2017年4月1日から都市ガスの小売りも全面自由化

2016年の電力に続き2017年4月1日から都市ガスの小売りも全面自由化された。これまで家庭で使用する都市ガスを買う場合に、どの会社から買うかを選ぶことはできなかったが、今回の自由化によって、販売事業者や料金メニューを消費者が自由に選択できるようになったのだ。とはいえ、その認知度はまだまだ低いようだ。
内閣府消費者委員会がまとめた2017年1月~2月のインターネット調査によると、都市ガスの小売自由化が始まることと開始時期の両方を知っていた人の割合は27.1%。始まることのみ知っていた人は40.7%。どちらも知らなかった人は32.2%だった。
つまり3人に1人は自由化することさえ知らない。果たして自由化によって何が変わったのか。その内容と課題を探ってみたい。

(グラフ左)世間の都市ガス小売全面自由化の認知度は低い。3人に1人は自由化することさえ知らない<BR />(グラフ右)ガス会社切り替えの意向のある回答者は2割に満たない<BR />(出典:共に『電力・ガス小売自由化に関する消費者の意識について』(内閣府消費者委員会事務局)を元に作成)(グラフ左)世間の都市ガス小売全面自由化の認知度は低い。3人に1人は自由化することさえ知らない
(グラフ右)ガス会社切り替えの意向のある回答者は2割に満たない
(出典:共に『電力・ガス小売自由化に関する消費者の意識について』(内閣府消費者委員会事務局)を元に作成)

おもに4社が独占してきた都市ガス市場

まずは都市ガスとはなにか、から説明しよう。私たちが普段使用できる主なガスの種類は以下の3つになる。

1.都市ガス
輸入された液化天然ガスを施設で気化などを行い、導管を通じて各家庭に供給するガス。

2.LPガス
プロパンやブタンを主成分とする液化石油ガスをボンベに充填し、各家庭に配達するガス。

3.簡易ガス
70戸以上の家庭に対して大型のLPガス発生設備を設置して供給するガス。団地や高層マンションなど各家庭にボンベを配達することが困難なケースなどに用いられる。

このうち都市ガスは全国で約200社がそれぞれの地域で独占的に供給してきた。特に東京ガス、東邦ガス、大阪ガス、西部ガスのシェアは大きく、四大事業者と呼ばれている。

全面自由化でコストの抑制などを期待

この独占市場を開放するものが今回の都市ガスの小売全面自由化だ。国は2016年の電力自由化と合わせて、これまで各業界で個別に成り立っていた市場の垣根を取り払い総合的なエネルギー市場の構築を目指している。具体的には以下のような効果が期待されている。

1.エネルギー供給会社同士の連係や競争が促され、コストの抑制などが期待できる。
2.従来大手が独占的に使用していたガス導管や送配電網が解放され、参入障壁が格段に低くなりつつ、安定供給と保安も確保できる。
3.居住地域に関係なく自分の生活スタイルに合った都市ガスや電気会社を選ぶことができるようになる。その結果、たとえばガスと電気やガスと携帯電話といった割安なセット販売も可能になる。

ガス会社の切り替え方法は、いたって簡単だ。
1.ガス会社を選ぶ
切り替えを受け付けている会社は、下記資源エネルギー庁のホームページなどで確認すればいいだろう。同ページ「一般家庭への販売」欄で「開始済」と記載されている会社が切り替えを受け付けている。詳しい料金プランなどは、そこからリンクされている各社のホームページで確認してほしい。
■参照:資源エネルギー庁 登録ガス小売事業者一覧

2.ガス会社へ申し込み
切り替えたいガス会社が決まったらサイトや電話で切り替えを申し込む。その際、供給開始日が通知される。

3.供給開始
供給開始日になればガス会社が切り替わる。その間の工事や今までのガス会社への連絡は不要。

都市ガスの小売自由化によってエネルギー供給会社同士の連係や競争が促され、たとえばガスと電気やガスと携帯電話といった割安なセット販売も可能になる、といった効果が期待されている(出典:資源エネルギー庁HP)都市ガスの小売自由化によってエネルギー供給会社同士の連係や競争が促され、たとえばガスと電気やガスと携帯電話といった割安なセット販売も可能になる、といった効果が期待されている(出典:資源エネルギー庁HP)

近畿地方の切り替え件数は関東地方の約5倍

こんなに簡単に安いガスが利用できるのに、前述のように認知度が低いのはなぜか。その理由の一つに新規参入する事業者の少なさがある。その数は2017年6月時点でわずか12社だ。しかもそのうちの1社は登録はしているものの供給を開始していない。電力の場合は自由化が開始されるまでに250社以上の新規参入があった。それに比べるとさびしい状態。これでは競争の原理がうまく働かないはずだ。

新規参入が少ない理由には、都市ガス市場の構造に問題があると言えそうだ。
まずその市場規模は電力が約8兆円に対してガスは約2.4兆円と3分の1以下。これはほとんどの家庭に電気は通じているが都市ガスの導管は通じていないことなどが関係している。また、都市ガスを供給するには、液化天然ガスを気化させるなどの大規模施設が必要。これを所有するには当然ながら多額の資金がいる。そこで新規参入する事業者は、すでに施設を所有しているガス会社からガスを卸してもらうことになるが、この卸値が高いのだ。これでは安くガスを提供するのは難しい。このようなことから新規参入する事業者が少ないという状況になっている。

では、今後も都市ガス市場は活性化されないのか。実はすでに熾烈な戦いを行っている地域がある。それは近畿地方だ。同エリアでは関西電力が参入。2016年末に標準家庭で大阪ガスより年間で5,000円以上安くなる電気・ガスのセットプランを発表した。ところが大阪ガスは年明けにさらに安いプランを発表。すると関西電力はさらに値下げをすることを決定した。このような経緯で2017年6月2日時点の近畿地方のスイッチング(切り替え)申込件数は15万6,298件となっている。もっとも市場規模の大きい関東地方が3万1,829件なので、いかに多いかが分かる。

近畿地方のスイッチング(切り替え)申込件数は2017年6月2日時点で15万6,298件。関東地方の約5倍(出典:資源エネルギー庁HP)近畿地方のスイッチング(切り替え)申込件数は2017年6月2日時点で15万6,298件。関東地方の約5倍(出典:資源エネルギー庁HP)

大手同士の競争激化に期待

こういったことから、まずは大手同士が競争をはじめればガスの市場は活気を帯びてくると言える。では、関東の東京電力はなにをしているのか。東京電力のガス事業はグループ会社の東京電力エナジーパートナー株式会社が担うことになっている。しかし、事業者登録はしているものの、2017年6月の時点で供給は開始していない。これでは関東のガス市場が盛り上がらないのもうなずける。しかし同社は、いよいよ7月にサービスを開始する。東京ガスの一般料金より約3%安く、さらに電気とのセット割引で年間1,200円安くなるプランを用意しているようだ。

都市ガスの小売自由化は、まだ始まったばかり。今後はますますサービスが充実していくだろう。消費者としてはこの波に乗り遅れないように賢い選択をしたい。

資源エネルギー庁ホームページの「一般家庭への販売」欄で「開始済」と記載されている会社が都市ガスの切り替えを受け付けている。今後さらに切り替え可能な会社が増えることを期待したい(出典:資源エネルギー庁HP)資源エネルギー庁ホームページの「一般家庭への販売」欄で「開始済」と記載されている会社が都市ガスの切り替えを受け付けている。今後さらに切り替え可能な会社が増えることを期待したい(出典:資源エネルギー庁HP)

2017年 06月30日 11時05分