4月13日 LIFULL HOME'S 総研は4冊目の調査報告書となる
『住宅幸福論 Episode.1~住まいの幸福を疑え』を発表

LIFULL HOME'S総研から発表された『住宅幸福論 Episode.1~住まいの幸福を疑え』LIFULL HOME'S総研から発表された『住宅幸福論 Episode.1~住まいの幸福を疑え』

2018年4月13日、株式会社LIFULL LIFULL HOME'S総研は新しい調査報告書を公開した。『住宅幸福論 Episode.1~住まいの幸福を疑え』である。

報告書冒頭のプロローグ最後の「本報告書の目的」には以下の言葉がつづられている。
『~(前述略)「もっと、住むことの自由を。」を活動コンセプトに掲げるLIFULL HOME'S総研として、ポスト平成時代の、幸福な住まいの在り方を考えてみようと思う。本報告書を「住宅幸福論 Episode.1」とタイトルしたのは、LIFULL HOME'S総研では今後住宅幸福論を中長期の研究テーマとして設定し、来年度以降も引き続き取り組んでいくことを表明するためである。~(後述略)』とある。

中長期の研究テーマとして「住宅幸福論」というテーマを掲げた理由、またEpisode.1として「住まいの幸福を疑え」というサブメッセージを付けた理由はなんだったのだろうか。

調査報告書の発表に合わせ、LIFULL HOME'S総研所長であり、LIFULL HOME'S PRESSのオピニオンリーダーでもある島原万丈氏(以下、敬称略)にテーマ設定の課題観と調査報告書の趣旨を聞いた。

何故、「住宅幸福論」なのか

LIFULL HOME'S総研 所長 島原万丈氏LIFULL HOME'S総研 所長 島原万丈氏

-今回の調査報告書のテーマが「住宅幸福論」ということですが…

島原:LIFULL HOME’S総研では年に1冊のペースで研究レポートを発表していますが、前々回が「Sensuous City[官能都市] ―身体で経験する都市;センシュアス・シティ・ランキング」と都市に、前回が「寛容社会~多文化共生のため“住”ができること」と社会に焦点を当ててきました。そして今年は改めて住まいに焦点を当てたいと思いました。

“何のために人は住み替えをするのか”、“住み替えによって何を手に入れようとしているのか”。この問いをとことんまで突き詰めていったとき、たどり着く答えは、“幸福になるため”だと思います。それは、人が人生の半分近くの時間を「住んでいる」家で過ごしているからでしょう。事実、時間的にも空間的にも住むことは生きることの多くの部分を占めます。だから、住まい選びとは“幸福”に近づこうとする行為だと思われます。

“住宅幸福論”としたのは「本質的に住まいとは何か」という価値を考えたい、という意思表明です。

住まいの幸福を疑え、とはまずは「解体する」ということ

-今回、Episode.1とし“住まいの幸福を疑え”というサブタイトルをつけた理由を教えてください

島原:近年、働き方・消費の仕方を含め、人の生き方の価値観が多様化しています。かつて、“いつかはクラウン”という自動車メーカーのコピーがありました。しかし、今や高級車を買うことが幸せの象徴ではなくなっています。お金で測れた価値の幅が狭まってきています。働き方についても、産業構造の変化が激しい時代においては、ひとつの会社で一生勤めることがリスクにさえなってきている。昭和の経済成長期に形成された消費の価値観や働き方の価値観は、バブルの崩壊やインターネットの台頭などを経て、平成の時代に"解体"されてきたと思います。

その一方で、住まいに関してはいまだ、“いつかは持ち家”から脱していない。"新築志向"や"家は資産"という考え方もずっと長く日本人は持ち続けています。あらゆる価値観が変化している中で、「長期ローンで新築・持家・○LDKを買う」ことが幸せな住まいという意識だけは根強く残っているのは、とても奇妙なことだと思うんです。

今回は、人の幸せと密接な関係を持つ住まいについて、いったん今までの固定した見方を解体しようとした試みです。

"住まいの幸福を疑え"という、サブタイトルに込めた意味はそこにあります。

2018年4月13日に行われたメディア向け発表会の様子2018年4月13日に行われたメディア向け発表会の様子

解体のプロセスの前提

-"解体する"ということですが、今回の調査報告書で行ったことは何でしょうか?

