「終活」は人生の終わりに備えること、「老活」は自分らしく老後を過ごすための活動

公的年金制度の不安が増してきている現在、老後の設計をどうするか公的年金制度の不安が増してきている現在、老後の設計をどうするか

人生の終わりを迎えるにあたり、住宅・不動産をどうすればよいか、財産分与や相続で子ども世代が揉めないようにするにはどのような準備をしたらよいか、葬式やお墓の準備は……など「終活」についての関心が高まっているという。
書店に行けば「終活」関連のガイドブックや書籍がコーナー展開されるほどの盛況だが、遺言や相続、お墓や葬式などに関する情報が中心で、これらの総称が「終活」ということのようだ。

人間というものはそう簡単に死ねない、死なないものなので、「終活」の準備を始める前にもすることがたくさんある。その一つが定年後およびリタイア後の人生のための「老活」だ。

「老活」というとアクティブな第二の人生がイメージされるものだが、実は公的年金制度の不安が増してきている現在では、まだまだ残されている(と思われる)人生をどのように生き抜いていくかという、シビアな状況にある。

「老活」には資金・資産を上手に働かせることがポイント

実は「老活」イコール「資産運用」だと考えている人は多いようだ。
つまり、リタイアメントしているから自分が働くのではなく、代わりに自身が保有する「お金&モノ」に効率よく働いてもらい、残りの人生をいかに充実させるかが重要だというのだ。

今や金融に対するリテラシーの向上は必須で、各地の証券会社や金融機関が頻繁に開催する金融・証券・資産運用セミナーはいずれも需要・人気ともに高いという。公的年金と企業年金では賄いきれない老後の生活費の不足分をどうやって補うか、を真剣に考える人が多数受講しているという。

「老活」とは大きなライフステージの変化が起きるという現実に直面してから考えることではなく、それ以前に準備を始めておくことがとても重要だということになる。しかし、現役世代で熱心に金融・証券・資産運用セミナーに通う人は決して多くない。現役から引退するイメージが強い「老後」の準備をいざ考えようとなると、ライフステージの変化をネガティブに捉える人も少なくないため、積極的に老後に備える(堅実な)人は少数派なのかもしれない。

「資産運用」するには資産が必要だ。現役のうちに資産形成することができないと、運用することもできない。
このことについては、住宅購入か賃貸かという永遠の命題のような議論があり、これは「ケースによる」という結論になるが、こと老後の資金を考えると、購入派のほうが「資産運用」という点では有利である。

住宅を資産として考えると、住宅ローンを完済していること、もしくは完済できる見込みが立っていることが前提となるものの、持ち家のコストは固定資産税、都市計画税、あるいは維持・修繕費となる。持ち家は、売却&賃貸によって現金化・収益化することができる可能性があるのに対して、賃貸は毎月の賃料がかかり続ける。例えば毎月8万円の家賃だと年間で約100万円、65歳から20年居住するとして賃貸の家賃は約2,000万円に達する。

一般に国民年金、厚生年金で満額受け取れた場合を考えても、老後資金は必要な額を平均で3,000万円程度不足するといわれている。3,000万円を現役のうちに準備することはかなりハードルが高く、単に預貯金をするだけでは難しい。やはり「手元に入るお金を増やす」ことと「必要なお金を極力減らす」ことが必要になる。
もはや「資産運用」は富裕層だけの特別な行為ではないようだ。

資産運用だけではない。「老活」のための着実なお金の増やし方&減らさない方法

老後にかかるお金で意外にかかる医療費。健康でいることは欠かせない老後にかかるお金で意外にかかる医療費。健康でいることは欠かせない

資産運用するのには、十分な資産を保有していなければ運用できないが、手元で使えるお金を着実に増やす方法がないわけではない。
そのひとつが、現役での副業の開始だ。「働き方改革」の一環として副業を積極的に認めるべきだという方針が打ち出されて以降、副業を解禁する企業も増加し、特に2018年以降は厚生労働省が就業規則のモデルを「副業容認」に改定したことで、副業に対するハードルはかなり下がってきている。ウェブ上で店舗を経営したり、広告収入を目的としてブログや動画を専用サイトにアップしたりすることは副業として認知され始めており、自分の特性や趣味を活かして収入を少しでも増やそうという意識があれば、副業をすることで少しでも「老活」資金を得ることが可能だ。

また、資格には原則として定年がないから、現役を退いた後に活用できる資格を今から取得し、「老活」に備えるという方法もある。資格を取得することで、定年後の安定的な収入を得る方法を確保しておくというのも堅実な所得維持・向上につなげられる可能性が高まる。

