織田信長は、岐阜で「おもてなし」によって天下統一を目指した

「岐阜」という地名は、戦国武将・織田信長が命名したというのをご存じだろうか?
1567年、織田信長は金華山に立つ城に拠点を移し、中国の縁起のよい地名にちなんで「岐阜」と命名。ここから信長の天下統一が始まった。

信長といえば冷酷で革命的なイメージだが、岐阜から信長が使い始めた「天下布武」という印には、天下泰平の世を願う思いが込められている。その言葉通り、信長は武力だけでなく「文化的なおもてなし」によって有力者を惹きつけていったそうだ。

例えば、長良川の鵜飼を「観覧鵜飼」として初めて楽しんだのは信長だ。芸能的な価値を見い出し、鵜飼で客人をもてなしたという。また、戦で荒れた城下町を立て直すために「楽市楽座」政策を打ち出し、特定の商人だけでなく、だれもが自由に商売をできるようにした。岐阜に招かれたポルトガル宣教師ルイス・フロイスが「古代バビロンの混雑を思わせる」と書き記したことからも、城下町の活気のほどが分かるだろう。

2017年は、織田信長の岐阜入城・岐阜命名から450年にあたる節目の年。岐阜市では「岐阜市信長公450プロジェクト」と題し、さまざまなイベントを開催中だ。
信長がにぎわいを創出した城下町から450年後の岐阜市は、今どうなっているのか、今後どう変わっていくのか? まちづくりの今とこれからについて取材してきた。

写真上/岐阜市内の随所で「信長」がお出迎え 写真下/期間限定「信長公ギャラリー」では等身大の信長の目の前に立つと…何かが起こる!? 市内に信長バスと濃姫バスも走行中写真上/岐阜市内の随所で「信長」がお出迎え 写真下/期間限定「信長公ギャラリー」では等身大の信長の目の前に立つと…何かが起こる!? 市内に信長バスと濃姫バスも走行中

ほぼすべてアーケード付き!「全天候型の商店街」もおもてなしの表れ

上/面の商店街「柳ケ瀬商店街」は、エリア内を縦横無尽に走る通りにアーケードがあるのが面白い。下/大通り沿いの商店街にもアーケードがあり、小雨なら傘は不要上/面の商店街「柳ケ瀬商店街」は、エリア内を縦横無尽に走る通りにアーケードがあるのが面白い。下/大通り沿いの商店街にもアーケードがあり、小雨なら傘は不要

岐阜市の中心市街地では2000年頃から、近鉄百貨店、長崎屋、ダイエー、新岐阜百貨店、岐阜パルコなどの大型店舗が相次いで撤退。現在、百貨店は岐阜高島屋だけとなった。人通りはその前から徐々に減ってきていて、平成に入ってからの休日の「歩行者・自転車通行量調査」によると、岐阜の中心市街地に入る人の動きは平成4年、つまり25年前がピークだったという。

郊外のショッピングモールや住宅街に人を奪われ、中心市街地の空洞化が進むのを何とか食い止めたい。そこで岐阜市では、平成19年から「岐阜市中心市街地活性化基本計画」をスタートし、現在2期目に入っている。『にぎわいの創出』と『まちなか居住の推進』を基本方針に掲げ、岐阜駅周辺・柳ケ瀬・岐阜大学医学部等跡地周辺の3つのエリアに分けて、今さまざまな事業を進めている最中だ。

「岐阜市の商店街は、通り沿いにお店が並ぶ『線の商店街』(市商連)と、正方形のエリア内に店舗が並ぶ『面の商店街』(柳商連)という2つの商店街の団体組織があり、ほぼすべてアーケードがあるというのが大きな特長です。いわば全天候型なので、最近はイベント会場としてもよく利用されています。

今後、柳ケ瀬活性化の起爆剤としての期待が高まる高島屋南地区の再開発事業をはじめ、商店街の新たな価値を見出す可能性のある空きビル等をリノベーション手法により再生する取り組みも同時進行しながら、岐阜市を回遊して楽しめる魅力あるまちにしていきたいと思っています」
(岐阜市まちづくり推進政策課)

