埋蔵文化財包蔵地は全国に40万ヶ所以上!遺跡の多い日本

須恵器を作る職人の居住地跡では、今でも数多くの遺物が落ちている須恵器を作る職人の居住地跡では、今でも数多くの遺物が落ちている

観光客に人気の高い京都の町並み。確かに古都の風情はすばらしいが、住むとなると話は別。古い町ならではのご近所づきあいの難しさもあると聞くが、それ以上に大きな問題がある。それが埋蔵文化財だ。

埋蔵文化財とは貝塚や古墳、住居跡などを指し、これらの遺跡が土中にあると知られている土地、また石器や土器などの遺物が出土する土地を、埋蔵文化財包蔵地という。

遺跡があるのは、奈良や京都の一部だけだと考える読者もいるかもしれないが、日本の歴史は古く、石器時代の始まりは遅くとも13万年以上前。狭い島国にそれだけ長い歴史があるのだから遺跡の数は多く、埋蔵文化財包蔵地は全国に40万ヶ所以上もあるのだ。

もし埋蔵文化財包蔵地に家を建てるなら、工事を始める60日前までに、国や自治体あての工事内容を届け出なければならない。その後、土地の教育委員会や文化財担当者と事業主や土地の所有者との間で協議が行われ、場合によっては試掘が行われる。その結果により、どのような調査をするか、そしてどんな工事をするか、また費用負担の割合などを決定する。

工事が埋蔵文化財を損傷する恐れがなさそうなら、注意して工事を進めるだけでよいが、もし何かしらの影響を与えると判断されると、発掘調査が行われ、建物の設計変更を指示される場合もある。発掘には数ヶ月以上かかるので、着工までの住居を別に確保せねばならず、居住費や荷物の保管に余分な費用がかかってしまう。それだけではない、発掘費用も負担せねばならないのだ。

発掘には時間も人手もかかるため、その費用は家の建築費よりも高くつく場合もある。条件によっては国や自治体から補助金が公布されるが、土地所有者の負担もゼロではないから、やはり埋蔵文化財包蔵地は避けた方が無難だろう。

埋蔵文化財包蔵地でなくても遺跡が?

住居の建て替え時に発掘調査が行われることも。期間は短くても2ヶ月、その期間の工事はストップしたままである住居の建て替え時に発掘調査が行われることも。期間は短くても2ヶ月、その期間の工事はストップしたままである

埋蔵文化財包蔵地ではないから大丈夫だろうと思っても、未だ知られていない遺跡は数多くあり、地面を深く掘り返すと遺跡が発見されるという可能性は十分ある。地下室を造る場合や、マンションやビルなどの基礎工事のために深く掘らなければいけない場合、遺跡が見つかる可能性は高いだろう。この場合も発掘調査が行われ、土地所有者に費用の負担がかかるから注意が必要だ。

たとえば1986年のこと、元近鉄バファローズの梨田昌孝選手が自宅兼商業ビルを建築しようと工事をしたところ、約2万2千年前の遺跡が発見された。梨田投手自身は、「商業ビルの良いPRになる」と前向きに考えたらしいが、工事の着工は大幅に遅れ、200万円の負担が課せられたようだ。もちろん、「はさみ山遺跡梨田地点」と、遺跡にその名が残ったから、長い目で見ればマイナスばかりではないかもしれないが。

筆者は、このはさみ山遺跡梨田地点のある藤井寺市在住。同市には同じく旧石器時代の国府遺跡があり、工事で深く掘れば、高い確率で遺跡が出てくる土地柄だ。実際に、商業施設ではない、一般的な住居の建て替え時に発掘調査が行われているのを何度も目にしているが、調査の期間は短くても2ヶ月はかかるだろう。もちろんその期間の工事はストップしたままである。

埋蔵文化財包蔵地はどこでわかる?

自分が所有する土地が埋蔵文化財包蔵地かどうか、どうしたらわかるのだろうか。

宅地建物取引法三十五条に、宅地建物取引業者が書面で告知せねばならない事項が定められているが、その中に埋蔵文化財包蔵地についての情報はない。しかしながら、四十七条では「宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」については、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為を禁じている。もし取引の際に口頭での説明がない場には、「重要事項説明書」に埋蔵文化財であると記載されていないか確認してみよう。

ただし、書面での告知が義務付けられているわけではないので、口頭で説明されたものを聞き逃した可能性もある。もし心配なら自治体に問合せてみてほしい。

埋蔵文化財の発掘調査埋蔵文化財の発掘調査

埋蔵文化財包蔵地の良い点とは

筆者の実家は藤井寺市の隣で、日本で二番目の規模と大きさを誇る誉田御廟山古墳(伝応神天皇陵)のある羽曳野市。<BR />祖母はよく「古墳が多い土地は、地震にも洪水にも強い」と自慢していた筆者の実家は藤井寺市の隣で、日本で二番目の規模と大きさを誇る誉田御廟山古墳(伝応神天皇陵)のある羽曳野市。
祖母はよく「古墳が多い土地は、地震にも洪水にも強い」と自慢していた

費用面でも、工事期間の面でも、厄介ごとが多い印象のある埋蔵文化財包蔵地だが、決して悪いことばかりでもない。

先人たちの知識は侮れないもので、たとえば山をご神体とする神社では、冬至や夏至、あるいは春分秋分の日に山正面からの日の出が見える位置に社殿が建てられていることがある。たとえば西暦前創建の美具久留御魂神社(みぐくるみたまじんじゃ)では、社殿から鳥居を結んだ延長線上に二上山があり、春分あるいは秋分の朝には二上山の真ん中から太陽が登るのが見える。社殿が建立されたのは後世になってからだろうが、暦のなかった時代に春分・秋分を割り出し、ぴったり方向を合わせて聖地を定めた知識を考えれば、貴人の墳墓のために、過去に地震や水害のなかった土地を選定する技術があったと考えても不思議はない。そしてその墳墓に大きな損傷がないなら、築かれてから現在に至るまで、大きな災害が起きていない証にもなる。

もちろん、河川の付け替えなどで水路が変わっている可能性もあるし、過去に地震が起きなかったからといって将来も起きないという保証はない。しかし、目安にはなるのではなかろうか。

日本に住んでいる限り、埋め立て地以外の土地を掘れば、遺跡が出る可能性はゼロではない。いやだと避けるばかりではなく、その歴史に興味を持ってみれば、興味深い発見があるかもしれない。