さらに、老後にかかるお金を極力減らすには一にも二にも健康であること。
予防的な対策をすることによって将来発生するであろう医療費を抑制するというのも立派な「老活」といえる。
特に生活習慣病は慢性化・長期化することが多くそれに伴って医療費もかさむことは明らかだから、「健康でいること」は仕事や余暇を過ごすことを含め、「老活」するうえで極めて重要な要素になる。健康維持に関する様々なサプリメントや医薬品の市場が年々拡大している(2018年は前年比2.0%増/1兆4,260億円:富士経済調べ)のも、健康維持への投資と考えると「老活」と決して無縁ではないようだ。

親世代の「終活」を通じて「老活」に必要なことをイメージする

「老活」には資金面だけでなく、権利関係の整理整頓も重要な要素だ。

自分が「老活」時期に入る頃は、往々にして親世代の「終活」と重なることがあるため、老後の生活資金を親世代から相続するケースも決して少なくないが、それに伴って権利関係のトラブルに巻き込まれることもある。
自分が親世代の資産管理などに関わる事態を「参考」にして、それを「自分事」として考えることで、将来の財産分与やお墓の管理など先々に発生するであろう「トラブルの芽」を予め摘んでおくことができる。

特に、自分が居住する住宅がアクセスのあまり良くない場所にある場合、子ども世代で誰も相続する見込みがなく、また自治体に寄付することなどもできずに権利関係が宙に浮いてしまう可能性が考えられる。その住宅が誰の住民票もなくなる「単なる空き家=所有者不明住宅」になってしまうのは無責任であり、「不動産を“負動産”にしない」ためにも、現在居住する住宅の活用や処分方法を考えておくことは「老活」の大切な要素となる。

「老活」のために一考に値する家族信託という手法

「老活」において検討対象の中心になるのは、やはり自宅の扱いである。
将来、自宅を処分して得たお金で高齢者住宅に住み替えることも可能であるし、あえて住み続けるために、最近注目のリースバック(※居住する自宅を売却し売却先から借りてそのまま住み続ける方式)なども、「老活」資金を得る上では検討したい手法といえる。

また、住宅の活用方法、資産継承方法については「家族信託」という手法がある。
これは、もっぱら死後に財産を渡したり処分したりする方法(遺言代用信託)として活用されている。例えば高齢者同士の再婚で自分には既に独立した子どもがいても配偶者には子どもがおらず、両方とも亡くなったあとは一次相続した配偶者の親戚(例えば弟や妹)が相続するケースが想定される場合、自分の子どもを受託者にして自宅を信託し、自分が生きているうちは自分自身を受益者に、自分が死んだ後は配偶者を受益者にする。
配偶者が亡くなった時点で信託が終了し、残余財産の帰属先を自分の子どもにしておけば、配偶者は自分の死亡後も自宅に住み続けることができ、さらに配偶者が亡くなったあとには自分の子どもが自宅を継承することができる。
家族信託を利用すれば、財産を自分の想定通りに承継させることが可能になり、遺言だけでは解決できない相続問題に解決策を用意しておくことができる。

さらに、認知症などで判断能力が著しく低下してしまった場合に備えて、後見代用信託という方法もある。
自分が判断能力を失う前に自身を委託者であり受益者、子どもを受託者とする「自益信託契約」を締結すると、自分が仮に判断力を失っても、子どもが信託財産から自分の生活費や療養費を支出可能になるし、信託契約に明記しておけば、資産をリスクのある高利回り商品で運用したり、相続税の節税や納税資金を確保するために不動産を処分したりすることも可能になる。子どもを後見人の代わりにするという信託活用方法だ。

自分が判断力を失ってしまった状況で財産を管理するには後見制度を利用するのが一般的だが、後見制度はあくまで本人の財産管理を目的としており、リスクを取って資産を運用したり、相続税の節税や納税資金を確保したりするために不動産を処分することはできないから、このように家族信託を活用すれば、判断能力を失う前の自分の要望に沿った資産管理および資産運用を受託者が実行することが可能となる。

「老活」は「終活」する前の準備段階として、また現役世代から退くタイミングでの資産の活用や整理をイメージした活動である。もちろんアクティブ・シニアライフを充実させるための活動がイメージされる場合も多いが、残された時間を生きていくために何を重視するかを決めるための活動と考えると、ポジティブなことばかりでなく、シビアな状況になる可能性についても考慮しておく必要があるということだろう。

将来に禍根を残さないように&安心して死ねるように、というややネガティブな側面のある「終活」よりも、自らが所有・保有する資産や資金をどのように活用するかを決めるというポジティブな側面が強いのが「老活」という位置づけになる。

自分が自分らしく残りの人生を楽しむために、また価値あるものにするために、今するべきことを後回しにせずに考え始めることが「老活」の第一歩だ。

自らが所有・保有する資産や資金をどのように活用するかを決めるというポジティブな「老活」を考えたい自らが所有・保有する資産や資金をどのように活用するかを決めるというポジティブな「老活」を考えたい

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