そもそも開運風水とは何か? 本当に効果があるものなのか?
風水に関する情報のほとんどが「開運」に関することである。しかし風水で本当に開運ができるのであろうか。あながち間違いとも言えないのは、そもそも風水の起源は、仙人(大いなるもの)になるための手引書の一部だったという歴史があるからだ。
古代の中国人は、人が生きるうえで重要なこととして「天の時、地の利、人の和」が必要であると考えた。これらは自然界の理であり、大いなるものの意思であり、神の御業であり、それを知るための思想として生まれたのが「陰陽五行説」である。
この陰陽五行説をベースに、人が仙人になるために必要な環境づくりのための手法をしたためたのが「風水」である。風水は長い歴史の中で醸成され、幸せになりたい、お金持ちになりたい、健康でいたいといった人々の願いを叶えるための指南書として在り続けてきた。
中国では古くから世の中で起こる森羅万象は、この陰陽五行説のシステムで説明できると考えられてきた。世の中のすべては「木・火・土・金・水(もっかどごんすい)」という5種類のエレメントによって構成され、それぞれが「陰」と「陽」の二極に別れるという思想である。
先人たちは、世界の安定のためにはこの陰陽五行のバランスが完璧に揃っていることが必要で、そのような状態にあれば災害や争いは起きず、べた凪状態の平穏な世界になると考えた。風水の基本は、この陰陽五行のバランスを取ることにある。
しかし、世の中の陰陽五行のバランスを取り続けることは非常に困難で、五行の「火」が強くなり過ぎれば干ばつや火災が起き、「水」が強過ぎれば洪水などの水害が起き、「土」が強過ぎれば地震が起こるといったように、何らかの事象が起きるとされた。
逆に言えば、雨が降ってほしいと思えば五行の「水」を程よく強めればいいし、大地の恵みである豊作を欲するなら「土」を丁度よく強めればいいということになる。これが陰陽五行を基本とした風水の開運法である。
風水は五行のバランスを整えるのが基本、しかし瞬時にそのバランスは崩れる
「木・火・土・金・水(もっかどごんすい)」は森羅万象に存在する。季節にも五行があり、その日の天気、時間、場所、匂い、気温、色、形、素材、広さ、高さ、そこにいる人間や動物にも存在する。
つまりその瞬間に部屋の中の五行のバランスを完璧に整えたとしても、季節によって、その日の天気によって、時間によって、いる人によって、またその人の健康状態によって、その時に聞こえる音や感じられる匂いによっても、そのバランスは変化する。
このような森羅万象に相対する五行の分類は覚えるだけでも実に膨大な情報量となり、加えて開運するために必要な五行を選び出し適宜な処理を施して環境を整えるなど、とても素人にできる作業ではない。風水師と呼ばれる職能集団が長い歴史の中で生き残ってこれた所以であろう。
しかしおおよそのバランスなら、自分でも整えることが可能だ。ここに五行の分類例をいくつかご紹介しておこう。まずは身の回りのものをすべて下記のような分類に当てはめて数値化し、バランスを取り安定を図るところからスタートする。そして何かを突出させたい、特定の分野で開運を望むなら、その属性のものを程よく強めればいいというわけだ。
| 五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
| 色 | 青・緑 | 紅・赤 | 黄 | 白 | 黒 |
| 方位 | 東 | 南 | 中心 | 西 | 北 |
| 季節 | 春 | 夏 | 土用 | 秋 | 冬 |
| 時間帯 | 3時〜7時 | 9時〜13時 | 1〜3時, 7〜9時, 13〜15時, 19〜21時 | 15時〜19時 | 21時〜1時 |
| 星 | 木星 | 火星 | 土星 | 金星 | 水星 |
| 曜日 | 木曜日 | 火曜日 | 土曜日 | 金曜日 | 水曜日 |
| 海域 | 青海 | 紅海 | 黄海 | 白海 | 黒海 |
| 音階 | ミ | ソ | ド | レ | ラ |
| 声 | ヒソヒソ声 | 話し声 | 歌声 | 叫び声 | 唸り声 |
| 感情 | 喜び | 楽しみ | 怨み | 怒り | 哀しみ |
| 表情 | 怒顔 | 笑顔 | 思慮顔 | 憂顔 | 恐顔 |
| 臓器 | 肝臓 | 心臓 | 脾臓 | 肺臓 | 腎臓 |
| 臓腑 | 胆嚢 | 小腸 | 胃 | 大腸 | 膀胱 |
