住まい探しをしていると、気になる物件が見つかったものの、ほかの物件も見てみたいという理由から、「仮押さえしたい」と考える人は多いのではないでしょうか。なかには、不動産会社から「仮押さえしますか」という提案を受けたことのある人もいるかもしれません。
ここでは、賃貸物件における「仮押さえ」の意味、仮押さえする場合の流れや仮押さえ可能な期間、申し込み時の注意点などを解説します。
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賃貸物件の仮押さえとは?

そもそも賃貸物件において「仮押さえ」することは可能なのでしょうか。これは「仮押さえ」をどのように捉えるかによって回答が異なります。
一般的にいわれる仮押さえとは「本申し込みをしない状態であり、将来的に利用を希望する商品やサービスなどを仮で押さえておくこと」を指します。賃貸物件においては、この意味での仮押さえは原則としてできません。なぜなら、賃貸物件は申し込みをしない限り「押さえた状態」にならないためです。
賃貸物件における仮押さえとは「入居申し込みをすること」です。入居希望の意思表明として入居申込書を提出し、実際に物件を押さえている状態を「仮押さえ」と呼びます。
入居申し込みの際には、最大で家賃1ヶ月分程度の申込金が必要になる場合があります。申込金とは、不動産会社が入居の意思を確認する目的で預かるお金のことで、人気物件や引越しシーズンに入居申し込みをした際に求められることが多いです。
申込金は一時的な預かり金であるため、契約が成立するかどうかに関係なく返還されます。なお、契約が成立した場合には、そのまま敷金や礼金など初期費用の一部に充当されるのが一般的です。
なお、賃貸ニーズが限られている地方などでは、数日間に限って「申込書を提出しない仮押さえ」が可能な地域も存在します。気になる場合は、あらかじめ不動産会社に確認しておきましょう。
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賃貸物件における仮押さえの流れや期間は?

気に入った賃貸物件が見つかって、仮押さえをする際の基本的な流れは次のとおりです。
- 物件に申し込みをする
- 申込書などの書類を記入する
- 不動産会社が管理会社に申込書提出の旨を連絡する
- 入居希望者のなかで何番手かが決まる
- 申込金を支払う
- 入居審査を受ける
- 入居審査の合否が出る
上記のとおり、物件に申し込みをして入居審査の結果が出るまでが「仮押さえ」の期間となります。仮押さえできる期間は2~3日程度が一般的ですが、不動産会社によっては1週間程度設けているところもあります。
無事に入居審査を通った場合、項目4の時点で1番手であれば、正式に賃貸借契約の締結へ進みます。
ほかの物件と比較した結果、最終的に仮押さえした物件に入居を希望するのであれば、仮押さえ期間中に入居する旨を伝えましょう。仮押さえ期間を過ぎると申し込みの効力を失い、ほかの申込者が1番手になってしまう可能性があるためです。
また、賃貸借契約締結後にキャンセルしようとすると「解約」扱いとなり、手続きが面倒になったり、費用負担が発生したりするリスクがあります。詳しくは後述しますが、申し込みをキャンセルするのであれば、賃貸借契約を締結する前に行いましょう。
賃貸物件を仮押さえしたあとのキャンセルは可能?

