データが明かす「住宅購入の壁」。LGBTQ当事者と企業の架け橋となる『FRIENDLY DOOR FES』開催レポート
近年、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ・アンド・インクルージョン)への取組みが社会全体で加速しているが、人生の大きな買い物である「マイホーム購入」において、LGBTQ当事者が直面するハードルは依然として高いままだ。
株式会社LIFULLが実施した「LGBTQの住宅購入に関する実態調査」によると、当事者による回答の約8割が、セクシャリティを理由に何らかの困難や不安を感じた、あるいは諦めた経験があると回答している。その背景には、住宅購入に関する手続きの過程で関係性を開示することへの負担や、自分たちに合った情報にたどり着けない不安が、選択肢を狭めている。 さらにはそうした心理的負荷によって、住宅購入のスタートラインに立つこと自体に難しさがあるのが現状だ。
こうした「住まい探しの格差」を解消し、誰もが自分らしく暮らせる家と出会える場を目指して、2026年5月16・17日に「LGBTQのためのマイホーム相談会 -FRIENDLY DOOR FES-」が開催された。
本レポートでは、当事者に寄り添う大手住宅メーカーや不動産販売、デベロッパー4社の取り組みや、専門家によるセミナー、そして参加者のリアルな声と、これからの住まい探しのヒントが詰まったイベントの模様をお届けする。
出展企業ブース/コスモスイニシア・大和ハウス工業
「知る・出会う・相談する」を1日で体験することをコンセプトとした今回のイベント。
“出会う”を担うLGBTQフレンドリー企業ブースには、4社が出展。分譲マンションや一戸建てといった、さまざまな住まいづくりや不動産販売を扱う企業の担当者に、直接気軽に話を聞くことができる仕様だ。
株式会社コスモスイニシアは、大和ハウスグループに属する総合不動産会社。「Next GOOD」を掲げ、住宅販売領域では自社ブランド「INITIA」にてトータルデザインによる新築マンション・リノベーションマンション・新築一戸建てを提供している。
本イベントでは、リノベーションマンションを主に手掛ける担当者が対応。中でも、竣工間近なレズビアンカップル向けに特化した物件のプロモーションに力を入れており、“大人の女性2人暮らし”を考え抜いた部屋作りに、来場者も熱い視線を向けていた。
住宅・建設業界のリーディングカンパニーである大和ハウス工業株式会社のブースでは、個人向けの注文住宅やマンションの分譲などを紹介。ハウスメーカーならではの住む人の暮らしに合わせた家づくりの強みから、当事者の望みをかなえる住宅の相談に乗れるとのことだった。
ブースでは、一戸建て住宅・分譲マンションの紹介のほか、自社サービスの案内も行っていた。大和ハウス工業では、規格住宅・セミオーダー住宅の3000以上の間取りがweb上で見られる「My間取りサーチ」や家づくりのためにユーザーが欲しい情報を集められる「デジタル展示場」を展開中。店頭に赴かなくても安心して“欲しい”情報が集められるサービスは、当事者のニーズにも親和性が高い。住まいづくりのプロセスを楽しめるはずだ。
出展企業ブース/東急不動産・野村不動産ソリューションズ
東急不動産株式会社は、任意団体「work with Pride」が策定するLGBTQ+への取り組み評価指標「PRIDE指標」において、最高ランクの「ゴールド」を5年連続で受賞。
東急不動産では、多様な人材が安心して働ける職場環境を目指し、DE&Iビジョンの策定をはじめとし、人事制度の改定や研修の実施、LGBTQ+に関するガイドラインの作成、アライ表明ツールの作成・配布等、さまざまなサポート体制を整え、当事者に寄り添う姿勢を明確に示している。
ブースでは、同社が供給する分譲・賃貸の住まいのブランドを紹介。中でも分譲マンション「BRANZ(ブランズ)」の高い環境性能やデザイン性、ハード・ソフトの両面からの多様なライフスタイルを伝えた。そんな「BRANZ」だからこそ、誰もが自分らしく、安心して将来を託せる住まいを望む来場者に、強く響いていた。
野村不動産グループにおいて不動産仲介事業を担う野村不動産ソリューションズ株式会社は、「PRIDE指標」で2年連続の「ゴールド」を取得しており、多様な生き方や暮らしに深く寄り添う姿勢を大切にしている企業だ。
同社が展開する「野村の仲介+(PLUS)」の店舗を通じて、物件の売買や住み替えに関するプロのノウハウを直接相談できるのが大きな強みである。同性カップルにおける住宅購入では、単に物件を探すだけでなく、購入から売却までの将来の資産形成を見据えた長期的な視点が欠かせない。
当日のブースでは、確かな専門知識を持ったスタッフが親身に対応。ライフステージの変化に応じた住まい探しの選択肢を提示し、一歩踏み出したい来場者にとって、信頼して未来を託せる心強いパートナーとしての存在感を放っていた。
そのほか、不動産仲介の株式会社IRISは会場2階に個別相談ブースを構え、総合的な相談にも対応。来場者の「知りたい」に応える会場展開となっていた。
【セミナー1日目】同性婚ができないからこそ「家」でお互いを守る。大関久美子氏が語る、ふたりの未来のための住宅購入セミナー
イベントの“知る”を担う住宅購入基礎セミナーは、両日それぞれ講師の切り口で行われた。
