約6割の人が不動産取引に不安を覚えている

不動産取引に対して不安を覚える人は多い。2015年度「土地問題に関する国民の意識調査」(国土交通省)によると、約6割の人が不動産取引に対して「難しくてわかりにくい」(29.4%)「なんとなく不安」(30.4%)という印象を持っている。その大きな原因の一つとして、不動産取引の際の判断材料となる情報が不足しているということが考えられる。その中でも取引価格に関しては、売るにしても買うにしても「本当にその価格が適正なのか」と不安に思う人が多いはずだ。このような背景から国土交通省は、不動産の取引価格情報提供制度に基づき土地総合情報システムを運営している。これは国民から不動産の取引情報をアンケートによって収集し、個人情報に留意しながらインターネット上で情報提供を行うシステムだ。一体どの程度役立つものなのか検証してみよう。

土地総合情報システム
https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet

土地総合情報システムのトップ画面。左上の「不動産取引価格情報検索」からさまざまな不動産価格の相場を知ることができる土地総合情報システムのトップ画面。左上の「不動産取引価格情報検索」からさまざまな不動産価格の相場を知ることができる

実際に成約した価格を確認できるサイト

土地やマンションなどの不動産取引を行うと、国土交通省から「土地取引状況調査票」が郵送されてくる。回答は任意で、返送かウェブ上のいずれかの方法で行うことができる。このアンケート調査の結果が土地総合情報システムに反映される。つまり実際に成約した価格を確認できるので、売り出し価格が出ている不動産ポータルサイトなどよりは、相場を調べるという意味では信頼度が高いといえるだろう。

相場を検索できるのは「土地」「土地と建物」「中古マンション」「農地」「林地」の5つだ。似たようなシステムに、レインズマーケットインフォメーションがある。これは不動産会社などプロの会員しか閲覧できない「レインズ(REINS)」の情報を個別の物件が特定できないように加工して一般に公開しているものだ。しかし、こちらはマンションと一戸建ての情報しか確認できないので、土地、農地、林地の相場を調べたい場合は、土地総合情報システムが便利だ。

レインズマーケットインフォメーションのトップ画面。こちらからもマンションと一戸建ての相場は調べることができるレインズマーケットインフォメーションのトップ画面。こちらからもマンションと一戸建ての相場は調べることができる

操作方法はたったの3ステップ

では、実際に使い勝手を検証していこう。トップ画面から「不動産取引価格情報検索」を選び、その後の操作方法はたったの3ステップだ。

画面左の3ステップで物件を絞り込むことができる画面左の3ステップで物件を絞り込むことができる

①時期を選ぶ

成約した取引時期を選択する。約5年前まで遡れるが、そんなに前の価格は現在の相場と違うケースが多いので、デフォルトの過去1年間のままでいいだろう。

②種類を選ぶ

「土地」「土地と建物」「中古マンション」「農地」「林地」のいずれかを選ぶ

③地域を選ぶ

地域は都道府県から市区町村、地区まで絞り込める。

検索結果は一覧の形で表示される。取引総額や最寄駅からの距離などの各項目は高低で並べ替え可能だ。

なお、上記の画像はPC版のもので、スマートフォン版の場合は一覧表示されないので見にくい。両方とも使える環境ならばPC版をおすすめする。

画面左の3ステップで物件を絞り込むことができる検索結果例。各項目の△▽で高低の並べ替えができる
画面左の3ステップで物件を絞り込むことができるスマートフォン版は一覧表示ができないのでPC版より見にくい

有効に利用するには注意点も

このように土地総合情報システムは、簡単な操作で実際に成約した不動産取引情報を確認できる。しかもPC版なら一覧表示されるので見やすい。最初に相場を調べるツールとしては最適だろう。特に農地、林地の相場に関しては、ほかではなかなか情報が見つからないので、ありがたい存在だ。

ただし、下記のように注意点もいくつか存在する。

1. 地区や種類によって情報量に差がある

国土交通省の資料を確認すると、アンケートの想定回収率は約36%となっている(2016年度)。つまりすべての取引事例が網羅されているわけではない。このようなことから地区や物件の種類によっては情報が極端に少ないことがある。例えば前出の東京都世田谷区上祖師谷の土地データは4件だった(2022年2月現在)。都心部でもこれしかないケースもあるので、地方ではさらに少ないことが多いはずだ。そのため、このデータだけに頼らず、LIFULL HOME'Sなどの不動産ポータルサイトの売り出し価格を確認するといったことも必要だろう。

都心部の東京都世田谷区を検索した場合でも、地区によって確認できる物件数に大きな差がある都心部の東京都世田谷区を検索した場合でも、地区によって確認できる物件数に大きな差がある

2. 情報を分析するスキルが必要

検索結果を確認すると、同じくらいの面積の土地なのに価格がかなり違うことがある。理由は前面道路の幅員、方位や土地の形状などだ。土地総合情報システムを有効に活用するのなら、これらの情報を分析し、「なぜこの価格になったのか」を予想するスキルも必要だ。

3. 土地、建物それぞれの価格が分からない

土地総合情報システムの「土地と建物」の価格は取引総額だ。土地と建物のそれぞれの価格は分からない。

4. 所在地を特定できない

土地総合情報システムの情報は、個人情報保護の観点などから地区名までしか分からず、所在地を特定することはできない。例えば、1丁目より5丁目の方が高く売買されている地区であってもシステム上は区分けしていない。

以上のように土地総合情報システムは、不動産相場を調べる上で非常に便利なツールではあるが完ぺきではない。同システムと併せてレインズマーケットインフォメーションや不動産ポータルサイト、さらに信頼できる不動産会社にレインズの情報を教えてもらうなど幅広い情報収集を心掛けたい。