過去2年間で民泊への対応を行ってきたヨーロッパ各国

多様な歴史と豊かな自然に恵まれたヨーロッパには、魅力的な観光地がいくつもある。世界遺産の数だけでもイタリアが51件、スペイン44件、フランス41件と、多くの観光地が集まっている。2015年の統計によると、海外から6億人を超える人がヨーロッパを訪れ、世界の旅行者のほぼ50%を占めた。旅行者が大勢集まるということは、それだけ宿泊施設の需要があるということ。ヨーロッパでも他国と同様、規制が未整備なまま民泊が急拡大した。多くの国では日本よりも早く取り組みが始まり、2014~2015年の2年間に法整備を行っている。

「ヨーロッパ」とひと言でいっても、大小50を超える国があり、規制は国や都市によってずいぶんと差がある。民泊の拡大を推進する国がある一方、規制強化を行った国もある。ただ一概に規制するというより、貸出日数の上限(年間60日や90日)や一度に泊まれる人数を制限する等、一定の条件を設けることで民泊を容認するケースが多いようだ。中にはさらに一歩踏み込んで、観光税の徴収や違法物件の取り締まりについてAirbnbと協力関係を結ぶ都市も出てきた。

ヨーロッパ各国でもホテルは規制業種であり、構造や防災に厳しい基準があるのが普通だ。そういった基準をクリアせずにゲストを宿泊させる民泊に対して、業界団体からの反発の声が上がっている。2016年3月には日本の宿泊業界団体が、フランスからホテル・レストランの事業者団体を招いて「緊急フォーラム」を開催。フランスの団体の会長はその中で。「パリは住民が住めない街になった」と、強い口調で民泊の問題点を訴えた。

観光客も多く訪れるフランスやヨーロッパ各国では、民泊にどのような規制があるのだろうか観光客も多く訪れるフランスやヨーロッパ各国では、民泊にどのような規制があるのだろうか

パリにおけるシェアリング・エコノミーがもたらす課題

パリの民泊について見てみよう。パリはルーブル美術館、エッフェル塔、凱旋門と観光資源が豊富な観光地だ。2014年発表の国連世界観光機関のデータによると、年間8370万人の観光客を受け入れており、世界屈指の観光大国であるといえる。

実はこのパリ、シェアリング・エコノミーについても先進的な取り組みで知られている。2007年には官民共同で「ヴェリブ」と呼ばれる自転車のシェアリング・サービスをスタート。市内に1800カ所もの無人貸出拠点があり、2万台を超える自転車が用意されている。2011年には「オートリブ」という電気自動車のシェアリング・サービスが始まった。いずれも慢性的な渋滞の解消を目的としたシェアリング・サービスである。このようなサービスの普及により、パリ市民はシェアリング・エコノミーに慣れ親しんでいるといえるだろう。

しかし、フランスは労働者の権利意識が強く、デモやストライキが頻発するお国柄でも知られている。既存の業界から顧客を奪うようなサービスは、手痛い歓迎を受けることもある。2016年1月、ライドシェア・サービスの「Uber(ウーバー)」に対して過激な反対デモが行われたことは日本でも報道された。Uberはタクシードライバーの資格を持たない一般の運転手が、自家用車を使って乗客を送迎するライドシェア。ライセンス料を支払って、認可を得ているタクシードライバーたちがUberに反発し、道路に障害物を置いたり、タイヤを燃やしたりする過激なデモを行ったのだ。

民泊の拡大についても業界団体からの反発は大きく、先述した事業者団体はパリにおける民泊の問題点をかなり辛辣に語っている。それによると、パリ市内ではアパートのオーナーが民泊に乗り出したことで家賃相場が上昇し、普通の生活者が部屋を借りられず、深刻な住宅不足が発生しているのだという。

ただ、この団体はシェアリング・エコノミーの拡大そのものに反対しているわけではない。シェアリング・エコノミーは「相互扶助の新しい経済モデル」であり、ITの進歩によりこれからも発展していくとの考えを述べている。問題だとしているのは、規制と管理の及ばないところでシェアリング・エコノミーの仕組みが悪用されるケースが増加していること。例えば、パリでは「ディアーヌ」と名乗る女性名で150件もの物件がAirbnbに登録されており、企業が個人を装って民泊で収益を上げていたと批判している。

そのフランスの民泊制度は「ホームステイ型」なら届け出の必要がないため、規制はかなり緩和されているといえるだろう。詳しく見ると、生活の本拠(8ヶ月以上居住)である家・アパートは許可なく短期貸し出し可能。生活の本拠でない物件は、「観光用家具付き住居」として自治体に届け出が必要となる。いずれも、ゲストが外国人の場合は、氏名や連絡先を記録する必要がある。さらに、長期の貸し手は同じ区内に貸し出し物件と同規模のアパートを用意することが2014年から義務付けられた。

パリには「ヴェリブ」と呼ばれる自転車のシェアリング・サービスがあるパリには「ヴェリブ」と呼ばれる自転車のシェアリング・サービスがある

パリとアムステルダムはAirbnbとの協力を選択

パリの動きで注目したいのは、Airbnbとの協力関係だ。本来なら宿泊施設が徴収すべき観光税(ひとり1泊0.83ユーロ<約100円>)を、Airbnbが代行する契約を結んだ。さらに2015年11月、5000人を超えるAirbnbホストが集まる世界大会「Airbnb Open」をパリで開催するなどの協力関係を深めている。さらにパリとAirbnbは共同声明で、違法なホストへの指導や法令順守の徹底を行うと発表。パリにおける民泊は、既存のホテル業や生活者の住居の確保とバランスの取れた成長を目指しているといえるだろう。

オランダのアムステルダムでは、同時に宿泊できるのは4人までと制限されているが、近隣の同意があれば年間60日まで許可なしで貸し出しを可能とした。そしてパリと同様に、観光税の徴収と納入をAirbnbが代行するなど双方の協力関係を推進している。

イギリスも規制緩和に動いた国のひとつ。与党である保守党は「2020年までにイギリスをシェアリング・ビジネスの中心地とする」方針を掲げている。この方針もあってロンドンでは、従来は民泊を行うには転用許可が必要だったが、年間90日以内なら転用許可不要となる法改正が2015年3月に行われた。

逆に、規制強化を行ったのはドイツのベルリンだ。住宅の民泊への転用が家賃高騰の原因とされ、部屋をまるまる貸し出すタイプの民泊は基本的に禁止された。2014年に可決され、2年間の移行期間を経て2016年5月に施行。違法なホストには最大10万ユーロ(約1200万円)もの罰金が科せられる。これを受けてベルリンのAirbnb掲載物件は40%も減少し、一定の抑止効果を見せている。なお、貸し出すのが物件面積の50%未満であれば、従来通り貸し出し可能である。

ベルリンのように規制強化に動いた都市があるものの、ヨーロッパではホームステイや別荘の一棟貸しが伝統的に行われてきたこともあり、住宅供給などとのバランスを取りながら民泊を広げていこうとする傾向が強いようだ。

※この記事は「民泊JAPAN」クローズに伴って、同社にて運営するLIFULL HOME'S PRESSが著作権を引き継ぎ、使用許諾権に基づいて公開しています。情報は「民泊JAPAN」掲載当時(2016年7月1日)のものとなります。

2016年 07月01日 11時05分