2026年5月12日、三菱地所(以下「同社」とする)が2026年3月期(以下「当期」とする)決算短信を公表した。本稿では、このうち特徴的と見込んだ箇所をごく簡単に解説する。
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2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)‐三菱地所
三菱地所IR情報
益出しにより当期純利益2桁増
最初に、売上や財政状態の動きに着目した。材料は当期と前年(以下「前期」とする)の決算短信で、計算値は黄色く着色した。
営業収益は前期比10.5%伸びたものの、営業原価(前期比11.1%増)や販売費・一般管理費(同15.0%増)の伸びがそれを上回った。この結果、営業利益の伸びは前期比6.6%にとどまり、一昨年(以下「前々期」とする)から前期までの伸び率11.0%を下回った。販売費・一般管理費の伸びは、同社のCMを見る機会が皮膚感覚でも増えていることに符合する。
同社は、2028年に完成予定で、日本一の高さとなる東京駅前の超高層ビル「Torch Tower」を始めとする丸の内・大手町・有楽町エリアでの再開発などを進めている。こうした大型開発にあたり、街づくりやブランド化を見越して認知度を高めるため、宣伝費などを戦略的に増やしている可能性を見込む。
一方、(ア)で示したとおり、当期純利益は286億円増と13.8%伸びた。伸び率では営業利益(6.6%)の倍以上だが、特別利益の増加額が292億円とほぼ同水準に達している。数値上は、当期純利益の伸びを特別利益の伸びから捻出したことになる。
(イ)で示したとおり、当期の当期純利益は2,355億円だが、先にも触れた特別利益が1,095億円と半分弱の46.53%を占める。その特別利益の内訳では、981億円の投資有価証券売却益が9割近くの89.55%を占める。
1937年設立の同社ゆえ、相当数の政策保有株式の保有が見込まれることから、近時の好調な株価によって拡大した含み益を売却によって実現させ、利益に充当した構図が容易に連想可能だ。公表済みの「2025年度(2026年3月期)決算 IR Presentation」では、2026年度の業績予想でも、「政策保有株式の売却を中心に特別損益は750億円を見込む」との記載がみられる。利益だけでこれだけの水準を複数年にわたって見込むとなると、相場に引きずられる面が小さくない。同社の財務部門には相応の重圧が掛かっていることだろう。
これらの一方、当期は取得した資産の収益性低下・時価下落等に伴う減損処理は未計上だ。土地などの仕入れの目利きが同社の強みとなっていることが窺える。
長期の調達には相対的に慎重
同社は当期に有利子負債を2,449億円増やしているが、(ウ)のとおり、そのうち社債と長期借入金の合計は1,003億円と約4割に過ぎない。過去に調達した1年以内償還の社債や1年以内に期日の長期借入金の増加額1,579億円の三分の二以下に過ぎないことから、金利上昇を見越して調達を急ぐ動きにはそれほど積極的ではないことが窺える。これも、含み益を抱える余裕ということなのかも知れない。