島原:まずは、解体のプロセスの前提となる"今、住まいを取り巻く社会状況はどうなっているのか"の検証から始めています。

いったん「住宅とは家族を入れるハコである」と考えると、現在の家族類型や世帯はどうあるのか、また今後どうなりつつあるのかを確認しました。実は、人口減少の中でも総世帯数は増えているのですが、いま最もシェアが高く今後も増加が予想されるのは単独世帯です。2015年の調査では、全世帯の1/3を占めます。また、次に多いのが夫婦のみの世帯が1/5(約20%)。1980年代に全世帯の4割以上を占めた「夫婦と子供から成る世帯」は減少の一途をたどっており2015年には30%を切る数字となっています。しかし、例えば日本の住空間は、ファミリーの暮らしを前提とする◯LDKで語られています。

もうひとつは、このまま人口減少が続き高齢化が進むと、2040年ごろには日本の不動産価値が1/3になるという予測があります。ここについては、調査報告書の中で清水千弘先生(日本大学教授、マサチューセッツ工科大学不動産研究所センター研究員)に触れていただいていますが、すべてではないものの資産価値が著しく失われる地域の増加が予測されます。要は、「家は財産」という価値観が疑われることが将来起こる予測なのです。

そして、働き方が変わってきていることも無視できません。在宅勤務の増加やテレワーク、兼業や副業の増加などを考えると「会社に通う」ということを前提とした「通勤移動に便利な立地にある住まい」にお金をかけている意味が変化してきます。

つまり、住まい選びの前提となる社会情勢が大きく変わりつつあるのです。幸せな住まい選びが、今のHOME'SやSUUMOが提示しているスペック情報では測れなくなる、ということが起こるだろうという予測です。

今の住まいの幸福度を測る

-今回、中心となる調査データについて教えてください

島原:今回は、調査の方法を見直しています。例えば、一般的な住まいへの満足度を調査する際、「持家と賃貸とどちらが満足度が高いか」と調査するとほぼ必ず「持家」の満足度が高くなります。が、これはよくよく見ていくと交絡要因が大きく関わっていることが予測できます。
交絡要因とは、例えばがん患者に飲酒者が多いという統計は、一見飲酒が要因のようですが、実は飲酒をする人の多くが喫煙をしており、本来は喫煙が要因であった…というように統計モデルの中に相関する外部変数が存在することをいいます。住まいに関しては、持家の満足度に年収が大きく関わっており、年収が高い人は暮らしの満足度が高いことは他の統計事例からみても明確です。

この要因をできるだけ排除して、もう一度比べてみると「持家VS賃貸」は多少「持家」の方が満足度が高いものの、差があまり大きくないということがわかりました。その他の「新築VS中古」や「マンションVS戸建て」でも同様です。

その上で今度は「条件的には満足度が高いはずなのに、実際には満足度低い人」と「条件的には満足度が低いはずなのに、満足度が高い人」を比べてみると、「暮らし方」に幸福な住まいのためのヒントがあるのでは、という導きが見えてきました。次回以降は、このあたりを手掛かりに海外の事例などもウォッチして調査を進めていく予定です。

-今回の調査報告書で伝えたかったこととは?

島原:調査報告書内に劇作家の石神夏希さんの"「家庭の幸福」という呪いを解体する"という章があるのですが、今回の研究の問題意識は、そこに象徴されていると思います。また、たくさんの新しい住まい方のきざしの事例も取材をして載せているので、ぜひ調査報告書をご一読いただきたいと思っております。

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今回の『住宅幸福論 Episode.1~住まいの幸福を疑え』。住まいの価値観を解体する試みをした調査報告書はLIFULL HOME'S総研のホームページからダウンロードや調査報告書の取り寄せ(※別途、送料要)が可能だ。
報告書を読んで、住まいの価値観の「解体」について、考えてみてはいかがだろうか?


LIFULL HOME'S総研
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(※調査報告書は無料、別途送料がかかります)
https://www.homes.co.jp/souken/report/201804/

次回の報告書は海外の事例などもウォッチしてさらに「住まいの幸福論」についての調査を進めていく予定
次回の報告書は海外の事例などもウォッチしてさらに「住まいの幸福論」についての調査を進めていく予定

2018年 04月23日 11時06分