| 指 | 薬指 | 中指 | 人さし指 | 親指 | 小指 |
| 感覚器官 | 眼 | 舌 | 口 | 鼻 | 耳 |
| 体液 | 涙(溜まる涙) | 汗 | 涎 | 涕(落ちる涙) | 唾 |
| 感覚 | 視覚 | 触覚 | 味覚 | 嗅覚 | 聴覚 |
| 味 | 酸 | 苦 | 甘 | 辛 | 鹹(塩辛い) |
| 体の部位 | 筋・爪 | 血脈 | 肌肉・唇 | 皮毛 | 骨髄・髪 |
| 行動 | 識る | 視る | 思う | 言う | 聴く |
| 生き物 | 魚類・ 爬虫類 | 鳥類 | 人類 | 哺乳類 | 両生類・ 甲殻類 |
| 聖獣 | 青竜 | 朱雀 | 麒麟・黄竜 | 白虎 | 玄武 |
| 家畜 | 犬 | 羊 | 牛 | 鶏 | 豚 |
| 果物 | 季 | 杏 | 棗 | 桃 | 栗 |
| 穀物 | 胡麻 | 麦 | 米 | キビ | 大豆 |
| 香味 | ニラ | ラッキョウ | ワサビ | ネギ | ビーンリーフ |
| 徳目 | 仁 | 礼 | 信 | 義 | 智 |
| 教養 | 音楽 | 書道 | 詩吟 | 礼法 | 易学 |
| 十干 | 甲・乙 | 丙・丁 | 戊・己 | 庚・辛 | 壬・癸 |
| 十二支 | 寅・卯・辰 | 巳・午・未 | なし | 申・酉・戌 | 亥・子・丑 |
| 生まれ星 | 三碧木星・四緑木星 | 九紫火星 | 二黒土星・五黄土星・八白土星 | 六白金星・七赤金星 | 一白水星 |
| 八卦 | 雷・風 | 火 | 山・地 | 天・沢 | 水 |
| 現象 | 安定・鎮静 | 活動・放出 | 無為 | 変化・異動 | 停滞・備蓄 |
| 性格 | 穏やか | 明朗 | 内向的 | 神経質 | 冷静 |
デスクまわりの開運風水、行われる作業によって開運ポイントが違う
このような五行のバランスを、部屋全体で整えるとなると手間がかかるが、デスクまわりの狭い範囲なら何とかできそうということで、今回はデスクまわりに絞った五行の整え方と開運風水をご紹介しよう。
まずはデスクまわりのアイテムや環境をリスト化し、それぞれにポイントを付けて、五行のバランスがどの程度取れているかを表にしてみよう。理想は五行が20%ずつになっている状態だ。リストの作成には少し手間が掛かるが、デスクまわりだけなら意外と簡単にできる。リストの作り方の例を下にご紹介するので、参考にしていただければと思う。
その際注意したいのが、五行はすべて「陰」と「陽」に分かれていて、「陰」か「陽」かでポイントが変わるということだ。例えば、同じ「火」に分類される光でも、照明の光は「陰の火」で太陽光は「陽の火」になる。ポイントを付ける際は、おおよそ陰は1、陽は2と換算するといいだろう。陰陽の分類は大小と考えると判断がしやすい。例えば水の場合は、花瓶やコップの水は「陰の水」で1、雨は「陽の水」で2となる。
「陽」には太陽光のほかに、方位がある。例えば、直射日光がよく当たる南向きの場所に置いてあるデスクなら、すでに太陽光で「火」が2ポイント、南向きで「火」が2ポイントで合計4ポイント、かなり「火」の気が強い状態にある。
加えて、配色やデスクの材質、形を見る。デスクの上に何が置かれているかも重要だ。音環境、匂い環境、何時頃にどんな業務をするのか、周囲に座っている人は誰かも分類する必要がある。これらすべてがデスクでの作業に影響を及ぼすというのが風水の考え方になる。
さてリストを作ったら、まずはこれらのバランスを整えたうえで、次に求める運気が強まるようにバランスをし直す。これが開運風水の手法である。
五行にはそれぞれ定められた役割が存在し、その持つ意味が異なる。「木」は平静を意味し鎮める役割を持ち、「火」は活動を意味し放出する役割、「土」は無を意味し求心する役割、「金」は緊張を意味し変化する役割、「水」は停止を意味し貯める役割を持つ。
例えば営業職の場合、対人スキルを求める諸兄姉が多いと思うが、それらは東洋思想では発展や活発の性質をあらわす「火」の気がもたらすと考えられている。経理業務なら守勢や蓄財の性質をあらわす「水」、整理業務なら冷静や平常の性質をあらわす「木」、企画業務なら熟慮や省察をあらわす「土」、開発業務なら発想や思考をあらわす「金」といったように、職種により求めるスキルは変わり、それによって強める五行が異なる。