1日目のセミナーを担当したのは、LGBTQ+当事者である士業や議員が中心となって立ち上げた、当事者のための専門総合相談窓口・プロジェクトチーム「by for the rainbow」の代表で、ユクエテラス株式会社取締役の大関久美子氏。テーマは「『もしも』に備える、ふたりのための住宅購入」と題し、住宅購入を検討し始めた同性カップルに向けた内容となっていた。
セミナー前半は、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、相続アドバイザーなど資格をもつ大関氏が、住宅購入のノウハウを解説。昨今の住宅販売価格の変化と背景や、基本的な住宅購入の流れ、同性カップルだからこそ気を付けておきたいポイントを併せて解説した。
セミナー後半では、「先輩カップルの住宅購入インタビュー」と冠し、by for the rainbowのサポートを受けて住宅購入をした同性カップルが登壇。大関氏からの質問に答える形で進行し、自身の経験や購入当時の悩み、心の内も語っていた。
葛藤する場面もあったそうだが、「今の暮らしがとても楽しい」と語るお2人。笑顔が会場の空気を柔らかなものに変えた様子が印象的だった。
登壇に寄せて、大関氏は同性カップルの住宅購入にエールを送った。
「LIFULLをはじめ多くの企業の取り組みによって世の中は確実に変わっており、今はまだ同性婚はできませんが、周囲のサポート環境や整備は整ってきています。『自分たちにはまだ早い』と諦めることなく、自分たち2人の人生をどう描きたいかという“選択”を大事にしてほしいと思います」
【セミナー2日目】人気YouTuberも登場!来場者参加型でプロの実務ノウハウを学ぶ、IRIS須藤氏の購入ガイド
2日目のセミナーは、LGBTQ当事者向けの不動産仲介事業を展開しているIRIS代表取締役の須藤啓光氏が登壇。来場者参加型のセミナーが展開された。
冒頭は、LIFULLの調査データなどをもとに、「今、どのような課題があるのか」という現状を来場者と共有。次に、実際に住宅を購入するにあたって、どのようなスケジュールで動くことになるのかという住宅購入のスケジュール感や金融機関の最新の対応状況について解説。その上で、ペアローンなどを組む際に「どこの金融機関で公正証書が必要になり、どこなら不要なのか」という、住宅購入を検討し始めた当事者が最も気になる実務的なポイントに触れた。
またイベントには須藤氏のパートナーとともに、人気YouTuber「虹色パンデミック」のメンバーも登壇。フランクな雰囲気の楽しいセミナーとなった。
同性カップルの住宅購入の課題について、「心理的障壁・相続と手続きの壁・カップル間の関係性の深さが試される、という3つの難しさがある」と語る須藤氏。しかし、不動産仲介のプロとして、叶えたい暮らしを描く当事者の背中を押す。
「これまでは『賃貸がゴール』と思われがちでしたが、首都圏の不動産価格高騰や更新料の上昇を背景に、資産形成として購入を検討する当事者が増えています。住宅購入は半年〜1年をかける長期戦。『完璧な物件』はないので、価格が下がったタイミングで購入し、浮いたお金で追加リノベーションをするなどの柔軟な選択肢もあります。ぜひ楽しみながら、ポジティブに理想の暮らしを考えてほしいですね」
不動産業界に投じた確かな一石。双方の「生の声」が響き合った『FRIENDLY DOOR FES』が新たな潮流をつくる
イベントの3本柱のひとつ“相談する”は、イベント会場2階にて個別相談会を実施。各企業展示を回って個別で相談したい方が、無料でじっくりと話を聞くことができる、というものだ。
会議室を利用した完全個室のため、プライバシーを守るだけでなく子ども連れでも周りを気にせず話ができる環境に、多くの好評が寄せられていた。
2日間のイベントを盛況に終え、後日集計した来場者アンケートによると、来場者からは「安心して相談できた」「理解のある不動産会社と出会えた」などの声が多く、LGBTQ当事者向けの住まい相談機会へのニーズの高さがより明らかとなった。さらに、「住宅購入の手続きや制度の説明をもっと聞きたい」「経験者の話をもっと聞きたい」といった、次なる開催への期待が寄せられていた。
LGBTQフレンドリーな不動産会社や住宅購入の専門家が一堂に会し、住まい購入に関する具体的な相談の機会や購入に関わる知識・ノウハウを学べる機会となった本イベント。来場者のみならず、出展企業からも「なかなか聞くことのできない当事者のお客様の声を直接伺うことができ、企業としても非常に参考になった」との感想もあった。不動産業界に一石を投じる機会となったようだ。
相手のありのままを無条件に受け入れる開かれた対話の場。その次なる展開に期待したい。
■LGBTQのためのマイホーム相談会 -FRIENDLY DOOR FES-(開催終了)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000849.000033058.html
※ LGBTQ=セクシュアルマイノリティの総称の一つ。L(レズビアン:女性同性愛者)・G(ゲイ:男性同性愛者)・B(バイセクシュアル:両性愛者)・T(トランスジェンダー:体の性と心の性が一致しない人)・Q(クエスチョニング:性自認や性的指向が定まっていない人、その他のセクシュアルマイノリティ)を表す。本記事では、あらゆるセクシュアルマイノリティの方が含まれる総称を「LGBTQ」とし、便宜上表記を統一している。
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