転勤者の留守宅を賃貸する「リロケーション」が増えています。一般の賃貸住宅とはどのようなところが違うのでしょうか。リロケーション物件を借りるとき、あるいは貸すときに注意すべきことを確認しておきましょう。
定期借家物件
リロケーションとは、いったいどのようなもの?
リロケーションとは、海外赴任あるいは地方転勤などにより一定期間が留守になる自宅を管理するサービスです。空き家のままで維持管理をする場合もありますが、たいていはこれを第三者へ賃貸することになります。ちなみに欧米では転勤者に対する幅広いサポートサービスを指して「リロケーション」と言うようですが、日本では留守宅の管理業務に特化しているケースが大半でしょう。国内では1980年代からリロケーションを取り扱う会社があったものの、当時の法律では自宅をいったん貸すと契約更新を拒絶することが困難だったり、高額の立ち退き料を支払わなければならなかったりして、見ず知らずの個人に転勤の期間中だけ貸すということが事実上困難でした。実際に貸す場合にも法人契約が大半だったでしょう。しかし、平成12年の借地借家法改正により、更新を認めなくても良い「定期借家権」が創設され、契約期間の終了とともに明け渡してもらうことが可能となりました。この改正により、一定期間は第三者に貸したうえで転勤が終わったら自宅に戻るという選択がしやすくなったのです。それに伴ってリロケーションサービスを手掛ける不動産会社も格段に増えました。

リロケーション
リロケーション物件を借りるときの注意点
一般の賃貸物件であれば、2年などと定められた賃貸借期間が満了しても契約を更新して住み続けることができます。次の引越し時期は、自分の都合で決めることができるのです。ところがリロケーションによる定期借家契約では、原則として契約期間の満了とともに明け渡さなくてはなりません。再び引越すときにはそれなりの費用が必要となりますから、計画的に貯蓄をしておくことが大切です。また、所有者の一時的な留守宅を借りるため、建物内外に家具や設備などがいくつか残されている場合もあります。これを使うことは原則として自由ですが、その所有権はあくまでも所有者にありますから、邪魔だというときでも勝手に処分することはできません。分譲マンションの場合には、賃貸で借りて住んでいるのが自分たち家族だけというケースもあります。全室が賃貸のマンションとは違い、住民同士の付き合いが求められることもあるでしょう。
定期借家物件
リロケーションで貸すときの注意点
転勤の任期があらかじめ2年あるいは3年などと決まっていれば、自分が戻る予定の時期に合わせて契約をするのですが、例えば2年間の賃貸借契約をした後に1年で急に戻ることになれば、その際に明け渡してもらえるとは限りません。また、期間限定の定期借家契約ですから、家賃は周辺相場よりも安くなるでしょう。リロケーションで賃貸にするかどうかを検討するときには、家賃収入を低めに見積もることも大切です。借主との間における賃貸借契約は、所有者が自ら当事者となる形式、リロケーション会社が所有者の代理人となる形式、リロケーション会社が借り上げたうえで転貸する形式の3パターンがあります。家賃滞納などのリスクを避けるには借り上げ形式が安心できるものの、そのぶん手取り収入は減ることになります。いずれにしても、リロケーション会社による管理業務の範囲、賃貸借契約の内容やリスク、所有者としての義務など、事前にしっかりと説明を受けることが大切です。また、自分が住まなくなることによって住宅ローン控除など税制上の優遇が受けられなくことのほかに、賃貸にすれば住宅ローンの適用金利が引き上げられるケースもあります。金融機関によって対応は異なりますので、あらかじめしっかりと確認しておくことが欠かせません。
定期借家物件
更新日: / 公開日:2013.05.01









