不動産業界は自ら襟を正すことができるのか?

平成26年6月18日、参議院本会議において全会一致で『宅地建物取引主任者の名称を「宅地建物取引士」とする宅建業法一部改正法案』が可決された平成26年6月18日、参議院本会議において全会一致で『宅地建物取引主任者の名称を「宅地建物取引士」とする宅建業法一部改正法案』が可決された

平成26年6月18日、参議院本会議において全会一致で『宅地建物取引主任者の名称を「宅地建物取引士」とする宅建業法一部改正法案』が可決された。
これにより、従来「宅地建物取引主任者」であった呼称が「宅地建物取引士」に代わり、士業の仲間入りを果たしたことになる。消費者の皆様にはどうでもいいことだと思うが、業界にとっては悲願だったのかもしれない。その改正法案の一部に以下の文章がある。

「購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行う」
「宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない」

他の業界では当たり前のことをわざわざ明文化している。

「顧客の利益の保護」「公正かつ誠実に」「信用・品位を害さない」これらの事はそもそも士業でなくても、一般社会において当たり前のこと。しかし、残念ながら顧客(消費者)の利益よりも事業者の利益を優先した結果、社会から糾弾された事例は少なくない。「耐震偽装問題」「悪質リフォーム問題」「食品表示偽装問題」等、いずれも倫理観を欠いた事業者が消費者を欺く行為を行い、社会から断罪されている。

「宅地建物取引士」…社会からの期待と負託を受けての呼称変更であると思う。私達は率先して襟を正していかねばならない。以下に、私が普段の業務で経験する「顧客の利益より事業者の利益を優先している」であろう事例を記述する。

既に買い付けの申し込みが入っているので物件は見れません

当社は「買主に寄り添うエージェント」を標榜していることもあり、自社で売主より売り物件をお預かりすることはほとんどない。売主から売却依頼を受ければ、顧客の利益優先で考えたら「売らなくてはいけない」からだ。その物件が液状化が予想されているエリアであろうと、耐震性に乏しかろうと、売ることが使命だ。売らなくてはいけない物件があれば買主のことを最優先に考えにくいため、売り物件を基本的には預からないことにしている。
そもそも、一円でも高く売りたい売主と一円でも安く買いたい買主は利益相反関係であり、その双方のエージェントを1人で務めるということは、本来は困難であることも知っておいてほしい。その結果当社では、売主に付いている不動産仲介事業者に必ず交渉をすることになる。

その時に、売主の仲介会社からよく言われることが「もう既に買い付けの申し込みが入っているので物件は見れません」という話。もちろん、それが事実であれば何ら問題はないが、それが事実でないとすれば物件を預かっている売主(顧客)に対して背信行為だ。そこで、別の担当が個人買主のふりをして連絡すると、「まだ買い付けの申し込みは入っていないので、いつでも物件を見て頂くことができます」と言う。

これは、売主に対する背信行為ではないか?こんなことが日常茶飯事で発生する。なんで、このようなことが横行するのか?

不動産仲介業界に「歩合制」は馴染まない

不動産仲介事業者は、仲介成立時に売主及び買主から物件価格の3%+6万円を仲介手数料として受領することができる。売主・買主の担当仲介会社が違う会社であれば手数料は最大でも「3%+6万円」(これを片手仲介と言う)だ。しかし、売主・買主双方の担当を1社が引き受けていた場合、最大で「6%+12万円」(これを両手仲介と言う)受領することができる。いくつかの有名大手仲介会社の平均手数料率は5%を超えており(公表されている)、取引の多くが両手仲介ということになる。

私はこの両手仲介そのものが問題であると言うつもりはない。
なぜなら、大手仲介事業者であれば、マーケットに存在している売り物件の多くを預かることになり、また、買主も多く集めているとすれば、それは必然的に両手仲介にならざるを得ないという側面もあるからだ。

問題の本質は「両手仲介を求めるがあまり、売主や買主の利益を保護できていない」場合の話。
その温床の一つに「歩合制給与」があると思う。もしみなさんが歩合制の営業マンだった場合、両手仲介を優先したいと思わないだろうか?歩合制の営業マンだったら、当然両手仲介の方が収入が増える。それも倍。あの悪質リフォームの時もそうだが、多くの会社は「歩合制」の給与体系だった。

