全国の空き家が900万戸に達した。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月1日時点の空き家数は過去最多となり、総住宅数に占める割合も13.8%と過去最高になった。
こうした空き家の増加を受け、2023年12月には改正空家法が施行され、「管理不全空家等」が新たに設けられた。倒壊などの危険がある「特定空家等」になる前の段階から、自治体が所有者に指導や勧告を行えるようになったのである。
では、自治体は実際にどこまで対応しているのだろうか。国土交通省によると、改正空家法の施行後、2025年3月31日時点で「管理不全空家等」に対する指導は3,211件、勧告は378件に上っている。
「まだ実家は大丈夫」と考えていても、自治体による調査や所有者への対応はすでに始まっている。実際にどのような空き家が指導の対象となっているのか。自治体の判断基準を交えながら、管理不全空家等をめぐる現状と、所有者が今から考えておきたい対応策を見ていく。

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空き家900万戸のうち「その他の空き家」は385万戸

空き家900万戸という数字のすべてが、長期間放置されている住宅というわけではない。まずは総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」から、その内訳を見てみよう。

住宅・土地統計調査から見る空き家の現状

総務省によると、2023年10月1日時点の空き家は900万戸で、2018年の849万戸から51万戸増加した。空き家率も13.8%と過去最高である。
空き家は「賃貸用の空き家」「売却用の空き家」「二次的住宅」「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に区分される。このうち、最後の区分は385万戸で、空き家全体の約4割を占める。2018年の349万戸からも増加している。

放置されやすい「その他の空き家」とは

「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は、一般に「その他の空き家」と呼ばれる区分である。総務省によれば、転勤や入院などで長期不在となっている住宅や、建て替えなどのために取り壊す予定の住宅などが含まれる。
したがって、385万戸すべてが管理されていないわけではない。ただ、賃貸や売却を目的とした住宅、別荘などとは異なり、利用目的が決まっていない住宅も含まれるため、管理が行き届かないまま放置される可能性がある。

特に一戸建てではその傾向が顕著だ。総務省の同調査によると、一戸建ての空き家352万3,000戸のうち、「その他の空き家」は285万1,000戸で、80.9%を占める。

適切な管理が行われず、周辺環境や安全面に影響を及ぼす状態になれば、自治体の指導対象になる可能性がある。次章では、実際にどのような状態が「管理不全」と判断されているのか、具体例を見ていこう。

実際にどのような空き家が「管理不全」と判断されているのか

管理されていない空き家管理されていない空き家

「管理不全空家等」と聞くと、今にも倒壊しそうな廃屋をイメージするかもしれない。しかし、国土交通省のガイドラインを見ると、対象となる状態はそれだけではない。建物や敷地のさまざまな劣化や管理不足が、放置すれば周辺に悪影響を及ぼす可能性のある状態として示されている。

国土交通省のガイドラインでは何が問題になる?

国土交通省の「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」では、管理不全空家等について、建築物や敷地の状態だけで一律に判断するのではなく、放置した場合に周辺へどのような悪影響を及ぼすおそれがあるかなどを踏まえ、総合的に判断する考え方が示されている。
具体的には、以下のような状態が放置され、将来的に倒壊や部材の飛散、不法侵入などのリスクが高まるケースが該当する。
・建物の損壊: 構造部材の破損・腐朽、屋根や外装材の剥離・落下、雨水の浸入
・敷地・設備の管理不足: 門や塀の劣化、窓ガラスの破損、ごみ放置による悪臭・害虫の発生
・樹木・立木の問題: 枝葉の道路や隣地へのはみ出し、立木の腐朽

重要なのは、こうした項目の一つに当てはまっただけで機械的に管理不全空家等に認定されるわけではない点だ。国土交通省も、ガイドラインに示した状態の例だけでなく、個別の事案に応じて適切に判断する必要があるとしている。つまり、建物の傷み具合だけでなく、周辺への影響なども含めて自治体が判断する仕組みとなっている。

自治体の判断基準から見る「管理不全空き家」の実態

では、実際の自治体では、どのような状態の空き家を管理不全空家等として捉えているのだろうか。自治体が公表する認定基準やチェック項目を見ると、倒壊リスクだけでなく、身近な問題も対象になっていることが分かる。
例えば小田原市は、管理不全空家等や特定空家等に該当するかを判断する視点として、多数の窓ガラスの破損や外壁への落書き、梁や垂木などの腐食・破損、外壁のモルタルやタイルの剥落、ごみの集積による臭気、立木の枝や葉が道路にはみ出している状態などを挙げている。

