社会問題化した「悪徳リフォーム」

私が記憶している限り、悪徳リフォーム問題に火がついたのは以下の事件以降だと思う。

■埼玉県富士見市の高齢姉妹に係る事件(2005年5月初旬~ 報道各紙)
・埼玉県富士見市居住の認知症の高齢姉妹(80歳と78歳)が、3年間に5,000万円以上のリフォーム工事を繰り返し、代金が払えず自宅が競売にかけられた(富士見市の申し立てで中止)。
・調査した建築士は「普通は3つあれば十分な床下の換気扇が20~30個付けられていた。不必要な工事がほとんどで市場価格の10 倍以上の値段で行われており悪質」と話している。業者の中にはわずか11 日間で5回、計673万円分の「シロアリ駆除」や「床下調湿」などの契約を結んだ会社もあった。
・工事請負に名を連ねた業者は少なくとも16 社。このうち少なくとも3業者は代金を返す意向を富士見市に伝えている。
・姉妹は認知症であるため、内容がよくわからないまま業者に勧められるまま契約し、自宅が競売にかかっていることも理解できない状態。

■悪質業者元社員4名逮捕(6月30日~報道各紙)
・警視庁生活経済課は6月30日、東京都内にあったリフォーム会社「サムニンイースト」の元営業担当者ら4人を詐欺と特定商取引法違反(不実の告知)の疑いで逮捕した。
・うその説明で高齢者らに不要な住宅リフォーム契約を結ばせ、金をだまし取った疑い。
・同社はグループ数社とともに2002年以降、34都府県の約5,400人とリフォーム工事を契約。
約3年間の売り上げは全体で約115億円に上る。同課は売り上げの大半が不要な工事だったとみて追及する。(国土交通省発表資料より)

悪徳リフォーム会社の特徴

悪徳リフォームとは、主に訪問販売による建築請負契約についての悪徳商法行為で、正規の建築請負の上でのトラブルと区別が付き難いのが現状である。しかし、これらの事件にはいくつかの特徴がある。

①訪問販売である
頼んでもいないのに突然自宅へ押しかけ、リフォームのセールスをする。被害は訪問販売事業者に集中している。
②点検商法である
「近くに点検で回ってまして、今日なら無償で点検します」等と言い、床下や屋根裏など、素人では確認しにくい部分の点検をし、白蟻の発生や腐朽を指摘したり、耐震性などについても言及する。
③歩合給の営業マンである
かつて事件化したこれらの事案に携わった営業マンはほとんど歩合制の営業マンである。

これら事件が発生したため、今ではリフォームの訪問販売業は全く信用されなくなったため、この様な営業スタイルはほぼ絶滅している。また、歩合給のリフォーム会社も著しく減った。

なぜこのような事件が発生し得たのか?

これらの事件は「質」の問題ではなく、営業マンや会社の「徳(倫理観)」の問題によるところが大きい。だから私はこれらの事件はあえて「悪徳リフォーム」と呼んでいる。「質」以前の問題だ。なぜこんな事件の温床となってしまったのだろうか?

①リフォーム事業の参入障壁が低い
「建設業を営もうとする者は、請負金額が500万円未満の工事など、いわゆる軽微な工事のみを請け負って営業しようとする場合を除いては、建設業の許可を取得しなければならない」となっており、裏を返せば500万円未満の工事であれば何の許可もいらないというところに参入障壁の低さがある。昨日までオレオレ詐欺、今日からリフォーム事業者も可能なのだ。この点は今も変わっていない。
②リフォーム工事の値段がわかりにくい
物の値段であれば、インターネットなどでも相場観がつかみやすいが、リフォームの場合、住宅設備の販売の側面もあるが、多くは設計や大工工事等、役務の提供などであり、消費者にとって価格がわかりにくいと言う側面があることも否めない。適正価格のわかりにくさが、これら事件の大きな要因にもなっている。
③歩合制の営業マン
価格がわかりにくいのだから、歩合制はリフォーム業界には本来馴染まない。価格がわかりにくく歩合制だと「払ってもらえる人により多く払ってもらう」という動機が働く。こんな商売道徳は論外である。
④多くの消費者は「自分は建築がわからない」と思っている
本来、建築請負工事業を行うのであれば、それなりの知識力と技術力が必要だ。そこが盲点である。一般消費者の方は、建築は専門家でないとわからないと感じている。(事実ではあるが)医者に行って、「ここを切ってこう治してください。薬はこれを下さい」と言わないように、建築も「信頼できる人にお任せ」ということになるのである。難しさが、この様な事件の温床にもなっている。

