”新しいあたりまえ”をつくる。コスモスイニシアがリノベ物件に込めた、多様な家族への想い

株式会社コスモスイニシア 流通事業部 大澤龍一氏(左)と流通事業部事業推進部 小内るみな氏(右)株式会社コスモスイニシア 流通事業部 大澤龍一氏(左)と流通事業部事業推進部 小内るみな氏(右)

生き方や家族の在り方が多様化する現代。しかし、日本の住宅市場や住宅ローンの仕組みは、いまだ「従来のファミリー層」を基準に作られていることが多く、異なる前提を持つ場合には、理想の家を手に入れることは容易ではない。

そんな中、不動産デベロッパーの株式会社コスモスイニシア(以下、コスモスイニシア)が社内コンペティションから立ち上げた、港区赤坂に位置する、女性カップルの暮らしを想定したリノベーションマンションに注目したい。

単なるトレンドとしての“多様性”や“LGBTQ”に向けた取り組みではなく、住まう人の人生に徹底的に伴走しようと細部までこだわり抜いた住空間の全貌、さらに住まう人を思ったイメージを形にする同社の熱意を、企画チームの流通事業部 大澤龍一氏と、物件の販売に携わる流通事業部事業推進部 小内るみな氏に尋ねた。

「家を買うことは、プロポーズ」当事者の声をヒントに進んだプロセス

社内プレゼンの様子。大澤氏は普段は区分マンションの仕入業務に従事しており、商品企画はこのコンペティションが初となる社内プレゼンの様子。大澤氏は普段は区分マンションの仕入業務に従事しており、商品企画はこのコンペティションが初となる

今回のプロジェクトは、リノベーションマンションの新規商品立案を目的とした社内コンペ「Next GOOD Challenge(ネクストグッドチャレンジ)」がきっかけとなっている。このコンペは「未来の当たり前を創造・実現する」を掲げて毎年開催されている有志参加型社内企画で実際に商品化、販売される。住宅のこの先のトレンドを感じさせる場としても注目の企画だ。

ネクストグッドチャレンジでは、参加チームごとに割り当てられた住戸を対象に、テーマに沿って1年間をかけてリノベーション企画を提案する。「あらゆる2人」というテーマの下に大澤氏たちのチームに渡されたのは、港区赤坂という、洗練された静かな立地のビンテージマンションの一室だった。

赤坂・六本木・青山にも好アクセスで閑静な住宅街。加えて、港区には「みなとマリアージュ制度(パートナーシップ制度)」があること、赤坂にはレズビアンバーが多くあることから、チームは「女性カップルのための住まい」というコンセプトを発案する。

しかし、初期のプレゼンに対する審査員からの評価は厳しいものだった。
”LGBTQ当事者への課題を設備で解決する”という、教科書的な切り口に終始していたため、「これではあまり面白くない。住む人がワクワクするきっかけになっていない」と一蹴されてしまったのだ。

「綺麗事のプランでは誰にも届かない」と痛感したチームは、当事者のリアルな暮らしを知るために動き出す。
LGBTQ向けの不動産サポートを行う株式会社IRISの協力を得て当事者にインタビューを重ねたほか、チームのメンバー自らレズビアンバーに足を運び、カウンター越しにママや当事者のお客さまの「生の声」に耳を傾けた。そこで出会った言葉にチームの心は激しく揺さぶられた。

「同性カップルにとって、家を買うっていうのは、なんかプロポーズみたいだよね」

婚姻関係が法的に結べない、住宅ローンのハードルが高いなど、多くの障壁がある同性カップルにとって、2人で家を買うという大きな決断は、単なる住宅購入ではない。それは「これからもずっと一緒に生きていく」という関係性の証明であり、人生の覚悟そのもの。
この言葉を引き出せたことで、チームの視界は一気にクリアになり、「課題を解決する」という受動的なスタンスから、「2人にとって心地よく、長く、誇りを持って暮らせるワクワクする家をつくろう」という能動的なビジョンへと、プランが劇的にブラッシュアップされた。

社内プレゼンの様子。大澤氏は普段は区分マンションの仕入業務に従事しており、商品企画はこのコンペティションが初となる当初3DKの部屋を2LDKに変更し、収納スペースを各所に配置。採光が豊かでありつつプライバシーに配慮した造りになっている

2人の暮らしの質を高める、洗練された「一点物」の空間

リビング
玄関前の廊下。右手が土間仕様のシューズインクロゼットになっていて、キャリーケースなどをそのまま収納できる。左には天井高玄関収納が2列並ぶ玄関前の廊下。右手が土間仕様のシューズインクロゼットになっていて、キャリーケースなどをそのまま収納できる。左には天井高玄関収納が2列並ぶ

玄関を開けると、アイボリーホワイトを基調とした居室が広がる。
室内のコーディネートは、大人の雰囲気が漂う赤坂の立地に馴染む、美術館やカフェ、趣味を愛するハイキャリアな2人をイメージした風合いに仕立てている。
ホテルや商業施設などを手掛けるデザイナーによって編み出されたコスモスイニシア独自のカラーパターンを採用し、統一感と落ち着きのある明るい色合いが印象的だ。

ブームのII型キッチンを採用し、シンクに向かい合うようにデザインされたカウンターテーブル。一枚板の人工大理石のシームレス感が美しいブームのII型キッチンを採用し、シンクに向かい合うようにデザインされたカウンターテーブル。一枚板の人工大理石のシームレス感が美しい

間取りは、大人の女性2人暮らしを意識し、水回りの生活音が聞こえづらい配置になっている。
セキュリティやプライバシー面でも、玄関から直接リビングが見えないようにドアをクランクさせ、アウティングにならない配慮を設計で具現化している点も画期的だ。
また、築年数が経っている物件のため、リビングでの存在感が出てしまう梁(はり)。どうしても視界に入る凹凸を、キッチン横につややかなタイルを貼ることで視点誘導をして目線を散らすなどの工夫が施されている。

