住宅ローン金利を年0.6%引下げる【フラット35】リノベ

【フラット35】リノベの申込受付が2016年10月1日にスタートする【フラット35】リノベの申込受付が2016年10月1日にスタートする

【フラット35】リノベ(性能向上リフォーム推進モデル事業)の申込受付が2016年10月1日にスタートする。これはリフォーム工事によって住宅性能を向上させることで一定の基準を満たした既存住宅(中古住宅)の取得に対し、【フラット35】の適用金利を一定期間引下げるものだ。既存住宅のみを対象とした制度として注目され、手続きに必要な物件検査はすでに2016年8月1日から受付が始まっている。

工事の内容(リフォーム後の住宅性能レベル)に応じて、金利引下げ期間が10年間の「Aプラン」と5年間の「Bプラン」に分かれるが、金利引下げ幅はいずれも年0.6%であり、利用者のメリットは比較的大きなものになりそうだ。今回はこの【フラット35】リノベについて、制度の概要とともに、その効果や既存住宅市場への影響などを考えてみることにしよう。

「性能向上リフォーム」と「維持保全に係る措置」が必須

【フラット35】リノベを利用できるのは、既存住宅を購入して自ら性能向上リフォームを実施する場合(リフォーム一体タイプ)、もしくは住宅事業者によりあらかじめ性能向上リフォームが実施された既存住宅を購入する場合(買取再販タイプ)だ。いずれも適合証明検査機関による物件検査を受け、交付された「適合証明書」を申込先の金融機関へ提出することが要件となる。

省エネルギー性、耐震性、バリアフリー性、耐久性・可変性について、金利引下げ期間が10年間の「Aプラン」は6項目、金利引下げ期間が5年間の「Bプラン」は5項目が規定され、これらのうち「いずれか1つ以上」の基準に適合させるための性能向上リフォームが必要だ。

たとえば、耐震性については工事後の耐震等級が3相当ならAプラン、2相当ならBプランが適用されることになる。同様に省エネルギー性については、一次エネルギー消費量等級が5相当ならAプラン、4相当ならBプランだ。なお、これらの等級について必ずしも「住宅性能評価書」を取得する必要はなく、所定の物件検査に合格すればよい。

ただし、リフォーム工事前に適合している基準は対象外となることに注意したい。すでにすべての項目について基準を満たしている良質な既存住宅を取得する際には、【フラット35】リノベを利用することができないのだ。つまり、いずれかの項目が基準よりも劣る既存住宅を購入することが前提となるだろう。

また、性能向上リフォームの実施とともに「維持保全に係る措置」を行うことも必要であり、「一定のインスペクションの実施」「瑕疵保険の付保等」「住宅履歴情報の保存」「維持保全計画の作成」のうち、いずれかの措置を講じることが求められる。

【フラット35】リノベの基準。リフォーム後の性能レベルに応じてAプランとBプランに分かれる【フラット35】リノベの基準。リフォーム後の性能レベルに応じてAプランとBプランに分かれる

【フラット35】自体の金利が低水準になっているが……

【フラット35】リノベによって適用金利は年0.6%優遇されるが、その元となる金利自体はどのように推移しているだろうか。2013年1月以降の「最低金利」を表したのが下のグラフだ。

【フラット35】は民間金融機関の住宅ローンを住宅金融支援機構が買い取って証券化する仕組みの長期(最長35年)固定金利ローンであり、適用金利は窓口となる金融機関ごとに異なる。さらに、返済期間が「20年以下」なのか「21年以上」なのか、融資率が購入金額などの「9割以下」なのか「9割超」なのかによっても違う。グラフに示したのは「返済期間21年以上、融資率9割以下」の場合だが、【フラット35】の主力ゾーンと考えてよいだろう。また、「最低金利」と「取扱金融機関の提供する金利で最も多い金利」はおおむね一致する。

2013年以降でみると、2013年7月の「最低金利」は年2.050%だったが、その後は下落傾向が続いており、とくに日銀が2016年2月にマイナス金利を導入してからは大きく下がっている。2016年8月は過去最低の年0.900%となった。

2016年9月は年1.020%まで戻したものの、長期固定金利としてはかなり異例の水準が続いているといえるだろう。ちなみに2016年9月時点における「取扱金融機関の提供する金利で最も多い金利」は、「21年以上、9割以下」が年1.020%、「21年以上、9割超」が年1.460%、「20年以下、9割以下」が年0.960%、「20年以下、9割超」が年1.400%である。

たとえば、年1.000%のときに【フラット35】リノベを借りれば、実際に適用される金利(当初10年間または5年間)は年0.400%となる。金利が急上昇することは当分考えにくいため、制度の対象となる住宅では他の一般的な住宅ローンよりもだいぶ有利な状況になりそうだ。

