適正かつ迅速な不動産取引を促進するレインズ

住宅は人生で一番高額な買い物と言われている。そのためより多くの情報を求めて複数の不動産会社を回る人も多いのではないだろうか。しかし、どこの店舗に行っても同じ物件の情報を見ることがある。それは不動産流通標準情報システム、通称レインズを使って不動産会社間での情報交換をリアルタイムに行っているからだ。

レインズとは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピュータ・ネットワーク・システムのこと。「Real Estate Information Network System」の頭文字を取って「REINS(レインズ)」といわれている。その歴史は1988年の宅地建物取引業法の改正よりスタートし、現在は東日本、中部圏、近畿圏、西日本の4法人の指定流通機構が設立されている。

その役割は下記の通りだ。
1.宅建事会社間で広く情報交換することで適正かつ迅速な不動産取引の成立と流通の円滑化を促進する
2.収集した成約情報をもとに、市況の分析情報を公開することで不動産市場の透明性の向上を促進する

レインズによって売却希望者は業界全体で買い手を探せ、購入希望者は網羅的な情報の中から物件を選択できる

このシステムによるそれぞれのメリットは以下のようなものがある。

【売主】
不動産業界全体で買い手を探してもらえるので、早期の売却が実現できる
【不動産会社】
他社の扱っている幅広い物件を購入希望者に紹介できるためビジネスチャンスが広がる
【買主】
複数の不動産会社を回ることなく網羅的で最新の情報の中から物件を選択できる

もし、レインズがなかったら売主は、なかなか買い手が見つからず引越しができない、または大幅な値引きをせざるを得ないという事態が頻発するだろう。一方で買主は、希望の条件の物件を探し求めて何件も不動産会社を渡り歩く、さらに不動産会社からの相場情報が正確性に欠けるので割高な物件を紹介される可能性が高くなるといったことが起こり得る。

3種類の媒介契約によって異なるレインズの登録義務

では、ここでレインズの仕組みを解説しよう。一般の人が不動産会社へ不動産売却を依頼する場合、多くは媒介契約を結ぶことになる。この契約には3種類の選択肢がある。

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1.一般媒介契約
ほかの不動産会社とも媒介契約ができる。自分で買主を見つけてもいい。レインズの登録義務なし

2.専任媒介契約
ほかの不動産会社との媒介契約は不可。自分で買主を見つけてもいい。2週間に1回以上の業務状況の報告義務。レインズの登録義務あり(媒介契約日から7日以内)

3.専属専任媒介契約
ほかの不動産会社との媒介契約は不可。自分で買主を見つけてはいけない。1週間に1回以上の業務状況の報告義務。レインズの登録義務あり(媒介契約日から5日以内)
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1から3になるほど売却希望者の自由度が少なくなる代わりに、不動産会社は本気で買主を探さなければならなくなる。2または3の契約を締結した不動産会社は、より早く買主を見つけるために物件情報をレインズに登録しなければならない。登録はパソコンやファックスで行い、リアルタイムで他の不動産会社に共有される。ほかの会社は買主の希望条件を入力し検索。条件の合う物件が見つかれば、買主に購入の意思を確認し、売主側の会社と交渉開始。交渉がまとまれば取引成立となる仕組みだ。

パソコンなどで登録した内容はリアルタイムでほかの不動産会社に共有されるパソコンなどで登録した内容はリアルタイムでほかの不動産会社に共有される

「売主側の紹介拒否」、「登録情報の不足」、「インターネットの普及」など課題も多い

このように売主、媒介会社、買主の”三方よし”であるはずのレインズだが様々な課題もある。
代表例は以下の3つだ。

1.売主側の紹介拒否
上記媒介契約を結んだ不動産会社は、買主を見つけてくれば売主と両方から仲介手数料を得られる。そこで悪質な仲介会社はレインズからの問い合わせに対し「商談中」といった虚偽の理由で物件の紹介を拒否することがある。売主は知らない間にせっかくの売却のチャンスを逃していることもあり得るのだ。

2.登録情報の不足
レインズの登録をする際の入力項目は約500項目ある。しかし必須項目は、「売り出し価格」「専有面積」「住所」「間取り・部屋数」「取引態様(専属・専任・一般など)の5項目だけだ。中古物件購入後のリフォーム費用を大きく左右する「建築工法」「増改築歴」といった項目の登録率は50%未満となっている。

3.インターネットの普及
レインズの情報は宅地建物取引業の免許を受けた専門事業会社しか閲覧できない。しかし世の中はインターネット時代。売主の中には「仲介手数料を支払うくらいなら自分でネットを利用して買主を探す」という人も増えている。しかし、専門知識のない素人同士の不動産売買は「言った・言わない」だけでなく詐欺など大きなトラブルの基となる。

特に「1.売主側の紹介拒否」は、売主に直接被害があるため早急な対策が望まれていた。
そこで2013年10月1日、(公財)東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)は、この紹介拒否の禁止を明文化する規約の改定を行なった。これにより注意、戒告、利用停止、除名などの処分が行なわれる。今後どこまで改善されるか注目したい。

結局どこの不動産会社に依頼しても物件情報は同じなのか

このような課題も抱えるレインズだが、もっとも多くの不動産情報を管理しているのも事実。利用しないのは得策ではない。では、複数の不動産会社を回ることは無駄なのだろうか。網羅的に物件情報があるレインズだが、日本中のすべての情報が集約されているわけではない。たとえば前述のように一般媒介契約の物件は登録しなくてもいいことになっている。また、実質1社にしか媒介を依頼しないケースでも、売主の「ご近所に内緒で売りたい」といった要望がある場合は、情報が目立たないように一般媒介契約とすることが多いようだ。

そのような未公開物件の情報が集まるのは、やはり各地域の情報に精通した会社となる。「結局どこに行っても同じ」とあきらめることなく、地元のことをよく知り、親身になって相談に乗ってくれる不動産会社を探すことが重要だ。また、売主にとっても同じことがいえる。転勤、経済的な事、生活パターンの変化など不動産の売却理由は人それぞれ。こういった細かい事情を理解した上で、フットワークよく動いてくれる不動産会社を選びたい。

2013年 10月10日 13時20分