価格がわかりにくいものや、利益相反関係の顧客を相手にするビジネスでは、歩合制にすることで顧客に対する背信行為が増える可能性が高まり、歩合制は馴染まないと私は思う。

両手仲介の問題の本質は「両手仲介を求めるがあまり、</br>売主や買主の利益を保護できていない」場合の話ではないだろうか両手仲介の問題の本質は「両手仲介を求めるがあまり、
売主や買主の利益を保護できていない」場合の話ではないだろうか

買い付け申し込みは「買主」から「売主」へ直接すれば良い

「家を売ったり買ったりする際に、その不安の要素に不動産仲介業者がなっていないか?」という何とも自虐的なコピーを利用している大手不動産仲介業者があるが、まさに私が思うことと一緒である。事実、不動産仲介事業者が介在しているからこそ顧客が不利益を被っているという場面に頻繁に出くわす。不動産仲介事業者を介さなければ、売主にも買主にも、不動産仲介事業者のバイアスがかかっていない情報が届くことになる。

現代は、これだけのネット社会。例えば、個人情報の問題もクリアしながら買主が直接売主に買い付け申し込みを入れする仕組みなんて簡単にできる…はずだ(私はできないが…)。今までは、買い担当の仲介業者から買い付けの申し入れがあるのに、その情報が売主に届いていなかったり、買い担当の仲介業者から3000万円で買い付けの申し入れが来ているのに、自社の顧客で2500万円の顧客を優先する等と言うことは防げるようになると思う。売主や買主の利益を仕組みで保護する方法を我々プロは考えなくてはいけないと思う。

買主から直接買い付け申し込みを入れることができたら、プロがやることが無くなってしまうのではないか?そのよう様な話がよくある。プロがそんな発言をしているのであれば、もう仲介業はやめた方が良い。
買い付け申し込みを入れるなんて業務の中では本当に些細なことだ。例えば当社では、一般消費者では見極めることのできない情報の収集と開示に努める。さすがにこれら作業は個人間では不可能であろう。

プロがプロである由縁、報酬を頂く根拠、本当にプロが襟を正さなくてはいけない。

証拠を残そう

募集の要項に「歩合制」の文字や、並み外れた高給の表記があれば注意が必要だ募集の要項に「歩合制」の文字や、並み外れた高給の表記があれば注意が必要だ

先日、当社でもこんなことがあった。
当社の顧客の購入意欲が高く、売主の仲介業者に買い付けを入れたところ、物件は買い付け申し込みが入っており購入できないという。諦めきれない買主は、直接その不動産業者に問い合わせたところ物件はまだあるとのこと。直接この不動産仲介業者に相談すれば購入できるところをこの買主は、「こんなうそを言う業者に仲介手数料を支払いたくない」ということで、当社での仲介を強く希望された。そこで、当社から売主の仲介業者に相談した。「もしかしたら本当に買い付けが入っているのかもしれないが、もし仲介させてもらえるのであれば当社から別途報酬を支払うことも考えるがどうか?」と言ったら「それなら話は別」と、買い付けが入っていないことをあっさり認め、結果、いわれのない報酬を当社がこの売主の仲介業者に支払うことになった。

買主の為とはいえ、何とも苦虫を噛み潰すような思いをさせられた。その業者は多くの人が知っている大手仲介業者だ。「会社の領収書をちゃんと切ってくれ」と頼んだら、普通に会社の領収書が出てきた。会社の印が押印されているということは、その会社もその実態を把握しているということだ。把握をしていないとすれば、領収書と印鑑の管理があまりにもずさんであるということと、担当営業のポケットマネーになったのだろう。このような証拠は当社ではすべて残し、来るべき日に備えている。不動産業者間ではこんなバカなやり取りが連日続いているのだ。

「あなたの会社は歩合制ですか?」そんな質問も、事業者選びをするうえで必要なヒアリング項目かもしれない。聞かなくても「会社名 採用」と検索すれば、その会社の人材募集ページを見ることができる。そこに「歩合制」の文字や、人並み外れた高給の表記があれば注意が必要だと思う。

かくいう私も、ちゃんとできているのかと問われれば、まだまだな気がする。しかし、プロとして研鑽をつむこと、襟を正すこと、高い倫理観を持つこと、この様なことについては日々向上させていきたいと強く思っていることは事実である。

2014年 07月24日 09時40分