日本での「一次エネルギー規制」まっしぐらは何故起こる?

日本のガスは世界各国で採掘された気体のガスを低温高圧縮処理にて液化し、LNGタンカーで海上輸送して運ばれる日本のガスは世界各国で採掘された気体のガスを低温高圧縮処理にて液化し、LNGタンカーで海上輸送して運ばれる

日本では、住宅業界以外の業界も含めてなんでもかんでも「一次エネルギー規制」まっしぐらという感じだ。しかしながら、この一次エネルギーの意味をきちんと理解している人がどれだけいるだろう?

実は、私達が自宅で使っているエネルギーは二次エネルギーと呼ばれるものだ。
ガス田から出てきたガス、油田から掘った石油、炭鉱から掘った石炭…こういった、最初に採掘した状態で化石燃料が持っているエネルギー量を、本来の意味での一次エネルギーという。現にヨーロッパではそのような解釈がされているので、例えば、ガスでいうとロシアで採掘したときのエネルギー量を1とするとドイツまで持ってきたときには1.1に加算される。これは 精製時の投入エネルギーおよびロス 、加圧ポンプのエネルギーと5000kmとかに及ぶパイプラインでの輸送中のロス分を見込んだものになっているからだ。

同様に考えると、日本のガスは世界各国で採掘された気体のガスを低温高圧縮処理にて液化している。さらにLNGタンカーで海上輸送して運ばれているのだ。そして最後に再び気化して各家庭に送られる。このように考えるとヨーロッパ流の加算をすればおそらく1.3を優に超えてしまうだろう…というのが、私の思うところである。
しかしながら、日本ではガスも石油全般も1と考えている。家で使う1のガス、もしくは灯油は採掘現場でも1…という極めて荒っぽいやりかたなのである。

そもそも、なぜ各家庭や仕事場で使う二次エネルギーではなく一次エネルギー規制になったのか?そこを捉えておく必要がある。それはCO2排出量、それと貿易赤字とエネルギー安全保証に直結するのは、実は二次エネルギーではなく、一次エネルギーであるからにほかならない。

13年も放置されている日本の省エネ政策の根幹となる換算係数

日本の火力発電所の需要端の熱効率は、平成15年に36.9%と固定されている日本の火力発電所の需要端の熱効率は、平成15年に36.9%と固定されている

話を元に戻そう。
石油やガスは前述のとおり、実際よりかなり有利に評価されている。では、電気はどうであろうか。

日本では電気に関しては
一次エネルギー=2.71×二次エネルギー
というように固定されている。

これは具体的にいうと家で1kWhの電気を使ったら、電力会社では、2.71kWh分の燃料が消費されている、という換算になる。
この2.71というのがどのように出てきたかというと、平成15年に出された省エネ法の省令別表に「1kWh=9.76MJとする」という、たった1行の文章が元になっている。物理でいうと1kWh=3.6MJである。ここから9.76/3.6=2.71倍という計算もできる。

また、日本の火力発電所の需要端の熱効率は、平成15年に36.9%と固定されている。ここから100/36.9=2.71という数字が導き出されているのだ。この倍率は一般的に「火力平均」と呼ばれる考え方であり、原発の事故前であろうが事故後であろうが関係ないものになる。ただ、日本でも平成15年に比べると、石炭、石油、ガスの発電容量比率は、大きく変化している。また同じガスの発電機でも第二世代、第三世代と進化することによる個別機器の発電効率は上がってきている。逆に原発がストップしたことで、効率が悪く稼働停止していたような旧型の発電機が再稼働したことによる効率悪化もある。
これらを総合すると平成15年から13年も経過した今現在においても、2.71倍であるはずはないのだ。

しかしながら、すべての省エネ政策の根幹となるこの換算係数が、日本では13年も放置されている状態である。

今の計算方式である限り、適切な一次エネルギー算定にはならない

再生可能エネルギーが増えているドイツにおいては、係数が変化している再生可能エネルギーが増えているドイツにおいては、係数が変化している

日本では、火力平均となっているが、ドイツなどのヨーロッパ諸国、及びIEA(国際エネルギー機関)では再生可能エネルギーも計算に入れて換算係数が発表されている。
その結果、どんどん再生可能エネルギーが増えているドイツにおいては下記のように係数が変化している。

3.6⇒3.3⇒3.0⇒2.6⇒2.0⇒1.8 (2016年)

これは、言うなれば電気の環境負荷がどんどん減っているということを示している。

日本でも徐々に再生可能エネルギーが増えているが、今の計算方式である限り、いくら再生可能エネルギーが増えたところで適切な一次エネルギー算定にはならない。

ちなみにだが、世界標準であるIEA方式では地熱は発電効率を10%、原子力は33%。太陽光、風力は100%として計算するように定められている。これが意味することは、原子力は火力よりも少し効率が悪く(CO2をたくさん排出する)太陽光と風力は一次エネルギーを使っていないのと同じと認めていることになるのだ。

パンドラの箱

このように、例えばドイツでは年々増えていく再生可能エネルギーの比率にしたがって換算係数を下げていっている。
その結果電気の優位性がますます高まり、自動車の電化も進んでいく。

この換算係数が適切に発表され、利用されないと、国全体のエネルギー効率を最適化することができない。無駄だらけになってしまうのだ。

しかし、メディアでは「省エネ、省エネ」と叫びながら、この問題に触れていることを見たことがない。

これは日本では触れてはならない「パンドラの箱」なのかもしれない。

日本の一次エネルギー事情は、触れてはいけない「パンドラの箱」なのか日本の一次エネルギー事情は、触れてはいけない「パンドラの箱」なのか

2016年 12月20日 11時04分