HEMSは現在どの程度まで開発された技術なのか

最近の住宅の話題の中心は、マンション、一戸建てを問わずスマートハウス。その中核となる設備がHEMS(Home Energy Manegement System:ヘムス)だ。HEMSとはIT技術を利用して家庭で使用する電力、水道、ガスといったエネルギーの利用状況をパソコンやタブレット端末、スマートフォンなどで「見える化」し、さらにエネルギーの消費量を最適化するための「制御」を行うシステムだ。

その歴史は2009年の経済産業省「スマートハウス実証プロジェクト」による民間企業や研究機関などの実証実験から始まった。意外に新しいシステムなのだ。現在はどの程度まで開発された技術なのか。今回、マンションにおける最新導入事例を3例紹介する。

節電だけでなく健康まで気づかってくれるマンション

東急不動産株式会社は、「ブランズ市が尾ヒルトップ」(神奈川県横浜市)において、MEMS(HEMSのマンション版)と各世帯の電力利用状況に応じて電気代を削減・還元するインセンティブ型節電サービスを導入する。
 
まず同マンションのMEMS機能について説明する。おもな機能は下記4つだ。
1.スマートフォン使用による電気使用量の「見える化」
2.インターネットによる請求書・領収書のペーパーレス化
3.スマートフォンから家電を遠隔操作
4.「見守り・お知らせ」機能

4つの機能の中で特徴的なのが「見守り・お知らせ」機能だ。この機能は簡単に言うと下記のような機能が備わっている。
・屋内の熱中症指数に応じて危険度をスマホに表示
・湿度センサーによる乾燥情報をスマホに表示
・周辺地域の気象データからエアコンに頼らず外気を取り込むことの推奨をスマホに表示
・エネルギー消費量や照明の点灯度合を見守り。変化が少ない場合は、健康異常などを考慮し、子世帯などの登録メールアドレスに発信

MEMSと合わせて省エネを促進するインセンティブ型節電サービスも紹介したい。同マンションは、建物全体で電力を一括受電することで電気料金が割安になる、高圧一括受電サービスを採用。さらに夏季・冬季の電力需要ピーク時に、一定以下の電力消費をキープするとさらに割安な電気料金となるインセンティブ型節電サービスを導入する。MEMSとの相乗効果で約10%の電気料金削減を狙う。

同マンションの竣工は2014年11月中旬、入居は2014年12月中旬を予定している。

スマートフォン画面で電気の使用状況だけでなく、熱中症指数など健康に関することまで確認できる(画像提供:東急不動産)スマートフォン画面で電気の使用状況だけでなく、熱中症指数など健康に関することまで確認できる(画像提供:東急不動産)

横浜市や大手家電メーカーなどが、HEMSの省エネ効果を調査分析

2013年9月11日、住友不動産株式会社の分譲マンション「シティハウス横濱鶴見ステーションコート」が、横浜市の推進する「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)参加実証実験」制度の認定を受けた。横浜市は最先端技術を駆使して市全体の電力の効率化を図ることを目的に、大手家電メーカーや京都大学といった官民学一体のプロジェクト(YSCP)に取り組んでいる。この制度は、家庭内の省エネ効果と生活の変化を調査分析するHEMS実証実験に参加する集合住宅を認定する制度だ。

「シティハウス横濱鶴見ステーションコート」におけるHEMS実証実験のプロセス
1.入居予定者に制度の案内
2.入居後、参加希望者は専用サイトを通じて登録を申請
3.参加認定後、実証実験を開始。HEMSを利用し積極的に省エネを実践
4.YSCP推進協議会が運営するシステムへ電力使用データやアンケート回答といった情報を提供(協力金あり)

データの収集は2014年度中までの予定。
同マンションの竣工は2014年1月中旬、入居は2014年3月下旬を予定している。

HEMS画面例。消費電力が数値やグラフでわかりやすく表示される(画像提供:住友不動産)HEMS画面例。消費電力が数値やグラフでわかりやすく表示される(画像提供:住友不動産)

東京大学、大京、FNJがHEMSの実証実験を開始

東京大学生産技術研究所、株式会社大京、株式会社ファミリーネット・ジャパン(FNJ)は、共同で「ライオンズはるひ野シーズンテラス」(神奈川県川崎市)において、HEMSの実証実験を行っている。同マンションの居住者で実証実験への参加を同意し、FNJが提供するHEMS「me-eco(ミエコ)」を設置した29世帯を対象に、電力消費のデータや温度・湿度などの環境データを収集、分析している。また、各世帯へアンケートと同時に快適な居住空間を実現するためのコンサルティングアドバイスも行っている。

実施期間は2013年6月8日から2014年6月30日(参加者の承諾により最長5年まで延長)。

電力消費データ、温湿度データ、アンケート調査などによってHEMS機能の向上や快適な住空間の創出を図る
(画像提供:ファミリーネット・ジャパン)電力消費データ、温湿度データ、アンケート調査などによってHEMS機能の向上や快適な住空間の創出を図る (画像提供:ファミリーネット・ジャパン)

実証実験の結果を活かした設備やサービスは数年後か

HEMSがあれば毎日目を△にして節電に取り組まなくても、自然とエコな暮らしができそうだ。しかし、上記物件の入居時期や実証実験の終了時期を見てほしい。すべてが来年(2014)中旬以降だ。しかも実証実験ということは、その結果を活かした設備やサービスが完成するのはその数年後ということか。

HEMSの真価が発揮され、多くの人がその効果を実感できるのはまだまだ先のことになりそうだ。

2013年 10月22日 16時00分