ちなみに商売の神様のお稲荷様の鳥居の色は赤いが、それもこの五行思想が背景にある。寺や墓の彩色に黒が使われることが多いのも、寺は死者の霊を墓にとどめておくための場所だからである。赤く塗られた墓から、亡き魂が跋扈するようでは困ると考えられたからである。
クリエイティブ人のデスクは金勝ち、営業職はメタボな友人が吉
デスクまわりの五行バランスが取れたら、次に開運風水の具体的な手法をご紹介しよう。例えばクリエイティブな職種に求められる運気は、発想や思考をあらわす「金」がもたらす。つまり五行のバランスを金勝ちに振ればいいということになる。
そうなると、デスクの方位は西向き、もしくは西側の部屋、デスクの材質は金属製で、配色は銀色か白を基調としたもの。机の周囲に鶏のオブジェを置き、アロマの香りを漂わせ、夕方に集中して仕事をすると金勝ちのバランスができあがる。
しかしこれらを全部揃えてしまうと、今度は「金」が強すぎることになる。五行の「金」には緊張の意味もあるため、「金」があまりにも強すぎると心を病んでしまうとされる。あくまでもバランス重視で、強めたい要素は25%程度以内に収めること、また相克の関係にある要素は減らさないことが大切とされている。
五行のエレメントはそれぞれ相手を強化したり、弱体化させたりといった関係性を持っている。相克とは相手を弱める関係性をいい、「金」の相克は「木」、金属は木を傷めるため金剋木と呼ばれている。金勝ちにする際もバランスを極端に崩さないように「木」は減らさないことが肝心だ。相克については、下図を参照されたい。
モデルケースをご紹介すると、金属製のデスクに黒いデスクマットを敷き、昼光色のスタンドで灯りをとり、卓上にはグリーンを置き陶器のマグカップでコーヒーを飲む。卓上ペンケースはなめし革製で中には5色のペンを入れ、資料ファイルのカラーは白、黒、黄、赤、青をバランスよく使い、文具小物の配色も5色が等バランスであることが望ましい。これでおおよそ五行のバランスがとれるので、そこに1つだけ「金」を足すために香りを楽しむアロマをセットする。というのはいかがだろうか。
もっと完璧を期したいなら、実は近くにいる同僚も開運にかかわってくる。クリエイティブな職種の場合は、痩せ型で神経質なタイプの人が近くに座っていると素晴らしい開運の布陣となる。逆に営業職のデスクの場合は、ちょっとメタボな社交家の人が開運の一助になるだろう。
偉人が語る成功者の条件から見る、五行のバランス
さて成功者になるための五行バランスとはどんなものだろうか。古の偉人たちは成功者の要素として以下のものを挙げている。
道教の祖、老子は「無用の用」という言葉で、人生を楽しむ喜びを得た者が成功者だと説いている。すなわち老子がいうところの成功に必要な要素は喜びで、五行は「木」ということになる。
論語の作者、孔子は「人は徳によって大成する」と説いている。孔子の言う徳とは「孝と礼」のことであり、人に孝養を尽くし礼節を持ってのぞめば人望を得られ、世間から一目置かれる存在となれると言っていた。すなわち成功の秘訣の五行は「火」と言うことになる。
秦の始皇帝は中国史上初めての統一王朝を築いたが、その基礎を作った政治家は商鞅(しょうおう)と言い、彼が残した言葉に「疑行は名なく、疑事は功なし」というものがある。これは何事も信じる心が大切だという意味で、疑いの心で望めば何事も成功しないと説いている。つまり商鞅が言う成功の条件は信であり、五行では「土」になる。
先人たちの考えた成功者の条件とは、自分だけの幸せに喜びを見出すことなのか、他人からの評価が得られることなのか、権力を手中にすることなのかで異なりそうだ。本邦の先人、夏目漱石の一節が面白い。「智に働けば角が立ち、情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ、とかく人の世は住みにくい」、これも彼一流のバランス感覚なのかもしれない。
何はともあれ風水とは禁忌ではなく、長い時代の中で培われてきた結果論の集大成である。後からなら何とでも言えると思えばそれまでだし、信じるものは救われるとも言う。筆者の個人的な意見を言わせてもらえば、ほどほどに楽しめばまた人生の違った喜びに出合えるかもしれない。それが開運風水なのではないかと思うのだ。
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