21世紀の先進的モデル都市「福岡アイランドシティ」

上/福岡アイランドシティ。災害に強いみなとづくり、まちづくりとして無電柱化が進められている<br>
下グラフ/福岡市「アイランドシティの進捗状況」より居住人口・住宅供給戸数の推移上/福岡アイランドシティ。災害に強いみなとづくり、まちづくりとして無電柱化が進められている
下グラフ/福岡市「アイランドシティの進捗状況」より居住人口・住宅供給戸数の推移

大規模市場である中国、香港、台湾、韓国に日本で最も近い博多港。その地の利を活かし、世界に向けた国際物流拠点としての機能を強化するため、天神からバスで約20分の場所にある福岡アイランドシティで「みなとづくり」が進められている。

大型船などが安全に入港できるよう、海底の土砂をすくい海道をつくるしゅんせつ工事で発生した土砂などを利用し、1994年から埋め立て工事が開始。2016年時点で計画面積401.3haのうち、およそ97%にあたる約389.4haの埋立が完了している。5~6万トンの大型コンテナ船が同時に着岸できるように、最大水深15メートルの岸壁の整備、国内初の完全電動トランスファークレーンを導入し低炭素社会の実現に貢献するなどの先進的なみなとづくりと同時に進められているのが「まちづくり」だ。

アイランドシティの中央を南北に走る 臨港道路アイランドシティ1号線から西側が「みなとづくり」エリア(約209.5ha)として主に産業物流施設が配置され、東側の「まちづくり」エリア(約191.8ha)では住宅や小学校、公園などが整備されている。2005年にまちびらきがされて以降、着々と人口は増加中。2019年12月末時点で、1万99人、3,369世帯が住んでいる。福岡市が想定している計画人口約1万8,000人に対し、まちびらきから15年が経過し、目標の半数以上が新しいまちに移り住んだことになる。

“超高齢社会対応型”健康ネクストタウン計画

福岡アイランドシティの開発には、福岡市とともにアイランドシティを一体開発する博多港開発株式会社とが2002年に取りまとめた「アイランドシティ事業計画」などが関わるなか、福岡市は少子高齢化の進行を受け先進医療・福祉都市を具体化する「ふくおか健康未来都市構想」を2003年に作成。さらにその後、これまでの計画を振り返り「高齢者向け住宅」「多世代交流住宅」および「それらをサポートするまち全体のコミュニティセンター機能」を一体的に整備する“超高齢社会対応型”健康ネクストタウン計画を2016年に策定。福岡市はこの健康ネクストタウン計画を、福岡アイランドシティの「まちづくりの総仕上げ」と位置づけている。

この健康ネクストタウン計画において、まちづくりの核となる場所が、事業者公募の対象となった「福岡市東区香椎照葉5丁目」エリア、約4.1haである。2016年にその公募を受託したのが西日本鉄道株式会社だ。約4.1haのうち約3.1haには住宅、約1haにバス営業所を設置し住まいと交通インフラが一体となったまちづくりを進めている。

左/「福岡市東区香椎照葉5丁目」エリア、センターマークス街区にそびえ立つ分譲マンション「センターマークスタワー」<br>
右上/センターマークスタワーのすぐそばには、西日本鉄道株式会社が運営するアイランドシティ自動車営業所がある。福岡市アイランドシティ地区で運行中の、オンデマンドバス「のるーと」。利用者は専用アプリをダウンロードして配車予約をすることができる。運行期間は2021年4月24日までを予定している<br>
右下/お話をうかがった部署横断メンバーの方たち。左から、西日本鉄道株式会社 マンション事業部 商品企画課の原 周一郎さん、西日本鉄道株式会社 住宅事業本部 マンション事業部 シニア事業課 課長の武田祐貴さん、西鉄ケアサービス株式会社の興梠 義則さん左/「福岡市東区香椎照葉5丁目」エリア、センターマークス街区にそびえ立つ分譲マンション「センターマークスタワー」
右上/センターマークスタワーのすぐそばには、西日本鉄道株式会社が運営するアイランドシティ自動車営業所がある。福岡市アイランドシティ地区で運行中の、オンデマンドバス「のるーと」。利用者は専用アプリをダウンロードして配車予約をすることができる。運行期間は2021年4月24日までを予定している
右下/お話をうかがった部署横断メンバーの方たち。左から、西日本鉄道株式会社 マンション事業部 商品企画課の原 周一郎さん、西日本鉄道株式会社 住宅事業本部 マンション事業部 シニア事業課 課長の武田祐貴さん、西鉄ケアサービス株式会社の興梠 義則さん