理由は様々だが、大まかにこの4点が悪徳リフォーム事業者を存在させてしまう主な理由だったかもしれない。

リフォーム費用平均金額リフォーム費用平均金額

問題化するかもしれない悪「質」リフォーム

事件化したこれらの事案はまさに犯罪だが、悪質であることに気づいていない事業者が悪意なく悪質なことをしていることがある。私は今回の記事では、この点を声高にお伝えしたい。
昨今は、空前の「リノベーションブーム」と言ってもいいだろう。これらリノベーションを手掛けるリフォーム会社の多くは自社のリフォームのデザイン性のことを強くアピールする。デザインを強く押し出すのは構わないが、建築事業者としての素養はどうなのであろうかと考えたとき、心もとない事業者が多いのが現実だ。
リノベーションというと、マンションリフォームが先行している。不動産事業者による買取再販売事業の多くもマンションだ。なぜ、マンションを多く手掛けるのか?
その大きな理由の一つに、「建物の構造の問題にタッチしたくない」という事業者側の理由がある。マンションのリノベーションの場合、区分所有部のリノベーションであれば建物の構造に手を加えることは無い。ゆえに、構造性能に対して責任を持つ必要がほとんどないのである。だからマンションが中心となる。
では、マンション中心にリノベーションを手掛けている事業者に、木造一戸建てのリノベーションを依頼したらどなるか?恐らく多くの事業者は請け負うことだろう。木造一戸建てのリノベーションについては、多くは建物の構造をいじることになったり、構造性能の検証が必要だったりする。しかし、構造の知識の無いリノベーション事業者が請け負えば、お客様が「この壁を取ってほしい」と言えば、何の検証をすることも無く取ってしまうのである。これを私は「悪意の無い悪質リフォーム」と呼んでいる。
消費者も素人ならば、事業者も素人という悲惨な状態である。無知だからこそ、取ってはいけない壁を取ってしまうという暴挙ができるのである。せっかくリフォームをしてきれいになったのに、リフォームしたことによって耐震性が著しく損なわれ、地震が来て倒壊でもしたら悔やんでも悔やみきれない。

先日、NHKの朝の番組を見ていたら「リフォーム&リノベーションの落とし穴」というショッキングな特集が組まれていた。一部の心無い事業者の為に業界全体が不信感を抱かれる。このような轍は二度と踏んではいけないと思う。国民生活センターの資料(下図)によると、2008年より再びリフォームトラブルの相談が増加しているとのこと。
業界が率先して襟を正す必要があるだろう。

リフォームトラブルの相談件数推移(国民生活センター)リフォームトラブルの相談件数推移(国民生活センター)

耐震診断・改修ができない事業者は要注意!!

タイトルを“悪「質」リフォーム会社の見分け方”としたが、「善良なリフォーム会社」を見極められれば、そうではない会社をふるいから落とせるという意味で、この様なタイトルにした。
では、どのような資質が最低限必要なのだろうか?

① 建設業の許可の取得
500万円未満の工事しか請け負わなくても、最低限必要である。
② 建築士事務所登録
これが無いと、耐震基準適合証明書をはじめ、多くの証明発行業務などができない。当然建築士が在籍することになる。驚かれるかもしれないが、建築士が在籍していないリフォーム会社は意外と多く存在する。
③ 耐震基準適合証明書の発行実績があること
これは直接確認すると良い。「耐震診断・改修設計・耐震改修工事」できる事業者でないと木造住宅をリフォームする資格はない、と言い切っていいだろう。しかし、「耐震診断・改修設計・耐震改修工事」ができる会社は、感覚値ではあるが10社に1社程度しかないと思われる。この知識・技術力がない会社は建物の構造を理解していない。
④ 瑕疵保険検査会社登録があること
中古住宅を買ってリフォームする場合などは、瑕疵保険を付帯することがこれからの常識だろう。必要な登録である。
⑤ 既存住宅現況検査技術者が在籍していること
この技術者の制度は平成25年末から始まった新しい制度だ。恐らく、建物のインスペクションの担い手の多くは既存住宅現況検査技術者が担うことになるだろう。建物の現況確認を実施するエキスパートとして、同技術者の在籍は欠かせなくなる。

会社概要を確認し、会社へ問い合わせをし、これらの事実確認をされることを強くお勧めする。
耳が痛いリノベーション事業者も多いことだろう。当たり前のことではあるが、できない理由を消費者に押し付けるのではなく、消費者の利益が優先されるリノベーション業界でなければならない。

リフォーム・リノベーションを行う際は会社概要を確認し、</br>会社へ問い合わせをし、最低限必要な資質の事実確認をされることを強くお勧めするリフォーム・リノベーションを行う際は会社概要を確認し、
会社へ問い合わせをし、最低限必要な資質の事実確認をされることを強くお勧めする

2014年 05月09日 10時58分