明るいドレッシングルーム。シンク下や両サイドのほか、鏡収納もシンメトリーに配置されている明るいドレッシングルーム。シンク下や両サイドのほか、鏡収納もシンメトリーに配置されている

設備面においても、心配りが光る。
並んでメイクができるダブル洗面と両サイドの収納、さらに女性だと増えがちな所有物を、それぞれに管理できるシューズインクロゼットや各室の収納も2つ。2人暮らしにぴったりのサイズのパントリーもあり、収納スペースは潤沢だ。
そのほかにも、廊下やリビング内に飾り棚やスポット照明といったアイキャッチを設えるなど、女性カップルが日常を楽しむ様子が浮かぶようだ。

「アライになろう」と叫ぶより、リノベーションマンションの一室で見せる説得力

「アライになろう」と叫ぶより、リノベーションマンションの一室で見せる説得力

このプロジェクトを単なる商材企画で終わらせないために、チームがこだわった点のひとつが「事業として継続させられる体制づくり」でもあった。実際に当事者の方に選ばれ購入してもらうことだけでなく、社内の啓蒙活動の意図も含めていたという。

大澤氏「『LGBTQに対してみんなでアライになりましょう』と伝えても、言葉は流れてしまいがちです。けれど、実際に当事者が心地よく暮らす物件としての”形” があれば、社内外へ一瞬で想いが伝わるのではという狙いもありました」

コスモスイニシアのリノベーションブランド「INITIA&Renovation(イニシア&リノベーション)」では、“選択の手間を取り除き、住まい手の時間と暮らしの質を高める”というコアバリューを掲げている。それを構成するのが、①ホスピタリティ(不安・負荷の先回り解消)②充足感(心と体が満たされている精神的な安定)③高揚感(気分や感情が高まり、期待感、ワクワク感、幸福感で満たされた状態)の3つであり、重要視するポイントでもある。
赤坂のリノベ物件に込めたのは、単なる住居の提供ではなく、「どんな選択をしても、安心してワクワク暮らせる未来」そのものといえるだろう。

コスモスイニシアは、一般社団法人リノベーション協議会が年に1度その年の魅力的なリノベーション作品を決定するアワード「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」を3年連続受賞。さらに、公益財団法人日本デザイン振興会主催「グッドデザイン賞」も23回56プロジェクトが獲得している。
同社の高い技術力と感性があるからこそ、住む人に「精神的な安定や充足感」と「これからの暮らしへの期待と高揚感」を提供できるのだと思える。

住まいの境界線をなくしていく。ニューノーマルな暮らしを見据えた次なる挑戦

大澤氏、小内氏の今後の展望には、付加価値の追及が感じられる大澤氏、小内氏の今後の展望には、付加価値の追及が感じられる

今後の展望について尋ねたところ、大澤氏、小内氏、それぞれが注目する“未来のあたりまえ”を語ってくれた。

大澤氏「個人的なところでは、今回の知見を生かして男性カップルが一番暮らしやすいプランも検討してみたいですね。会社としては、インクルーシブデザインにも取り組み始めました。この考え方は住宅の領域でもニューノーマルになっていくのではないかなと思っています」

コスモスイニシアでは、インクルーシブデザインスタジオCULUMUと連携し、発達特性のある人やその家族の暮らしやすさに配慮したインクルーシブデザインの考え方を取り入れたリノベーション物件を、すでに戸越・千石・練馬と3件竣工している。

小内氏「コスモスイニシアでは、標準仕様のリノベーションマンションを『INITIA LINE(イニシアライン)』と名付け、シリーズ展開しております。いずれは『INITIA LINE』にインクルーシブデザインの視点を取り入れられないか、標準仕様の改良を試みています」

さらに、販売後の物件の関わり方にも、小内氏は思いを寄せる。

小内氏「リノベーション業界では最長クラスのアフターメンテナンスが15年保証された『プラチナメンテナンスサービス』を提供しています。売って終わりではなく、販売後に関係性をより深めていく取組みにも力を入れていきたいです」

コスモスイニシアがこのリノベーション物件に込めたのは、単なる住居の提供ではなく、「どんな選択をしても、安心してワクワク暮らせる未来」そのもの。日本の住まいの新しい在り方になっていく、そんな未来を感じさせる物件だった。

なお、本物件の購入に関する問合せは、コスモスイニシア渋谷青山営業所が窓口となっている。(※本物件が成約済みの場合はご容赦ください)

今回お話を伺った方

今回お話を伺った方

(写真左から)株式会社コスモスイニシア 流通事業部 渋谷青山営業所 大澤龍一氏、流通事業部 事業推進部 流通推進二課 チーフ 小内るみな氏

■コスモスイニシア リノベーションマンション
https://www.cigr.co.jp/pj/contents/renovation/
■女性同士のパートナーシップを想定したリノベーション住戸が竣工
~「LGBTQのためのマイホーム相談会」に出展し接点を創出~
https://www.cigr.co.jp/newsrelease/2026/06/renovation_ngc_lgbtq/

※ LGBTQ=セクシュアルマイノリティの総称の一つ。L(レズビアン:女性同性愛者)・G(ゲイ:男性同性愛者)・B(バイセクシュアル:両性愛者)・T(トランスジェンダー:体の性と心の性が一致しない人)・Q(クエスチョニング:性自認や性的指向が定まっていない人、その他のセクシュアルマイノリティ)を表す。本記事では、あらゆるセクシュアルマイノリティの方が含まれる総称を「LGBTQ」とし、便宜上表記を統一している。