部署横断チームが連携、新しいまちをつくる

「交通インフラと住宅の一体開発というここまで大規模なプロジェクトは西日本鉄道でも初めての取り組みでした。弊社は部署ごとに独立採算制で住宅部門、交通部門と、縦割りでそれぞれの事業に注力していますが、今回は事業や部署の垣根を越えて、各部署のメンバーが連携してひとつのまちをつくっていこうという想いのもと始まりました」と話すのは、西日本鉄道株式会社 住宅事業本部 マンション事業部 シニア事業課 課長の武田祐貴さんだ。

現在、該当エリアであるセンターマークス街区には、すでに九州一の高層分譲マンション「センターマークスタワー」が2019年2月に竣工済み。住宅エリア内にそびえ立つ藍色の外観のセンターマークスタワーは地上46階、総戸数は283戸。続いて同年8月には賃貸マンション「ラクレイス香椎照葉」(地上12階、総戸数116戸)、そしてその隣には住宅型有料老人ホーム「サンカルナ香椎照葉」(地上12階、一般居室136室、介護専用居室24室)が続々と竣工している。さらに、新築分譲マンション「センターマークスレジデンス」(地上14階、総戸数228戸)が2020年6月の竣工を控え着々と建設が進んでいる。

賃貸マンション、分譲マンション、高齢者向け住宅と、さまざまな居住者層向けの住まいが展開されていくなかで、期待されるのがコミュニティセンター機能だ。福岡市では超高齢化社会を見据え、アクティブシニア層にこの地域に移り住んでもらい、多世代交流が生まれ高齢者にも共働しながら活躍してもらいたいとしている。

「福岡ではこれまでコミュニティセンター機能を持つ住宅というのはあまり事例がなく、私たちも手探りの状態。東京などの事例を参考にして検討しました。入居者さまの管理費などからコミュニケーション施設の運営にかかる費用を一部いただいて、組合などをつくって運営するという方法が多かったのですが、果たして同じ方法でやってうまくいくのかと…」と、武田さん。

左上/センターマークス街区の全体図。Aはセンターマークスタワー、Bは現在建設中のセンターマークスレジデンス、Cはラクレイス香椎照葉、Dはサンカルナ香椎照葉。さまざまなニーズに合わせた住居が展開され、ラクレイス香椎照葉とサンカルナ香椎照葉1階にはクリーニング店やレストラン、フィットネスジムなどの商業施設も。サンカルナ香椎照葉で入居者向けサービスとして提供されているライフサポートでは、1階フィットネスジムのインストラクターと連携し体を動かす講座なども提供されている<br>
右上/サンカルナ香椎照葉、ラクレイス香椎照葉外観<br>
下2点/住宅型有料老人ホーム「サンカルナ香椎照葉」のモデルルーム。隣接するアイランドシティ中央公園がベランダから見られる物件もある。居室内はバリアフリー対応、緊急時用に緊急呼び出しボタンも設置左上/センターマークス街区の全体図。Aはセンターマークスタワー、Bは現在建設中のセンターマークスレジデンス、Cはラクレイス香椎照葉、Dはサンカルナ香椎照葉。さまざまなニーズに合わせた住居が展開され、ラクレイス香椎照葉とサンカルナ香椎照葉1階にはクリーニング店やレストラン、フィットネスジムなどの商業施設も。サンカルナ香椎照葉で入居者向けサービスとして提供されているライフサポートでは、1階フィットネスジムのインストラクターと連携し体を動かす講座なども提供されている
右上/サンカルナ香椎照葉、ラクレイス香椎照葉外観
下2点/住宅型有料老人ホーム「サンカルナ香椎照葉」のモデルルーム。隣接するアイランドシティ中央公園がベランダから見られる物件もある。居室内はバリアフリー対応、緊急時用に緊急呼び出しボタンも設置

シニアマンション「サンカルナ香椎照葉」の一部施設を一般にも開放

横断プロジェクトメンバーで検討した結果、もともとの福岡アイランドシティが目指す、住民自らがまちづくりに関わる自発的なコミュニティの醸成に期待したいと、「サンカルナ香椎照葉」の一部共有施設を一般の住民にも開放することになったという。

