電力需給の見通し

7~9月にかけての各地の気温は「平年並みか、もしくは高い」と予報されている7~9月にかけての各地の気温は「平年並みか、もしくは高い」と予報されている

2022年6月は記録的に早い梅雨明けを迎え、全国各地で観測史上最も高い気温を記録した。気象庁は、ラニーニャ現象の影響により2022年の夏は北・東・西日本で暖かい空気に覆われやすくなると予想している。7~9月にかけての各地の気温は「平年並みか、もしくは高い」と予報されており、今年も猛暑となる見込みだ。

気象庁 向こう3か月の天候の見通し
https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/kaisetsu/?region=010000&term=P3M

猛暑となると、気になるのは電力ひっ迫の可能性である。家庭で使用する電力の消費量は、夏季・冬季ともにエアコンが最も多く、全体の3割以上を占めている。猛暑や厳寒になればエアコンの使用量が増えるため、電力の需給状況は厳しくなってしまう。

2022年6月に経済産業省が公表した「2022年度の電力需給に関する総合対策」によると、2022 年度夏季の電力需給は、10 年に一度の猛暑を想定した場合、安定供給に最低限必要な予備率 3%をかろうじて上回る状況となることが予測されている。

経済産業省 2022年度の電力需給に関する総合対策を決定しました
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607003/20220607003.html

予備率とは、ピーク時の電力需要に対して供給力の余裕がどの程度あるかを示す指標だ。供給力から最大需要を差し引いた値を最大需要で割って求めた数値となる。

予備率

予備率 = (供給力 - 最大需要) ÷ 最大需要

供給力は発電能力から算出できる既知の数値であり、固定値となる。一方で、最大需要はあくまでも予想値であり、変わる可能性のある変動値である。最大需要の予想は3%程度のブレが生じる可能性があることがわかっており、予想とのブレを考慮すると電力の安定供給には3%以上の予備率が最低限必要ということになるのだ。

7~9月にかけての各地の気温は「平年並みか、もしくは高い」と予報されている出典:経済産業省ウェブサイト
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607003/20220607003.html
2022年度の電力需給に関する総合対策 (概要) 2022年度の厳しい電力需給の状況

2022年度の電力需給に関する総合対策

「2022年度の電力需給に関する総合対策」の予測では、2022年の7月の予備率が最も厳しく、東北・東京・中部エリアで3.1%となっており、ギリギリ3%を上回る状況だ。8月になれば北海道と沖縄を除くエリアの予備率は4.4%、9月になれば5.6%になると予測されており、8月以降は状況が改善されていく見込みとなっている。

一方で、2022年の冬季の電力需給見通しは、夏季よりも厳しい。10年に一度の厳寒を想定した需要に対し、東京から九州まで計 7 エリアで予備率 3%を下回り、特に東京エリアにおいて1月、2月は予備率がマイナスになると予測されている。

家庭の電力消費量は、一般的に夏場よりも冬場の方が大きくなる。資源エネルギー庁によると、家庭における1日の電力消費量は夏季が13.1kWh/世帯・日であるのに対し、冬季は14.2 kWh/世帯・日だ。

経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/index.html

冬の電力消費量が増える理由は、冬では室内を快適な温度にしようとすると室内外の温度差が大きくなり、エアコンで設定温度に到達するまでの消費電力量が多くなることが主な原因となっている。

仮に夏の電力需給を乗り切ったとしても、次の冬には夏以上に厳しいひっ迫状況が予想されている。

日本の電力供給状況とリスク

日本の電力供給の構造は、東日本大震災以降、大きく変わっている。国内の大部分の原子力発電所は停止中であり、火力発電の依存度が高くなっている状態が続いている。太陽光発電等の再生可能エネルギーの発電設備は増えているものの、原子力発電の発電量には追い付いていない。多くの原子力発電所が停止した以降は、火力発電を「炊き増し」することで電力を賄っている状況だ。火力発電の依存度が高まると、資源の少ない日本で顕在化するのは「燃料の調達リスク」である。

火力発電で火力を生み出すには、石油や石炭、あるいは液化天然ガス(LNG)といった資源が必要となってくる。いずれの燃料も燃やすことでCO2を発生させてしまうが、その中でもLNGは他の燃料と比べてCO2の発生量が低いとされている。

現在、世界各国は地球温暖化対策としてCO2削減に取り組んでいることから、日本も含め多くの国が火力発電の燃料をLNGに切り替えている。特に近年は中国のLNGの輸入量が増えており、LNGの価格が国際的に上昇している。LNGの価格高騰は日本にも影響しており、2021年の秋頃から日本の電気代は上がっているのだ。

加えて2022年に入って以降、ロシアのウクライナ侵攻により世界のエネルギー情勢はさらに悪化し始めている。ロシアはLNGの最大の輸出国となっているが、各国がロシアへの経済制裁を理由に非ロシア産のLNGに切り替え始めたことから、LNGの価格がさらに高騰してしまったのだ。