また、相模原市でも、屋根材の飛散や塀・建物の倒壊に加え、草木の繁茂や害虫の発生なども、空き家の管理を怠った場合に周辺住民の生活へ悪影響を及ぼすものとして挙げられている。市は、国のガイドラインに沿って「空家等の物的状態」と「空家等がもたらす周辺への悪影響の程度」を考慮して認定するとしている。
「まだ倒壊していないから大丈夫」と過信するのは禁物だ。割れた窓ガラスや伸び放題の樹木など、一見すると軽微に思える放置状態であっても、自治体から指導の対象とされる可能性がある。

勧告を受ける前に。空き家所有者が考えたい出口戦略

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ここまで見てきたように、管理不全空家等は「今にも倒壊しそうな廃屋」だけを指すものではない。では、自治体から指導を受けた場合、所有者はその後どのような対応を求められるのだろうか。特に注意したいのが、段階的に行われる「指導」と「勧告」、そしてそれに伴う増税リスクである。

指導から勧告へ進む流れと固定資産税への影響

適切な管理が行われていない空き家に対し、自治体(市区町村長)は段階を経て対応を進める。具体的には、「指導」が行われ、それでも状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれが大きいと認められる場合に「勧告」へと進む仕組みだ。
このプロセスの中で、所有者にとって大きな影響を及ぼすのが固定資産税である。
通常、住宅が建っている土地(住宅用地)には固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)が適用されている。200m2以下の小規模住宅用地は課税標準が価格の6分の1、200m2を超える部分は3分の1に減額されているため、税負担が低く抑えられている。

しかし、自治体から「勧告」を受けると、この住宅用地特例の対象から除外される。特例が解除されれば、土地部分の税負担が大きく跳ね上がる可能性がある。

ここで押さえておきたいのが、住宅用地特例が解除されるタイミングだ。「指導」を受けた時点では特例は解除されない。指導に応じず放置し続け、「勧告」に至った段階で初めて特例の対象外となる。

「固定資産税が6倍になる」とは限らないが、事前対策は必須

住宅用地特例の対象から外れると「固定資産税が6倍になる」と表現されることがあるが、必ずしも税額全体が単純に6倍になるわけではない。固定資産税額は土地の評価額や面積などによって異なるほか、特例が外れた土地についても、課税標準額の上昇を抑える「負担調整措置」が設けられているためだ。総務省によれば、宅地については課税標準額が評価額の70%を上限とする仕組みがある。
また、住宅用地特例は土地部分に適用されるものであり、建物部分の固定資産税は建物の評価額に応じて別途課税される。したがって、勧告を受けて住宅用地特例が解除された場合も、実際の税負担がどの程度増えるかは、土地や建物の評価額、面積などによって異なる。

とはいえ、土地部分の税負担が大幅に増加することは避けられない。課税強化という実質的なペナルティを受けてから慌てて対応するのではなく、「指導」を受ける前の早い段階から、空き家をどう扱うか方針を定めておくことが重要だ。

管理不全空き家は「他人事」ではない。実家をどうするか早めに考えよう

管理不全空家等への指導・勧告は、すでに各地の自治体で広がりつつある。対象となるのは、倒壊寸前の廃屋だけではなく、屋根や外壁の破損、草木の繁茂など、日頃の管理不足が生んでいる身近な空き家も含まれる。
実家を相続したものの、住む予定がない、遠方に住んでいて管理できないという場合は、まず現状を確認しておきたい。そのうえで、継続して管理するのか、売却するのか、隣地所有者などへの譲渡を検討するのかなど、早い段階から出口を考えておくことが重要である。
空き家は、放置して時間が経つほど建物の老朽化が進み、維持管理の負担や税金リスクが大きくなっていく。「まだ大丈夫」と先送りにせず、気付いた時点から早めに自治体の窓口や専門家に相談するなど、具体的な対応を進めていくことが重要だ。

(出典)
・国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(令和7年3月31日時点)」
・総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果の概要」「用語の解説」
・小田原市「小田原市管理不全空家等及び特定空家等判断基準」
・相模原市「管理不全空家等及び特定空家等の認定基準」