「管理費の徴収や組合への参加をお願いすると、どうしても入居者の方に負担感が出てしまいますが、シニア向け住宅の共有施設を空いた時間に一部開放することで、施設の有効活用ができますし、その場所を多世代の方たちが共有することで自然とコミュニケーションが生まれるのではないかと考えました」と、武田さんは当時を振り返る。

「サンカルナ香椎照葉の3階にある共用施設・多目的ホール、ライブラリー、AVルーム、レストランなどを2020年2月から一般開放しました。隣にある賃貸マンション「ラクレイス香椎照葉」の3階部分とつながっているペデストリアンデッキ内にあり、ほかのマンションの方も1階に一度降りる必要なく広場を通ってアクセスすることができる場所にあります。サンカルナ香椎照葉の入居者さまからは、外部利用の不安も若干ありますが、『老人ホーム以外の住民家族や保育園の園児が利用されると活気が出ていい』という好意的なお声もいただいています」と話すのは、サンカルナ香椎照葉の支配人、西鉄ケアサービス株式会社の興梠 義則さんだ。

サンカルナ香椎照葉は2019年11月に入居が始まったばかり。まずは同住居内でのコミュニティをつくり、徐々に賃貸住宅や分譲マンションの入居者との交流が生まれることに期待したいと、興梠さんは積極的に入居者の趣味や興味のあることを聞いたりしている。「カラオケが好きな方が多く、さっそくカラオケサークルができまして、最近は麻雀サークルもできました。今後は、AVルームでスポーツ観戦や映画観賞などのイベントも企画して、入居者同士の方が交流する機会を設けていきたいです」と話してくれた。

左上/サンカルナ香椎照葉の共有スペースにあるレストラン。和食を中心としたメニューが提供されており、カウンター席からはアイランドシティ中央公園が眺められると好評だという<br>
右上/防音も施されたAVルーム<br>
左下/ライブラリーの壁面には本が並ぶ。今後、入居者や一般の方向けの展示スペースとしての利用も検討しているそうだ<br>
右下/子ども向けの絵本も

左上/サンカルナ香椎照葉の共有スペースにあるレストラン。和食を中心としたメニューが提供されており、カウンター席からはアイランドシティ中央公園が眺められると好評だという
右上/防音も施されたAVルーム
左下/ライブラリーの壁面には本が並ぶ。今後、入居者や一般の方向けの展示スペースとしての利用も検討しているそうだ
右下/子ども向けの絵本も

マルシェの開催で親睦深める。今後の住民主体のまちづくりに期待

多目的ホール、ライブラリーなどのコミュニティセンターを一般開放しても、利用してもいいことを知らない人からすれば、ほかのマンションの共有スペースは立ち入りにくい場所である。

「まずはコミュニティセンターを知ってもらおうと、コミュニティセンターのお披露目イベントとしてセンターマークスマルシェを2019年10月に開催しました。レストランでコンサート、多目的ホールで親子ヨガを実施し、多くの方にお越しいただきました」と、西日本鉄道株式会社 マンション事業部 商品企画課の原 周一郎さんは話す。

最近では、絵本や幼児向けの本も並ぶライブラリーで、小さな子どもとお母さんが本を読んだり遊んだりしている姿が見られるという。多目的ホールの外部の人からの予約はまだないものの、問合せは少しずつ入ってきているという。

「今後も予定しているマルシェなどのイベントでコミュニティセンターの存在を知ってもらい、徐々に口コミで広まっていってくれることを期待しています」と、原さん。当面、今後のイベントの企画や運営も西日本鉄道の横断プロジェクトメンバーで検討していくという。「住民の方たちが自発的にイベントや集まりを始めてくれたら…」と、武田さん、興梠さん、原さんは期待を寄せる。

2020年3月27日には大型複合施設「island eye(アイランド アイ)」がオープン予定、2024年には新しい小学校の新設も検討されている福岡アイランドシティ。着々とまちづくりが進み、多くの人が移り住むなかで、そのコミュニティの核となる場への期待は大きい。ぜひ、有効活用して新しいまちでの交流を楽しみたいものだ。

2019年10月に行われたセンターマークスマルシェの様子2019年10月に行われたセンターマークスマルシェの様子