「生活の変化で、今の住宅をどうしようか」そんな時、どうする?

住み替えは、多くの人にとって人生のうちに何度かあることだろう。それぞれの事情やライフスタイルの変化により、購入した住宅を手放すことも含めて、今の住宅をどうしようか検討しなければならない場合がある。例えば、住宅の購入後に急遽転勤が決まった場合や、子どもが自立し、夫婦ふたりで住むには家が広くなってしまった場合などが考えられる。そうなった時、皆さんだったらまず、何をするだろうか?

新しい住まいを探すにしても、現在の自宅を売るか、貸すか。それともリフォームして自宅に住み続けるか…。様々な選択肢があり、そのどれが最適かをプロに相談する必要がある。
しかしそうした場合、現状の不動産業界では、売買は売買専門の会社に、賃貸は賃貸専門の会社にといったように、異なった窓口にそれぞれ相談する必要がある。売買部門も賃貸部門もリフォーム部門も備えた大手の不動産会社でも、売却と賃貸の相談先は全く部署が違い、担当者が別であり、それぞれが良い部分のみをアピールしがち、というのが実情だ。

ユーザーとしては毎回手間がかかる上に、売買会社は売却を薦め、賃貸会社は賃貸を薦めるといった風に、客観的・総合的にアドバイスされていないという不安を感じる事もあったのではないだろうか。財産である住宅を手放す、または活用するために最適な方法を提案するコンサルティングに近い対応が、本来ユーザーが不動産会社に期待するものである。

顧客主義の思いから誕生したサービス

お話を聞いた、東京建物不動産販売株式会社の金成圭一さん(右)と石崎恵さん(左)お話を聞いた、東京建物不動産販売株式会社の金成圭一さん(右)と石崎恵さん(左)

そうした中、2014年10月10日に東京建物不動産販売株式会社が発表したのが「トリプル査定」というサービス。東京23区内の分譲マンションを対象に、ユーザーからの一度の問い合わせで売却・賃貸・リフォーム費用の査定を同時に行うもので、同社の売買仲介部門・賃貸管理部門・リフォーム分野を担うグループ会社の東京建物アメニティサポート株式会社が連携し、ユーザーのケースに合わせて検討する。まさにユーザーが求めていた事を実現するサービスだ。

このサービスを開始した背景として、「以前から社内では、お客様に対してもっと様々な選択肢を提供したいという声がありました」と、東京建物不動産販売株式会社 リテール営業部の金成圭一氏。最近は不動産流通価格の不安定さにより、売却よりも賃貸に出したいというユーザーからの声が増えてきたことも理由の一つにあるそうだ。

査定依頼に対し原則一人の営業マンが対応することで、ユーザーは複数の担当者との間で悩むこともなく「自分の担当コンサルタント」という認識で安心して相談することができるだろう。不動産の売買取引時にユーザーが求める「担当者との信頼関係」が構築しやすいというメリットもありそうだ。

選択肢を提示するワンストップのサービスが“ありそうで無かった”理由

”数字主義”の業界の中で「トリプル査定」サービスが実現できたのは、社内の理念の方針転換や評価制度の調整ができたからこそ、だという”数字主義”の業界の中で「トリプル査定」サービスが実現できたのは、社内の理念の方針転換や評価制度の調整ができたからこそ、だという

しかしながら、所有する住宅をどうするかという問題に対してユーザーの「幅広い方法を知りたい」というニーズは当たり前にあり、且つ売買・賃貸・リフォームのノウハウを持つ不動産会社も少なくない。
逆に、これまでにこうしたワンストップのサービスが無かった事が不思議に感じる。同社が業界に先駆けてサービスを開始したことで、他社の追随もあるのでは?と質問したが、金成氏から返ってきたのは「いえ、難しいのではないかなと思います」という意外な答えだった。

現状、多くの不動産会社では、専門領域以外での売上や協業を評価する体制にない事がひとつの大きな理由だという。売買の会社であれば自身の売上目標達成のためには売買を提案せざるを得ず、仮に系列の賃貸会社に紹介をしても評価につながりにくい。業界の“数字主義”の仕組みが、ユーザーが望むワンストップのサービスを阻んでいると言える現実だ。

しかし同社では数年前から、「社内で協業し、ユーザーにとって有効なサービスを提供したい」という方針が経営陣によって強化され、同じ建物内にある他部署とのコミュニケーションを密にすることで横の連携をしやすく、さらに営業社員の評価制度も社内での協業をプラス評価するように変更したことによって、この「トリプル査定」サービスが実現したという。

そして、このサービスがもたらす利益はユーザーにとってのものだけではないようだ。
「専門領域に留まらない幅広い提案の機会を持つことで、営業社員の他分野での知識も増え、スキルアップにつながるというメリットもあります」(金成氏)
“営業マン”ではなく“コンサルタント”として顧客に接することで、自身の成長にもつながるということだ。また、賃貸に出された物件を将来売却する際、販売活動は同社に依頼するなど、長期的な取引のできる顧客を早期に獲得できるというメリットも確かに存在する。

財産を扱う者としてすべきこととは

不動産会社に相談するユーザーは、所有する不動産を「貸すこと」「売ること」を目的としているのではなく、その前段階に自身の財産の有効な活用・運用をしたいという思いがある。その取引を担う不動産のプロは本来、財産の活用・運用を提案するコンサルタントとしての働きをするべきだ。

アメリカでは、不動産に関わるブローカーの社会的地位は弁護士や医師と同じように高いと言われている。対して、“アメリカより10年遅れている”と言われる日本の不動産業界では、物件の囲い込みを始めとして、先に述べた“数字主義”に発端する課題も目立つのが現状だ。事実、不動産会社はユーザーにとって、残念ながら“なんとなく構えてしまう存在”であると言っていいだろう。
ユーザーにもっと支持され、不動産業界全体が活性化するには、携わる人やそれにまつわる制度がもっと「顧客本位」になる必要がある。言い換えると、不動産の営業マンが単なる「営業マン」という認識ではなく、「顧客のコンサルタント」や「良きアドバイザー」という認識と自覚を持つことではないだろうか。

現在、東京建物不動産販売による「トリプル査定」のサービス対象エリアは東京23区のみだが、今後の状況に応じてエリアを拡大する予定。より多くの人が自身の財産の最適な活用方法を知ることができる、シンプルだが業界のこれまでの常識を覆すと言っても良いこのサービス。今後も注目を集めそうだ。

アメリカでは医者や弁護士と同等に社会的地位が高いといわれる不動産ブローカー。</br>日本では2015年4月に宅建主任者が「宅地建物取引士」と変更することも決定し、</br>不動産業界や、それに携わる人の変化が求められているアメリカでは医者や弁護士と同等に社会的地位が高いといわれる不動産ブローカー。
日本では2015年4月に宅建主任者が「宅地建物取引士」と変更することも決定し、
不動産業界や、それに携わる人の変化が求められている

2014年 12月09日 11時05分