火力発電とLNGの依存度が高まったことから、リスクも集中してしまったのが今日の日本の電力事情なのである。ロシア産のLNGの供給が途絶するリスクも高まっており、電力の安定供給は予断を許さない状況となっている。

出典:経済産業省ウェブサイト<br>
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607003/20220607003.html<br>
2022年度の電力需給に関する総合対策 (概要) 想定を超える電力需要の増加出典:経済産業省ウェブサイト
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607003/20220607003.html
2022年度の電力需給に関する総合対策 (概要) 想定を超える電力需要の増加
出典:経済産業省ウェブサイト<br>
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607003/20220607003.html<br>
2022年度の電力需給に関する総合対策 (概要) 想定を超える電力需要の増加出典:経済産業省ウェブサイト
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607003/20220607003.html
2022年度の電力需給に関する総合対策 (概要) 燃料の調達リスク

今後の対策

「2022年度の電力需給に関する総合対策」では、「供給対策」と「需要対策」、「構造的対策」の3つの対策を打ち出している。

供給対策

供給対策では、休止中の電源の稼働確保や追加的な燃料調達の促進、非化石電源の活用等が図られる。具体的には、安全性の確保された原子力の最大限の活用等が想定されている。

需要対策

需要対策では、電力需給が厳しいと見込まれる冬季に備え、数値目標付きの節電協力要請の必要性など、夏季以上に講ずるべき需要対策の検討が開始される。具体的には、キャンペーン等の実施により国民各層に節電思考・行動を喚起する等の対策が取られる予定だ。

構造的対策

構造的対策では、直面する電力需給のひっ迫に対応するために発電所の積極的な維持・活用や、新規投資の拡大を促すための制度的な構築の検討が行われる。具体的には、LNGについて国の調達関与や在庫管理の強化等が行われる見込みとなっている。

家庭でできる省エネ対策

電力のひっ迫状況に対応するには、各家庭で省エネに取り組むことも重要となってくる。節電を行えば電気代も安くなるため、各人が省エネを心がけるメリットは大いにある。家庭でできる省エネ対策として、「節電活動」と「省エネ型機器への買い替え」、「省エネ住宅への建て替え」の3つを紹介したい。

(1)節電活動

節電活動は、お金をかけずにできる省エネ対策であるため、最も取り組みやすいといえる。まず、家庭で消費する電力量は、資源エネルギー庁によると1位がエアコン(34.2%)、2位が冷蔵庫(17.8%)、3位が照明(9.6%)となっている (数値は夏季のもの) 。よって、エアコンと冷蔵庫、照明の3つを対策していくと省エネ効果は大きくなる。

それぞれの主な省エネ対策は以下の通りとなる。

【エアコン】

・ドア・窓の開閉は少なくする。
・夏場はレースのカーテン等で日差しをカットし、冬場は厚手のカーテンを使用する。
・扇風機を併用する。
・室外機の吹き出し口に物を置かない。

【冷蔵庫】

・熱いものは冷ましてから保存する。
・冷蔵庫内の温度設定を控えめにする。
・冷蔵庫の中を整理する。

【照明】

・点灯時間を短くする。
・LEDランプに取り替える。

(2)省エネ型機器への買い替え

家電製品は年々効率性が向上しているため、新しい機器に買い替えるだけでも省エネ効果がある。資源エネルギー庁の省エネポータルサイトによると、各家電の省エネ効果は以下の通りとなっている。

照明:電球形LEDランプは一般電球と比べると約86%の省エネ
冷蔵庫:今どきの冷蔵庫は10年前と比べると約40〜47%の省エネ
テレビ:今どきのテレビは9年前と比べると約42%の省エネ
エアコン:今どきの省エネタイプのエアコンは10年前と比べると約17%の省エネ

出典:資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/choice/

買い替えによる省エネ効果は、電球形LEDランプへの買い替えが最も効果が大きい。照明は家庭の電力消費の約1割弱を占めるため、節電効果も大きいといえる。なお、家電製品においては、製造事業者や輸入事業者に対し、エネルギー消費効率の目標を示して達成を促すとともにエネルギー消費効率の表示を求めるトップランナー制度というものがある。トップランナー制度によって製造側には省エネ機器を作る意識が高まり、自然と省エネ機器が世の中に普及する仕組みとなっている。

(3)省エネ住宅への建て替え


省エネ住宅への建て替えも効果的な対策となる。省エネ住宅としては、例えば以下のような住宅がある。

・ZEH(ゼッチ)
・認定長期優良住宅
・認定低炭素住宅
・性能向上計画認定住宅
・断熱等級4かつ一次エネルギー等級4を満たす住宅

上記の省エネ住宅は、「こどもみらい住宅支援事業」という制度により補助金を受けることができるようになっている。また、ZEHや認定長期優良住宅にも、それぞれ独自の補助金制度が存在する。省エネ住宅は補助金制度が充実しているため、有利なものをしっかり選んで活用することがポイントだ。

節電を心がけながら熱中症には気を付けて夏を乗り切りたい節電を心がけながら熱中症には気を付けて夏を乗り切りたい

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