相続税増税前夜、何か対策は?

来年度より相続税の基礎控除が従来の6割にまで引き下げられ、これまで相続税の心配をしなくてよかった人たちが相続税の心配をしなければいけなくなった。相続税増税への対応策の基本として以下の3つがあるということは前回述べたとおりである。
今回はそのうちの一つである財産の評価引き下げについてポイントを解説する。

対応策

具体策

財産の評価引き下げ 不動産の購入、不動産利用方法の検討
納税財源の確保 金融資産(換金できる資産)の準備、生命保険の活用
財産を減らす 消費、子や孫への贈与

自宅を持っているだけで相続税が?

路線価は地価に連動しているため、地価の高い大都市圏では必然的に路線価も高くなる、したがって大都市圏にごく普通の自宅を所有しているだけでも来年以降、相続税の心配をしなければならないかもしれない路線価は地価に連動しているため、地価の高い大都市圏では必然的に路線価も高くなる、したがって大都市圏にごく普通の自宅を所有しているだけでも来年以降、相続税の心配をしなければならないかもしれない

相続税を計算する際の評価は原則時価である。現預金や上場有価証券類の評価は把握できるが不動産の時価は場所や地型、個別の事情によって大きく異なるので算定が難しいことから、国は「路線価」という土地の相続税評価を算定する基準を設け、m2あたりの価格を毎年、国税庁のホームページ上で公表している。
*建物の相続税評価額は固定資産税評価額となる

土地の相続税評価の基礎となる路線価は地価に連動しているため、地価の高い大都市圏では必然的に路線価も高くなる、したがって大都市圏にごく普通の自宅を所有しているだけでも相続税評価額は数千万円単位になることも珍しくない。

例えば150m2の自宅前の路線価が1m2あたり40万円の場合、自宅敷地の相続税評価額は、40万円(路線価)×150m2(敷地面積)=6,000万円となる。
財産が自宅のみで相続人が子供2人の場合、相続税がかからない範囲とされる基礎控除は平成26年12月31日までは7000万円(5,000万円+1,000万円×2)であるため、この場合、自宅を相続した場合でも財産(自宅)の評価は基礎控除の範囲に収まり相続税は課税されない。しかし、平成27年1月1日以降の相続では基礎控除が現行の6割である4,200万円(3,000万円+600万円×2)となるため。前述の相続税評価額6,000万円の自宅を保有していた場合、6,000万円(自宅の評価)-4,200万円(基礎控除)=1,800万円と基礎控除の範囲を上回った1,800万円に対して約180万円の相続税が課せられることとなる。
このように、大都市圏に自宅を所有しているだけで来年以降、相続税の心配をしなければならないのだ。

親との同居で相続税が大幅減!?

しかし、国も自宅を相続する場合は、相続税の支払いのために生活の基盤となる自宅を手放さなくてもいいように、一定の条件を満たす自宅の相続には相続税の評価額を大幅に減額するという特例を認めている。これを、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(小規模宅地の特例)といい80%の減額を認めている。国の親心とでもいえばいいのだろうか。この特例を使えるのはいくつかの要件があるが、原則的には亡くなった親と同居している親族が自宅を相続する場合である。つまり、親と同居していた子がその親の自宅を相続し、引き続き自宅として住み続けるような場合は、自宅の土地の相続税評価額を80%減額できる、すなわち2割になるのである。
前述の例では本来、6,000万円の自宅敷地の評価が親と同居の子が相続することによって2割の1,200万円に大幅減額され、結果的に相続税を納める必要がなくなるのである。このようなことから相続税増税前に改めてこの特例が注目を浴びている。

*親と同居していない子が自宅を相続する場合でも、子が自宅を所有していないなど一定の要件を満たすことにより小規模宅地の特例の適用が可能である。なお、配偶者が相続する場合は無条件で特例の適用が可能となる。また、減額できる敷地の面積は平成26年中の相続は240m2、平成27年以降は330m2となる。適用可能か否かの詳細は税務署や税理士などの専門家に確認が必要。

家族のありかたを考えるひとつのきっかけ

ハウスメーカーなどの建築業界では、同居をテーマにした2世帯住宅の建築やリフォームの提案が盛んであるが、同居には様々な現実的な問題もあり、スムーズにいかないケースが多いのも事実だハウスメーカーなどの建築業界では、同居をテーマにした2世帯住宅の建築やリフォームの提案が盛んであるが、同居には様々な現実的な問題もあり、スムーズにいかないケースが多いのも事実だ

このように相続税のことを考えると、特に地価の高い場所に親が自宅を所有している場合には、親と同居することで大きな効果が得られることになる。
これを背景に、ハウスメーカーなどの建築業界では、同居をテーマにした2世帯住宅の建築やリフォームの提案が盛んである。
しかし、「親と同居」と簡単に言っても相続税のことだけを優先するのは本末転倒である。現実には、親の介護の問題をはじめ、嫁姑が一つ屋根の下で円満に仲良く暮らせるのか、という問題もある。
実際には同居している長男夫婦と仲たがいし、別居の二男に自宅を相続させるという遺言を残した例もある。これは、結果的に、同居したことがきっかけで家族関係が悪化したという残念なケースである。
また、自宅以外に財産がない場合は、この特例を活用するために唯一の財産である自宅を長男が相続することにより、他の兄弟は財産を取得できなくなるため、財産の分け方の問題(遺留分や代償金の問題)は別に検討する必要がある。
したがって、相続税増税と小規模宅地の特例の活用は、円満な財産の承継をするための家族のありかたを、親が元気なうちに一族皆で考え、話し合うひとつのきっかけに過ぎないのである。

皮肉なことに同居がすすむと更に空家は増加することとなるが…。

2014年 10月13日 11時24分