大ナゴヤツアーズで開催された、サボテン農家のツアーに参加

名古屋を中心に、東海エリアのまちの魅力を「体験」「学び」「見学」「まち歩き」などを通して楽しむ体験プログラムを企画している大ナゴヤツアーズ。今回は愛知県春日井市の後藤サボテンで行われた、いま人気のサボテンや多肉植物の育成について学べるツアーに参加してきた。

後藤サボテンがある春日井市桃山町は、サボテンを種から育てる“実生(みしょう)”栽培で日本一といわれている。その歴史は1953(昭和28)年頃にさかのぼる。隣の小牧市にあるサボテン農家で「緋牡丹(ひぼたん)」という品種のサボテンに魅せられた桃山町の住民が、種から作ってみたいとチャレンジしたのが始まりとされる。

そんななか、1959(昭和34)年の伊勢湾台風で、当時の桃山町で多かったリンゴ農家の果樹園が壊滅状態になったことをきっかけに、サボテン栽培に移行する農家が増えた。そして、一つの農家の農地が広くないという土地柄と、サボテンの成長に時間がかかることから、実生と育苗という、分業制の委託生産システムに成功。ブームの頃にはサボテン農家は30~40軒ほどあり、一大生産地に。ただ、現在は生産者の高齢化などがあり、6~7軒となっているそうだ。

後藤サボテンの2代目・後藤容充さんによるツアー中のお話と追加取材から、サボテンを中心に、その魅力や初心者でも楽しめる育て方のコツをご紹介したい。

①春日井サボテンのイメージキャラクター②大ナゴヤツアーズの様子③柱状サボテンに接ぎ木して作られる緋牡丹④後藤サボテンの2代目・後藤容充さん⑤後藤サボテンの看板猫・わさびちゃん⑥ツアーでは、食用サボテンの試食も。食用サボテンは、必須ミネラルであるカルシウムや、マグネシウムなどの有機酸を含み、低カロリーの健康食材として注目が高まっている。春日井市内の飲食店や菓子店などでは、生サボテンやパウダーなどを使った商品が開発されている①春日井サボテンのイメージキャラクター②大ナゴヤツアーズの様子③柱状サボテンに接ぎ木して作られる緋牡丹④後藤サボテンの2代目・後藤容充さん⑤後藤サボテンの看板猫・わさびちゃん⑥ツアーでは、食用サボテンの試食も。食用サボテンは、必須ミネラルであるカルシウムや、マグネシウムなどの有機酸を含み、低カロリーの健康食材として注目が高まっている。春日井市内の飲食店や菓子店などでは、生サボテンやパウダーなどを使った商品が開発されている

サボテンと多肉植物

実はサボテン科は多肉植物の分類のなかの一つなのだが、かなりの種類があるため、園芸業界などではサボテンと多肉植物を分けて呼ぶことが多いのだという。

さて、ここで、今回のツアーの冒頭で出題されたクイズを皆さんにも。下の写真で10の多肉植物のうち、サボテン科ではないものが4つ。それはどれだろう?

多肉植物をご存じであれば、左から5番目はすぐに見分けられるのではないだろうか。こちらはベンケイソウ科のメイゲツという多肉植物。その次に分かりやすいと思われるのは、左から9番目。これは、アフリカが原産地の多肉植物で、ハマミズナ科リトープス属の黄微紋玉(きいろびもんぎょく)。残りは、サボテンにそっくりな見た目の、左から7番目と8番目のもので、トウダイグサ科ユーフォルビア属の多肉植物となる。

このなかでサボテン科ではない多肉植物はどれ?このなかでサボテン科ではない多肉植物はどれ?

力強さやかわいさなど、多彩な形態が魅力

上/左から進化していったサボテンの形態。下/とげが出ている土台の部分が刺座と呼ばれるところ上/左から進化していったサボテンの形態。下/とげが出ている土台の部分が刺座と呼ばれるところ

「自分の体のなかに水を溜めておけるような仕組みがあり、ふくらんだ部分を持った植物を多肉植物と呼んでいます」と後藤さん。アフリカや中南米など、雨が少なく乾燥した気候の地域を原産地とするものが多く、その厳しい環境に適応できるようになっていると考えられる。

前項のクイズのサボテンを進化した順に並べたのが画像上の写真。最も原始的なサボテンといわれているのが、左端のもので、木の葉サボテンという総称がある。木の葉サボテンは乾燥がそれほどひどくない時代に生まれたもの。その後、環境が変化すると、水分を失いやすい葉っぱをなくし、その隣のウチワサボテンの形状に。茎の部分に水をためておけるように多肉化した姿だ。平たい節がつらなっているが、強風や動物にあたってどこかの節から折れてしまっても、もとが元気であればそのまま生き続けられ、落ちてしまった節の先も地面に根っこを生やしたり、新しい芽を出したりして、増えやすい、丈夫なつくりとなっている。

ウチワサボテンから進化したのが、左から3つ目の柱サボテン。背が高くなり、上から見るとヒダのような“稜(りょう)”と呼ばれる部分ができ、アコーディオンのように膨らんだり縮んだりできるため、水分量が少なくなっても、立った状態でいられるそうだ。また、強い日差しを受けても、その稜が自分の体に影をつくる役割も持つ。さらに進化が続くと、玉サボテンと呼ばれる丸い形のものが登場した。

サボテンというと“とげ”も特徴。水を求めてやってきた動物に食べられないよう、最初の進化でなくした葉っぱがとげになったといわれる。びっしりととげが生えているものだと、光を和らげる役割もあるという。ただ、鸞鳳玉(らんぽうぎょく)や兜丸など、動物に食べられる危険の少ない場所に自生している品種などのようにとげがないものも人気だそうだ。

