会社、ガス会社に勤めている方々ですら、社内資料が絶対だと信じて疑わない。その結果、客観的に自分で計算したことがある方などほとんどいないと思われる。今回、原稿を依頼されるにあたり、電力会社に依頼されたからという条件は抜きにして、客観的に省エネ具合を計算、比較してみたいと考えた。

比較するに当たり、省エネを定義しておく必要がある。個人的には3つの考え方があると考えている。
・光熱費削減のための省エネ
・CO2削減のための省エネ
・資源が少ない日本が生きて残っていくための省エネ
(エネルギー安全保障の観点、現行基準はこれに基づいている)

消費者側からすると光熱費削減のための省エネがダントツで気になる点であるが、これは料金体系等でも変動しやすいので比較の対象としては扱いにくい。
CO2に関しては各電力会社毎に1kWh当たりの発電量が発表されているのでそれを使うこととした。
最後の現行基準となっている考え方であるが、石炭、石油、ガスという3つの火力発電方式の全国平均を利用している(通称:火力平均)。それも2003年に省エネ法施行規則で一次エネルギー換算係数が2.71倍と定められて以来、一度も変わっていない。当然ながら14年が経ち発電構成も変わっている。さらに言うと各社毎に発電比率は上表のように大きく異なっている。全国一律であるはずがないのである。

ここでいう2.71倍とは簡単に言うと「家で1kWhの電気を使おうとすると電力会社では一律2.71kWh分の一次エネルギーを消費する」ということになっていることを意味する。実際にはこれに加えて、数は少ないが原子力発電、水力発電、太陽光発電を含む新エネルギーを含めて各社毎に計算しなければ意味がない。というのも昨今急激に新エネが増えてくる中で電気が2.71倍もの一次エネルギーを消費しなくなっているからだ。

IEA(国際エネルギー機関)方式での計算

そこで、IEA(国際エネルギー機関)が定める世界標準である方式で、集められる最新データである2015年を元に計算したのが下表である。

IEA方式では水力と新エネは効率100%、原子力は33%と計算することになっている。よって、水力と新エネが多くないと評価が上がらない。

これで見た場合、最も悪いとされる沖縄電力においても2.65と2.71よりは良いことが分かる。北陸電力に至っては水力発電比率が一位の26%にも及ぶことから2.01と現行基準の74%程度の一次エネルギーしか消費しないといったことが読み取れる(ただし、北陸電力のエリアは一世帯当たりの消費電力は非常に多い)。

2015年データを元にIEA方式で計算した地域別データ2015年データを元にIEA方式で計算した地域別データ

現行方式、IEA方式、CO2から見た総合評価は

次に現行方式、IEA方式、CO2から見た総合評価をしたのが下表である。

火力平均だけしか見ない現行の方式は今後新エネがいくら増えても電気の有効性が評価されない。よって、正確な一次エネルギー削減の妨げになる。そう考えるとIEA方式とCO2で検討するのが良いと考えている(特に大量の温排水を出す原発を33%としていることからIEA方式がのぞましい)。
この両項目で比較した場合、特に優秀なのが中部電力、関西電力、九州電力である。逆に良くないのが中国電力と沖縄電力であると言える。

ここでもう一段深く考える必要がある。
一般家庭において特に大量のエネルギーを消費するのが給湯と暖房である。この2つで約5割のエネルギーを消費する。よってこの2つのエネルギー源を何にするのかということが非常に重要な鍵を握る。ただ、暖房に関してはヒートポンプ技術が超高度に発展したこともあり、高断熱高気密住宅において適切な機種選定と設置方法がなされていれば、いかなる条件においても電気側の圧勝である。(主にエアコンとヒートポンプ床暖房を想定)。

よって重要なのは給湯における比較である。給湯に関してはAPFがエアコンだと7を超える機種があるのに対して現時点の最高値でも4.0でしかない。法律どおりの一次エネルギー換算係数2.71で計算すると3つある国の基準かつ寒冷地においてはエコジョーズのほうが省エネという評価になる。

現行方式、IEA方式、CO2から見た総合評価現行方式、IEA方式、CO2から見た総合評価

エコジョーズとエコキュート

今回は2区分のみの表示だがどの区分で計算しても事業主基準の「エコキュート単純倍率」の評価が最も電気に不利な結果となる。よって今回は事業主基準の倍率で比較することとした。この場合、北海道のような1,2地域においてはエコジョーズが有利。3地域が1.00倍の引き分けとなりそれよりも暖かい4から8地域(関東以西の温暖地域)の全てのエリアにおいてはエコキュートの勝利という結果となっている。

なお、全国の一世帯あたりの平均的な一次エネルギー使用量は75GJ程度であるが、電気温水器が如何に強烈にエネルギーを消費するかがわかっていただけると思う。今現在250万台国内で稼働していると言われているがこれをエコキュートに交換するという作業を至急すすめる必要がある。

次に電力会社と地域区分の組み合わせを知る必要がある。この地域区分は寒い方の1地域から沖縄の8地域まで8分類されている。これが変わると水温も気温も変わるので寒冷地ほどAPFが大幅に悪化するので絶対に検討が必要な項目である。

エコジョーズとエコキュート

省エネ効果が高いのは?

以上の評価から組み合わせは全部で36パターンあることが判明した。
この組み合わせにおいて2.71で計算したのが下表になる。次により現実に近い計算をしたのが、さらにその下の表となる。

このように計算してみると大半の組み合わせにおいてエコキュートの方が省エネであると国は判断していることが読み取れる。また、数字の小さい組み合わせほど電力会社は営業しやすく、また省エネ効果も大きいと言える。
ただし、エコジョーズもしくは従来型のガス給湯器においても太陽熱温水器と組み合わせる場合には全エリアにおいてエコキュートよりもガス給湯器が圧倒的に良い結果が出るということは知っておかなければならない。エコキュートにおいてもYAZAKI、長府製作所の両社から太陽熱と組み合わせた商品が出ている。これに限っていえばガス側に負けることもない。

以上であるが、ドイツを始めとするヨーロッパ諸国では年々激増する新エネに対応して数年毎に一次エネルギー換算係数を更新している。日本は今現在全てが一次エネルギー基準で計算されようとしているにも関わらず、その根幹となる換算係数が実態を反映していない。この数字が正確でなければ、正しく、効率がいい省エネなどできるはずもない。

この領域はパンドラの箱のように扱われているがもはやそんなことを言っている場合ではないと考えている。

上表:全国一律2.71 事業主基準で計算した「エコキュート単純倍率」</br>下表:電力会社ごとにIEAの換算係数 事業主基準で計算した「エコキュート単純倍率」上表:全国一律2.71 事業主基準で計算した「エコキュート単純倍率」
下表:電力会社ごとにIEAの換算係数 事業主基準で計算した「エコキュート単純倍率」

2018年 06月05日 11時05分