【フラット35】における「最低金利」の推移。最近の低下傾向が顕著【フラット35】における「最低金利」の推移。最近の低下傾向が顕著

【フラット35】の申請件数は2015年から増加傾向が続いている

【フラット35】リノベは既存住宅の取得を対象にしたものだが、省エネルギー性や耐震性などに優れた住宅(新築住宅、既存住宅を問わず)を取得する場合には以前から【フラット35】Sが提供されている。これは一定期間(性能基準に応じて当初10年間または5年間)の適用金利を年0.3%引下げるものだ。

この【フラット35】Sでは、2014年度補正予算による「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」に基づき、2015年2月から2016年1月まで金利引下げ幅が年0.6%に拡大されていた。引下げ幅は新たに始まる【フラット35】リノベと同等のため、この間の「申請件数」の推移は制度の効果をみるうえで参考になるだろう。なお、同時期に「9割超融資における上乗せ金利の引下げ」も実施されている。

2014年の【フラット35】(買取型)申請件数は、毎月6千戸以上8千戸未満の水準で推移していたが、2015年2月に「S」の引下げ幅が年0.6%に拡大すると1万戸を超えるほどに申請が急増している。2015年3月の13,578戸をピークにその後はやや減ったものの、2015年中は毎月、前年同月を大幅に上回る状況だった。

「緊急経済対策」による引下げ幅拡大が終わった2016年2月以降も申請件数の増加は続いているが、日銀のマイナス金利導入の影響などによるローン金利そのものの低下が大きく作用していると考えられる。ちなみに、【フラット35】(保証型)については2014年3月から2016年3月まで、すべての取扱金融機関で新規受付が休止されている。

【フラット35】申請件数の推移。住宅金融支援機構の公表資料をもとに作成【フラット35】申請件数の推移。住宅金融支援機構の公表資料をもとに作成

今回は「モデル事業」。その結果により本格導入も

【フラット35】リノベにより、借入額3,000万円(融資率9割以下、35年返済、元利均等、ボーナス返済なし)の場合で、総返済額は金利Aプランなら約166万円、金利Bプランなら約90万円が軽減されるという。年0.6%の金利引下げ効果は大きく、上記の申請件数推移から考えても、今回の新たな制度で相当数の利用者増加が見込まれるだろう。

だが、融資基準を満たすためのリフォームやリノベーションにはそれなりの費用がかかるのであり、適合証明検査機関による確認も「工事前に基準に適合していないこと」「工事計画が基準に適合していること」「工事後に基準に適合していること」の3段階が求められる。新築住宅志向の消費者の目を既存住宅に向けさせるというよりも、もともと「少し古い既存住宅を購入して大掛かりなリフォームやリノベーションをしよう」と考えていた消費者の利便性を高める結果となりそうだ。既存住宅の流通量を押上げる効果は限定的なものにとどまるかもしれない。

また、既存住宅を購入してから性能向上リフォームを実施する場合には、リフォーム工事代金の決済に合わせて【フラット35】リノベの融資が実行されることにも注意しておきたい。既存住宅購入の決済時点では資金が出ないため、いったん「つなぎ融資」を借りることが必要になるのだ。住宅事業者があらかじめ性能向上リフォームを実施した既存住宅を購入する場合(買取再販タイプ)なら、その購入代金の決済に合わせて【フラット35】リノベの融資が行われる。

今回の【フラット35】リノベは、本格的な制度の導入に向けて試行的に実施される「モデル事業」であり、受付期間は2016年10月1日から2017年3月31日までとなる。ただし、一定の予算金額が設けられており、申請状況によっては早期に受付が終了する場合もあるため注意が必要だ。ちなみに予算金額の詳細は明らかにされていない。

既存住宅・リフォーム市場の活性化や住宅ストックの質の向上がこの制度の目的とされており、住宅政策の方向性から考えても、来年度以降に【フラット35】リノベが本格導入される可能性は高い。だが、現在の極めて低い金利水準がこのまま続けば、年0.6%の引下げという内容自体に無理が生じかねず、本格導入が見送られたり引下げ幅が見直されたりすることもありそうだ。

今回の【フラット35】リノベは、本格的な制度の導入に向けて試行的に実施される「モデル事業」であり、</br>受付期間は2016年10月1日から2017年3月31日まで今回の【フラット35】リノベは、本格的な制度の導入に向けて試行的に実施される「モデル事業」であり、
受付期間は2016年10月1日から2017年3月31日まで

2016年 09月13日 11時07分