賃貸物件を仮押さえしたあとに申し込みをキャンセルしたいケースも考えられます。しかし、「契約前後」のキャンセルは、タイミングによって申込金が返還されなかったり、違約金が発生したりする可能性があります。
賃貸借契約を締結する前であれば、どのタイミングであっても仮押さえのキャンセルは可能です。貸主と借主の双方が契約書に署名捺印をすることで契約成立となるため、署名捺印するまで契約は未成立の状態です。そのため、キャンセルすれば申し込みは撤回され、申込金も返還されます。
また、入居審査に通過し、宅地建物取引士(宅建士)から重要事項説明を受けたあとであっても、署名捺印をしていなければキャンセルは可能であり、申込金も返還されるでしょう。
一方で、契約書に署名捺印をして契約を締結したあとにキャンセルする場合は、「解約」という扱いに変わります。契約書の解約に関する規定に則り、必要な手続きを経ての解約が必要です。
契約内容によっては「申込金を手付金として処理する」と定めている場合があり、「借主は手付金を放棄することで解約できる」としている場合もあります。つまり、解約すると申込金は返還されないということです。
また、すでに支払っている初期費用の一部も返還されない可能性が高いです。加えて、早期解約時の違約金が設定されていれば、その費用も支払わなければなりません。
このように契約締結後のキャンセルは解約扱いとなり、費用負担が発生する可能性があります。万が一キャンセルするのであれば、契約前に判断することが重要です。
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賃貸物件の仮押さえを行う際に注意すること

賃貸物件の仮押さえを行う際は、注意すべき点がいくつか存在します。正しく理解したうえで仮押さえを行わなければ、入居審査に通りづらくなってしまう可能性もあるでしょう。
ここでは、賃貸物件を仮押さえるときの注意点を3つ紹介します。
同時にいくつも申し込まない
正式に賃貸借契約を締結するまでは申し込みをキャンセルできるとはいえ、同時に複数の物件を仮押さえするのは得策ではありません。物件の管理会社が異なったとしても、家賃の保証会社が同じ場合、多重契約とみなされる可能性があるためです。その結果、同じ保証会社を利用している物件の入居審査にすべて落ちてしまう可能性があります。
また、あとで返還されるとはいえ、一度に多くの物件を仮押さえしようとすると多額の申込金が必要になってしまいます。
賃貸物件の仮押さえは入居を前提に行うものであると理解し、入居の意思がある物件のみに申し込みましょう。
申込金を払う場合は「預かり証」をもらう
先述したとおり、仮押さえの際に支払う申込金は預かり金であり、契約成立前にキャンセルしたときは全額返還される決まりです。しかし、契約の前に申し込みをキャンセルしたにもかかわらず、申込金が返還されないトラブルも少なからず発生しています。
不動産会社の言い分として、「手付金として受け取ったものであり返還の義務はない」というものが考えられます。これは、不動産会社へ申込金を渡した際に「領収証」を受け取った場合に起こりやすいケースです。領収書は費用を支払った証明になってしまうため、手付金として渡したことを否定しづらくなってしまいます。
そのため、申込金を支払うときは、「領収証」ではなく「預かり証」をもらうようにしましょう。受領した「預かり証」を物件入居時まで保管しておくことも重要です。
早めに連絡する
仮押さえ中は入居の申し込みをしただけの状態であって、正式に賃貸借契約を結んでいるわけではありません。入居を決めたのにも関わらず連絡をせずにいると、たとえ1番手であってもほかの入居希望者に決まってしまう可能性もあります。
また、キャンセルする場合も早めの連絡を心がけましょう。不動産会社は、仮押さえを受けている期間は入居者募集をストップしており、入居準備を進めています。時間が経過してキャンセルを告げると関係者に迷惑がかかるだけでなく、心証も悪くなってしまうでしょう。
まとめ

賃貸物件では、申し込みをせずに「仮押さえ」することは原則できません。気に入った物件を押さえるには、入居申込書を提出し、必要に応じて申込金を預ける必要があります。
ただ、申し込んだからといってすぐに入居が決まるわけではなく、契約締結まではキャンセルも可能です。契約前にキャンセルすれば、預けていた申込金も返ってくる決まりとなっています。
ただし、入居申し込みを受けると、不動産会社や賃貸人などの賃貸物件を取扱う関係者は、申し込みのあった人の入居準備をスタートします。キャンセルすると、こうした準備や努力が無駄になってしまいます。お互いの心証を良くするためにも、入居の意思がある物件のみに申し込み、早めに最終判断を伝えることが重要です。
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