不動産賃貸をめぐるトラブルで寄せられる質問や相談に、「契約書をなくしてしまった」というものがあります。

賃貸の場合でも、同じ部屋に5年、10年と住み続けることは一般的です。長い年月の間に1枚の書類がなくなってしまうこともあるでしょう。とはいえ、契約書というのは重要書類のひとつです。決して"なくしていいもの"ではありません。

では実際のところ、契約書をなくすとどんな不都合があるのでしょうか? 契約書をなくしてしまった場合の対処法はあるのでしょうか? 今回の記事ではこうした疑問にお答えしていきます。
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書類はイメージです

書類はイメージです

 

本題に入る前に、まず賃貸借契約書とはどのようなものかをお伝えします。契約書とは”細かい文字と数字がぎっしり書かれて重々しい印鑑が押された、重要そうな書類”という認識を多くの人が持っているでしょう。たしかに見た目はその通りです。

 

家を借りている人の中には、「なくしてしまったら部屋を追い出されるのではないか?」と心配する人もいるでしょう。ですが、安心してください。そのようなことはありません。そもそも賃貸の契約書はあくまで賃貸借契約の証明書であって、賃貸借契約そのものではないのです。証明書がなくなったからといって、契約そのものがなくなることはありません。

 

 

では契約書の意味とはいったい何でしょうか。

 

さきほど”賃貸の契約書というのはあくまで賃貸借契約の証明書”と書きましたが、証明書はトラブルや疑問が発生したときに役立つものです。

 

たとえば賃貸借契約をめぐって、家主や不動産会社とトラブルが発生したとします。具体的なトラブルの内容としては、これらが挙げられるでしょう。

 

契約の期間いつまで部屋を借りられるか
使用上の禁止事項ペット不可、楽器不可など
契約更新の条件手数料は必要か、賃上げはあるか
退去時の原状回復義務どこまで元通りにすればいいか

 

大抵の場合、このような条件は賃貸借契約書に書かれています。契約書は契約の当事者双方が持っているので、それを見ればトラブルや疑問はすぐに解決できます。

 

ですが契約書を作っていなかったり、当事者の一方(もしくは両方)が契約書をなくしてしまったら、トラブルの解決は難しくなります。証拠がなければお互い都合の良いことばかり主張しますし、一方で自分の主張の正しさや相手の主張の間違いを客観的に証明することもできません。

 

なくしたことに気がついたら

なくしたことに気がついたら

 

繰り返しになりますが、賃貸の契約書をなくしたからといって賃貸契約そのものが無効になることも、家を追い出されることはありません。

 

円満に賃貸を続けている限りは、賃貸の契約書があろうとなかろうと特に問題ないのです。

 

とはいえ万一トラブルが発生した場合、契約書の有無は大きな意味を持ちます。自分の立場を守るためにも、契約書を確実に手元に置いておくことは大切です。

 

では、賃貸借契約書をなくしたことに気がついたらどうすればよいのでしょうか?

 

 

まずは不動産会社に相談

まずは不動産会社に相談

 

多くの人が考える手段は”契約書の再発行”です。ですが、これは少し難しいでしょう。たとえば、Aという契約書を作ったとします。そして5年後、契約書を紛失したために契約書を再発行したとします(A’)。このとき、元の契約書Aと再発行した契約書A’がまったく同じなら問題はありません。

 

ですが契約書Aと契約書A’の内容が少しでも違っていたら、どちらを優先するかは作成の日付で決まります。 困るのは”元の発行日と同じ日付で再発行した”場合です。最悪の場合、どちらの契約書が有効か裁判の場で決着をつけることになりかねません。

 

過去の日付で契約書を作成(再発行)するのは法的に問題ありませんが、多くの不動産会社はこうしたリスクを気にします。

 

一方で”再発行する日付で同内容の契約書を作成した”場合も問題があります。記載する日付が違う以上、契約書Aと契約書A’は厳密には別物です。仮に万一契約書A’の内容が一方にとって不利な内容に変更されていても、日付が新しい方、つまり変更後の契約書A’が優先されます。

 

結局、再発行によって元の契約書を証明することはとても難しいのです。ですから不動産会社が契約書の再発行に応じてくれる可能性は少ないといえるでしょう。

 

では、他に考えられる手はあるでしょうか?

 

無難な方法は”賃貸の契約書をコピーしてもらう”ことです。契約書は不動産会社にとっても重要書類なので、契約時から少なくとも5年間は保管されています。事情を伝えれば、契約書のコピーに応じてくれる不動産会社も多いはずです。もしなくした契約書を再度手に入れたいなら、まずは不動産会社に相談してみましょう。

 

 

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トラブルを未然に防ぐ

トラブルを未然に防ぐ

 

はじめの項目で説明した通り、賃貸の契約書にはトラブル解決につながる可能性があります。またお互いの手元に契約書があることで、トラブルを未然に防ぐことにもつながります。

 

ペットを飼ったり楽器を鳴らすことで発生するトラブル、契約更新時や解約時のお金に関するトラブルは決して少なくありません。もし契約書をなくしてしまうと、こうしたトラブルを発生させてしまったり、すでに発生したトラブルをスムーズに解決できなくなります。

 

また、賃貸物件を利用して新たな事業を始めようとしている人も注意が必要です。特に役所の許可を必要とする事業などの場合、申請の際に”契約書の原本”を求められることがほとんどです。契約書をなくしてしまったら、残念ながら事業は開始できません。

 

このケースでは”契約書のコピー”でも受け付けてもらえませんので、原本を絶対になくさないことが肝心です。

 

相談窓口に相談

相談窓口に相談

 

賃貸の契約書をなくしてしまったうえ、不動産会社に契約書の再発行もコピーも断られた場合はどうすれば良いでしょうか?不動産会社との交渉がうまくいかないのであれば、各都道府県庁の相談窓口に相談してみましょう。

 

たとえば東京都なら”東京都都市整備局住宅政策推進部・不動産業課”、大阪府なら”大阪府住宅まちづくり部建築振興課・宅建業免許グループ”などです。

 

また”全国宅地建物取引業協会連合会””全日本不動産協会”など、契約している不動産会社が所属する業界団体に相談してみるのも有効です。ほかにも”国民生活センター”や各都道府県の消費生活相談も活用できます。

 

契約書をめぐるトラブルで困った時は、あきらめる前に、ぜひ公的な機関に相談してください。

 

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契約書をなくしてしまった場合の対処方法について、しっかり理解していただけたでしょうか?

とはいえ、なにより大事なのは”契約書をなくさない”ことです。きちんと管理していれば、対応に手間と時間を奪われることもありません。賃貸の契約書は、大事に保管するようにしてください。

 

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更新日: / 公開日:2018.11.26