ちなみに、クイズでとげのようなものがあってもサボテンではない多肉植物があったが、見分け方としては、とげの下に刺座(とげざ)があるもの。とげのない種類も刺座がついていればサボテンとなるそうだ。

「サボテンは大きな姿と小さな姿があまり変わらないということもあり、盆栽的な楽しみ方ができます」と、後藤さんは語った。生き延びるために進化したとげのある力強い姿から、丸っこくて愛らしく感じるものまで、多種多彩さがインテリアの一つとしても幅広く受け入れられる人気の要因ではないだろうか。

水をあげる間隔など、育て方のコツ

サボテン、多肉植物の進化を知ると、乾燥に耐えるために水を溜めておける体ということから、他の植物のように毎日水をあげる必要はないことがよく分かる。

水やりの目安としては、「竹串などを土に刺してみて完全に乾いているようだったら、多めにあげてもらえば大丈夫。その鉢の土の量の3分の1くらいの量をしっかりあげてください」とのこと。鉢と同じ大きさの容器を使って目安にするのもいいだろう。

「あくまで目安なのであげすぎないほうがいいですが、霧吹きを使う場合、水分量が少ないと植物の根が吸収する前に乾いてしまうことも。根っこに届くことを意識してください。水が足りた、生き生きしている状態であれば、ふっくらしています。よく観察していると、水が足りていないときは萎びたり、しゅっとしぼんできますよ」と後藤さん。

12月~2月の冬は、小さな苗は月2回、それ以外は月1回のペースで乾き気味に水やりを行うといい。乾き気味にすることで、樹液の濃度が濃くなり、凍りにくくなる効果がある。そして、冬は日不足になりがちなので、日に当てることも忘れずに。3月中旬までは十分に暖かい日を選んで月に2~3回のペースで水やりを。6~8月は、暑さで弱ることもあるので、春より水やり回数を控えめにし、根が傷む原因にもなるので早朝か夕方の涼しい時に。9~10月頃は月に2~3回のペースにし、11月に入ったら月1回程度でよいそうだ。

サボテンは暑さだけでなく、意外と寒さにも強いという。しかし蒸し暑いのは苦手で、名古屋などのような地域では、1年の中でも夏がもっともサボテンが傷みやすい時季とか。そんな夏場は、風通しをよくしてあげることや、強い日差しがあたりすぎると、茶色に変色して焼けてしまうので、普段は室内で育てているものを日光浴で外に出すのは注意が必要とのこと。

土はサボテン用に配合されたものがあるが、ほかの土を使用するのであれば、水はけのよいものを選んだうえ、通気性や保水性などに優れているとされる赤玉土を混ぜるのがおすすめだ。

進化の過程だけでなく、品種改良、接ぎ木技術などによっても種類が増えていったサボテン。写真は、突然変異で色が抜けてしまったもので、以前は海外では病気扱いされることがあったが、日本では柄の出方によって高い値段がつけられるものも。写真中央は、なんと2万円の値が付けられていた!進化の過程だけでなく、品種改良、接ぎ木技術などによっても種類が増えていったサボテン。写真は、突然変異で色が抜けてしまったもので、以前は海外では病気扱いされることがあったが、日本では柄の出方によって高い値段がつけられるものも。写真中央は、なんと2万円の値が付けられていた!

愛情がいちばんの栄養剤に!?

たくさんの種類があって何を選んだらいいか、と迷うかもしれない。初心者に育てやすいものはあるのだろうか。

「小さい苗のものがいいかもしれません。ただ小さいと、水が足りない状態が続くと萎びるのが早いという注意点もありますね」と後藤さん。また、園芸店などでは多種類を寄せ植えしたものも見かけるが、「1種類で育てた方が管理は楽だと思います。そして鉢は、プラ鉢といわれる、底に穴が開いているものが育てやすい。水やりの時に、鉢の底から水が流れるくらいを目安にできます。ただ、寄せ植えなどのアレンジはその楽しみも大きいものです。サボテンは丈夫な植物なので、多少土の表面が硬くても、下に土がしっかり使ってあれば、根っこの部分が伸びるので大丈夫ですよ」

「見た目で気に入ったものを選んでもらうのがいいです。かわいいなど、自分の感性で選んでもらうのが一番大事。愛情をかけて育てられるということが必要になるからです。あとは、サボテンや多肉植物を置きたい部屋が環境的に日が当たりにくいなど、そういうことがあれば、私たちプロがアドバイスして、おすすめの種類をお伝えすることができます」

サボテン、多肉植物は花を楽しむこともできる。サボテンであれば、野球ボールやソフトボールぐらいの大きさが開花年齢になっている頃。「サボテンの花が咲くポイントというのがあって、基本、花は種を残すために咲きます。なので環境が良すぎると花が咲きにくいこともあるんです。冬の間に太陽にしっかりと当てて、水をちょっと減らしぎみにし、少し過酷な状況にしておくと、春に花を咲かせたりします」。品種によっても違うが、開花は春や秋が多いそうだ。

水やりや日差しなど注意点はあるが、植物のなかでは比較的、育てやすいといわれる多肉植物。お気に入りを見つけて育ててみてはどうだろう?

取材協力:大ナゴヤツアーズ https://dai-nagoyatours.jp/
     後藤サボテン   https://www.sabo.co.jp/

1種類をじっくり育てるほか、寄せ植えにしても楽しめるのが魅力の一つ1種類をじっくり育てるほか、寄せ植えにしても楽しめるのが魅力の一つ

2020年 01月24日 11時05分