森林大国日本。新築の約55%を占める木の家の「木材のルーツ」を知る

日本は森林大国。国産材活用の活性化がヤマ・マチづくりでも求められている日本は森林大国。国産材活用の活性化がヤマ・マチづくりでも求められている

国土の6割以上を森林が占める我が国。
日本は世界的に見ても、国土の森林率が上位5位以内に入る「森林大国」だ。
さらに日本の住宅は新築の約55%が木造住宅。私たちの暮らす家にとって「木」という存在は切っても切れないものなのかもしれない。それにもかかわらず、年々輸入材が増え、国産の木材が十分に活用されていない現状がある。
新築やリフォームなどで地域材の適切な利用にあてることで、森林の適正な整備・保全、地球温暖化防止及び循環型社会の形成に貢献し、農山漁村地域の振興に資することを目的として作られた【木材利用ポイント(※1)】が今年7月より開始された。この制度が開始されたことも、今まで十分に国産木材流通がスムーズにいっていなかったというひとつの表れなのかもしれない。

とは言え、国産材の木の家は今でも根強い人気がある。日本人にとって、やはり身近な「木の家」そして、「国産材」…。
その国産の木を単なる材料としてではなく、人や街をつなぐツールとして捉え、その可能性に魅了される一級建築士の「木材コーディネーター」と出会い、お話を伺うことができた。

(※1)木材利用ポイントとは http://mokuzai-points.jp/about/index.html

木をよく知ることが、ヤマとマチをつなげる

車で30分も走れば山に当たる、と言っても過言ではない林産県である岐阜県。
そうした環境にあっても、「『木材は山で伐採され、その木が製材され、作られている』という当たり前のことを、今の家づくりにおいては作り手・住まい手ともに実感しづらくなっているように感じる」と語るのは、岐阜市内にオフィスを構える木材コーディネーターの大石氏(一級建築士)だ。

昔の住まいと異なり、現在の住まいは柱や梁が見えるものも少なく、家の中に木を意識しづらくなっているのは仕方ないことなのかもしれない。

「我が家に使われる木が、どこで育ち、伐採されたのか知らない、という方もいらっしゃいます。食べ物と違い、口にするわけではないので当然かもしれません。 しかし、山の木は定期的に伐採をして、水源をかん養(水を蓄えること)する機能を保つ必要があることを知ると、環境保全は実は自分たちの家づくりの一環であり、身近なものだと気付かされるのです」

木材コーディネーターとは、木材の流通に新しい道をつくり森と暮らしをコーディネートする、いわば木を活かした暮らしを提案する専門家。家に使われている木材のルーツを、林業家の仕事や想いを、住まい手に伝えられたら…そんな思いから大石氏は山に出たという。

山で危険をおかして伐採作業をする林業家にとって消費者である住まい手の顔は見えづらく、逆もしかり。そこに問題を感じ、双方の理解を深めるには消費者を山に連れて行くことが一番と考えた大石氏。まずは、子どもたちへ伝えようと保育園新築プロジェクトで園児たちの伐採見学を行っている。

園児らが感じるヤマ、林業家が感じる喜び

園児、保護者も参加した伐採見学の風景園児、保護者も参加した伐採見学の風景

保育園新築プロジェクトのひとつ、森山学園の話をする。

今までその園は鉄筋コンクリートの園舎ばかりだった。補助金が出ることをきっかけに木造園舎の建設を決めたが、伐採見学や製材工場の見学を通して、理事長自身の木材への関心が一気に高まり、次の建物も木造で計画することとなった。
「林業家の気持ちが伝わったのだと思います。 この変化には正直驚きました」と、大石氏は木材コーディネーターの役割がもつ意義を肌で感じたという。

園児、保護者も参加し、5月に伐採見学会、9月には製材所見学会が開催された。
高さ40メートルを超えるような木がドーンと倒れる音、山の様子、そこで働く人たちの話に驚いたり、感動したり…肌で山と木を感じ、楽しさや喜びを表現する園児たち。その姿を見て、林業家たちの表情も活き活きしたと言う。

経験した記憶が薄れても、園の遊戯室に設けた丸太の柱で遊ぶ中で、木は山にあり、危険な思いをして木を切る人がいて、町で製材され、今こうして園にある…というひとつの結びつきを感じ続けてほしい、と大石氏は願っている。

「木」と「人」と「住まい」、その流れを体感する豊かな家づくりを

木を材料として捉えるのではなく、元は山にあり、伐採され製材になり、削り組み立てられ家になるという流れがある。さらにそこに幾人もの人が関わっていることを「体感する」と、家づくりの楽しみは一層増し、その家への愛着は更に深いものとなるのではないだろうか。

筆者も常々「住まいは心を育てる場所」とセミナーなどで伝えている。心豊かな暮らしの指標は人それぞれだろうが、学ぶ・触れる・選ぶ…そうした実際の経験こそが、心を育てるものだと信じている。

木材コーディネーターは少しずつ増えているという。
担い手は一級建築士に限ったものではない、と大石氏は語る。
「森林のボランティアや、林業関係の公務員、森林組合の職員さんなど、いろいろな手段で山のことを広めていくのだと思います。いろいろな立場の人が、住まい手だけではなく、一般消費者にも山の大切さを知ってもらうことが重要だと思います」

ヤマとマチ、人と人、木を通じて彼ら木材コーディネーターが繋ぐものによって、家づくりの喜びや感動が深まり広がっていくことに期待したい。


■取材協力
有限会社アーキ・キューブ 大石佳知氏 http://www.archi-cube.com/

木の豊かさが感じられる、森山学園の園舎木の豊かさが感じられる、森山学園の園舎

2013年 11月05日 10時12分