玄関口であるJR岐阜駅が様変わり。2つのタワーと黄金の信長像が誕生

平成19年からの1期計画で大きく変わったのは、県都岐阜市の「玄関口」ともいえるJR岐阜駅北口。駅前広場に屋根付きのペデストリアンデッキが整備され、屋根の下を通って周辺の商店街へアプローチできる。正面には黄金に輝く織田信長公像が訪問者をお迎えし、歴史が香るのも印象的だ。ここでは、2つの大きな再開発事業が行われた。

「平成19年に、43階建ての『岐阜シティ・タワー43』が、平成24年に『岐阜スカイウイング37』が完成し、駅前にツインタワーがそびえ立ちました。両タワーともに住居・商業等の複合施設であり、中心市街地活性化基本計画区域内の転入・転出数で示す社会増減数を見てみると、一つ目のタワーで200人近く増え、二つ目のタワーで300人強と、再開発ビルができた年には大きく跳ね上がりました。右肩下がりの人口をいったん食い止める役割を果たしたと思います」(岐阜市まちづくり推進政策課)

ちなみに『岐阜シティ・タワー43』は一部、岐阜市の土地が含まれていたことから、市も組合の一員として再開発にかかわった。最上階の43階には市の施設として「無料展望室」ができ、岐阜市街や名古屋まで一望できる穴場スポットに。また2つのタワーが岐阜市のシンボルとなり、「遠くからでもJR岐阜駅がどこにあるか分かるようになった」という声もあるそうだ。

「2つのタワーの成功により、これまで戸建て志向が強かった岐阜エリアで、マンションのニーズが増え、供給数も増えたと感じています」と手応えを話してくれたのは、岐阜市市街地再開発課の担当者。
「路線価を見ると、JR岐阜駅前の再開発ビルである大岐阜ビル前が、岐阜県内で10年以上1位となっています。これは再開発を含めたまちづくりが進んでいることへの、ひとつの評価だと感じていますね」

JR岐阜駅のペデストリアンデッキと、43階建ての「岐阜シティ・タワー43」JR岐阜駅のペデストリアンデッキと、43階建ての「岐阜シティ・タワー43」

岐阜大学医学部等跡地は、 市民憩いの場「みんなの森 ぎふメディアコスモス」に

金華山の山並みに沿うような柔らかな外観デザイン。図書館内はグローブと呼ばれる巨大な漏斗形上のかさがぶら下がる。建築家・伊東豊雄さんの設計。また平成33年には、この隣に岐阜市役所の新庁舎も完成予定金華山の山並みに沿うような柔らかな外観デザイン。図書館内はグローブと呼ばれる巨大な漏斗形上のかさがぶら下がる。建築家・伊東豊雄さんの設計。また平成33年には、この隣に岐阜市役所の新庁舎も完成予定

もうひとつ大きく変わったのが、JR岐阜駅から徒歩約30分の「岐阜大学医学部等跡地」。2期岐阜市中心市街地活性化基本計画の目玉のひとつとして、平成27年7月、「みんなの森 ぎふメディアコスモス」がオープンした。
市立中央図書館と市民活動交流センター等からなる複合施設を合わせた市民の交流拠点であり、そのモダンなたたずまいはとにかく目を引く。敷地内には芝生や小川があり、平日も多くの市民が利用していた。施設には市内の公共施設で初出店となるスターバックスコーヒーやゴロンと寝転べる畳スペースもある。

さらに今年7月~12月は「岐阜市信長公450プロジェクト」の記念事業として、館内に無料の「信長公ギャラリー」がオープン中。シアターでは、織田信長のおもてなしに使われた居館が精巧なCGで再現されている。金箔張りの瓦や高さ35メートルの滝が流れる庭園など、地上の楽園、宮殿とも称された建物は建築的にも一見の価値ありだ!
「今年1年間、岐阜市=信長ゆかりのまちとして、文化人としての信長公の魅力、岐阜の魅力を発信していきます。観光客誘致はもちろん、市民にとっても再発見の機会になればいいですね」(岐阜市まちづくり推進政策課)

JR岐阜駅前、岐阜大学医学部等跡地のにぎわい創出は、確実に進んでいる。住まい探しの際には今の景色だけでなく、まちづくりの歴史や未来予想図も知っておくと、まちの印象が変わりそうだ。次なる活性化エリアは「柳ケ瀬商店街」だという。老舗商店街でどのような取り組みが行われているのか、次回で紹介したい。

2017年 08月16日 11時09分