木造軸組構造(在来工法)は柱、梁、筋交いで力を受ける

垂直の柱に対し、斜めになっているのが筋交い。有無で強度が大きく変わる垂直の柱に対し、斜めになっているのが筋交い。有無で強度が大きく変わる

日本の一戸建てで中心となっているのは木造軸組工法。いわゆる在来工法と呼ばれるものだが、実はこれ、決まった1種類の工法があるというわけではない。地域によって、建てる会社の技術によってかなりの幅があり、どこで建てるかによって強度には差が出る可能性がある。近年は自社独自の技術を売りにした会社も増えており、今回、ご紹介する工夫のあれこれは、Hさん宅の施工を担当した会社のもの。すべて同じようなやり方で建てられているわけではないことを意識した上で、基本的な考え方を説明していきたい。

まず、木造軸組工法の主要な部材は柱、梁、それに筋交いという3種類である。イメージとしては垂直の柱、水平の梁、そこに斜めに入る筋交いと考えれば分かりやすい。家を箱のようなものと考えると、縦横だけでなく、斜めに力を受けるものがあったほうが強いというわけだ。

ちなみに、建物で地震や風などのように水平荷重(横からの力)に抗するための壁を耐力壁というが、筋交いはその一種。木造住宅では筋交いの代わりに構造用合板を利用する方法や、筋交い+構造用合板を組み合わせる方法があり、Hさん宅は筋交い+構造用合板を組み合わせるという、安全性の高いやり方で建てられている。

当然だが、地震に強いのはこの耐力壁がしっかり作られている建物である。実際、阪神淡路大震災では筋交いが入っていなかったり、量が少なかったり、一方向にしか入っていないなどの木造住宅の被害が大きかったことが分かっている。建築を依頼する場合には、どのようなタイプの耐力壁を標準的な仕様としているのかを聞いてみると良いかもしれない。

筋交いと土台、柱と基礎、直交する梁同士……、耐震金物で建物を補強

垂直の柱と斜めに渡す筋交いを筋交いプレートと呼ばれる金物で補強垂直の柱と斜めに渡す筋交いを筋交いプレートと呼ばれる金物で補強

筋交いに強度の低い部材を使っていたり、柱、土台との繋ぎ方が適切でなかったなどで、筋交いが入っていても被害があったケースもある。そのため、阪神・淡路大震災後、平成7年に行われた建築基準法の改正では接合金物等の使用が奨励され、各種金物が補強のために使われるようになっている。

たとえば、右の写真は筋交いプレートと呼ばれるもので、筋交いと柱を接合するもの。こうした形でがっちりと組み合わせることで強度を保つようにしているわけだ。こうした金物は柱と筋交いだけでなく、柱と基礎、柱と梁、直交する梁同士をつなぐなどあちこちで使われるようになっており、現在、適切な施工で作られた一戸建てなら、かつてのような被害を受けることはないはずだ。

ただし、こうした金物類は完成後には見えなくなってしまう。安くあげようとして金物類を間引いたり、悪意はないもののうっかり補強し忘れたりという可能性がないわけではないので、安全最優先で家を建てたい、買いたい人であれば、工事中の現場でどこにどのような金具が使われているのかを見せてもらい、解説を聞いた上で選ぶのが安心かもしれない。

ちなみにタイトル脇に使われている写真は、構造計算によって「強い引き抜き力がかかる場所」と判断された柱に使われるホールダウン金物で、柱と基礎を接合するもの。基礎と建物は基礎のコンクリートに埋め込まれたアンカーボルトと呼ばれるボルトで繋がれるが、それを補強する。

自社独自の対地震技術を持つ会社も

写真左側に見えている黒いものが制振装置。繰り返し揺れても損傷を抑える写真左側に見えている黒いものが制振装置。繰り返し揺れても損傷を抑える

阪神・淡路大震災、中越地震、東日本大震災などを受けて、各社は耐震性能の高い住宅作りに取り組んでおり、自社独自の技術を開発しているケースも。たとえば、今回、Hさん宅を手がけた工務店では床の剛性を高めるために構造用合板を敷き込み、住宅性能表示制度の耐震等級で最高等級となる3を取得。さらに、1階住戸内4箇所に鋼製ブレース、鋼製ダンパーからなる制振装置を設置している。地震の運動エネルギーを熱エネルギーに変換して揺れを吸収する制振装置を設けることで、繰り返し発生する地震にも備え、建物の長寿命化を可能にしている。

この他にも独自の基礎を作る、柱、梁などの接合部に大型の金物を配した構法を取り入れる、剛性床を作るなど、会社によって耐震性能向上の工夫は様々。どのやり方がベストということはなく、それぞれに特徴があるはずなので、説明を聞いて選択したい。

また、これから間取りを考える場合には自分の要望が方位によって壁が偏在したり、1階、2階で耐力壁、柱が全く違う場所に配されるようになっていないかを、意識したいところ。極端に南側に窓が多かったり、1階、2階の耐力壁、柱がずれている(合致している割合を直下率といい、50%以上が推奨される)と、地震に弱くなるためだ。直下率が低いと梁がたわんで建付が悪くなるなどの不具合も出やすい。自由設計の場合など、ついつい間取りに目が行くが、同時に安全性も考えた家にしたいところだ。

2014年 07月11日 10時12分