平成29年版の土地白書の公表。土地利用においての成長産業とは?

2017年5月、国土交通省から「平成29年版土地白書」が公表された。土地白書は、土地に関する動向、及び政府が土地に関しての施策について毎年国会に報告しているものである。このうち、第2章では、今後の土地政策の大きな方向性として、訪日外国人旅行客の急増やEコマース市場の拡大を背景とした、観光・宿泊業、物流業、ヘルスケア施設などの新しい成長分野が取り上げられている。

まずは、不動産投資市場の規模を示す上でのひとつの指標となるJリートの動向について見ていきたい。
我が国の不動産総額に占めるリートの総額は約0.8%程度であるが、Jリートにおける組入れ不動産の評価額は、平成22年の約7.5兆円から右肩上がりで推移しており、平成28年末には約16.6兆円と2倍以上に拡大している。特に、物流施設及びホテルについて増加幅が大きく、平成22年には約2,300億円だった物流施設の評価額は平成28年には10倍近い約2兆円、ホテルについても平成22年に約2,000億円だった評価額は約1兆円にまで増加している。

Jリートの組入れ不動産の評価額推移(出典:国土交通省)<BR />
「その他」は「オフィス」、「商業・店舗」、「住宅」、「ホテル」、「物流施設」以外の用途<BR />
平成22年1月以前の「ホテル」、「物流」は「その他」に含まれる<BR />
平成28年9月以前の「ヘルスケア」、「病院」は「その他」に含まれるJリートの組入れ不動産の評価額推移(出典:国土交通省)
「その他」は「オフィス」、「商業・店舗」、「住宅」、「ホテル」、「物流施設」以外の用途
平成22年1月以前の「ホテル」、「物流」は「その他」に含まれる
平成28年9月以前の「ヘルスケア」、「病院」は「その他」に含まれる

Eコマース市場拡大に伴う物流施設の動向

物流施設の一部が含まれる倉庫業法上の営業倉庫の合計面積については、平成23年度に34,42万m2まで落ち込んだもののその後は以前の水準まで回復し、平成28年には46,17万m2まで拡大している。一方、物流施設を含む倉庫の着工面積は、平成23年の44万2,000m2以降、平成24年44万6,000m2(前年比+0.9%)、平成25年48万4,000m2(+8.5%)、平成26年56万1,000m2(+15.9%)、平成27年57万1,000m2(+1.7%)、平成28年59万2,000m2(+3.7%)と、継続した増加傾向が見られる。

こうした物流施設の需要の高まりの背景の一つが、インターネットの普及等を背景にEコマース市場の急拡大である。
平成27年の消費者向けEコマース市場規模は13.8兆円と前年比7.6%の増加(平成22年との比較では、76.9%の増加、6兆円の増加)、また、全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、Eコマース市場規模を示す「EC化率」についても上昇傾向にある。
消費者ニーズに対応した配送サービス拡充の影響により、これまでの"倉庫"としての保管機能のみならず、施設内における加工機能や食品の冷凍・冷蔵保存機能など、利用企業のニーズに沿ったスペースを確保することが、物流施設の市場競争力を高めるために必要となってきている。また、大手企業の買収活動による小売業界等の集約化に伴い、それぞれの企業が保有していた老朽化した物流施設を1箇所の施設へ集約するニーズも発生しており、新規の物流施設は大規模化、高機能化の傾向にある。

また、その立地については、近年首都圏では、臨海部だけでなく内陸部の高速道路インターチェンジ付近で開発が盛んに行われている。物流施設関係者へのヒアリングによると、この動向は圏央道などの高速道路一部開通で内陸部の交通利便性が向上したことや、臨海部に比べて安価で土地を取得することができることから、臨海部における老朽化した高賃料の物流施設に入居するテナントを低い賃料で誘致できることなどに起因しているとみられている。

倉庫 着工面積推移(出典:国土交通省:「建築着工統計調査」)倉庫 着工面積推移(出典:国土交通省:「建築着工統計調査」)

インバウンドの増加等に伴う土地利用の変化

訪日外国人旅行客の増加に伴い、宿泊業用建築部の着工面積も増加傾向にある。
平成23年度には44万7,000m2まで落ち込んだものの、その後は、平成24年度約52万m2、平成25年度約68万m2(前年比+15.4%)、平成26年度74万m2(+8.7%)、平成27年度約93万m2(+25%)、平成28年度200m2(+211%)と、物流施設同様、年々増加している。

平成28年の訪日外国人旅行者数は、約2,404万人と前年に比べて約21.8%の増加となり、平成24年と比較すると約3倍の増加となっている。観光客の増加に伴い、その消費額も増加しており、インバウンドの増加を見越した新規出店や宿泊施設の需要が増大している。
特に大阪市の中心部は、平成29年地価公示の結果を見てみると、道頓堀築に位置する「大阪中央5-19」が、対前年変動率41.3%の上昇、次いで「大阪中央5-2」で35.2%と上昇しており、商業地で最大の上昇率を示している。

宿泊業用着工面積推移(出典:国土交通省:「建築着工統計調査」)宿泊業用着工面積推移(出典:国土交通省:「建築着工統計調査」)

民間企業の新規参入が増えるヘルスケア施設

物流施設や宿泊施設と共に増加をしているのが高齢者向け施設などの「ヘルスケア施設」だ。特別養護老人ホーム(特養)や老人保健施設など行政が主導していた中、平成12年の介護保険制度導入以降は、民間業者の参入で有料老人ホームの新設が相次いでいる。
その中でも特に、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の登録数(棟・戸)は、平成23年10月の制度開始以降、急増しており、平成28年12月時点で6,468棟、211,127棟と、棟数、戸数共に対前年同月比で+10%となっている。
サ高住が増加する背景には、国の税制上の優遇措置や補助金による採算性の良さ、また一般的な賃貸住宅に比べて立地条件が影響しにくいようだ。

しかし、土地白書で示された基本的施策として、リートが不動産を取得する場合の不動産取得税の軽減対象に、ヘルスケア施設やその敷地を追加する点、また、ヘルスケア関連事業者を対象に、関連省庁と連携したヘルスケアリートセミナーを実施していくことが挙げられていることからも、依然として何らかの政策的支援が必要な状態であることが改めて浮き彫りになったと言える。

サービス付き高齢者向け住宅の登録状況の推移(出典:国土交通省)サービス付き高齢者向け住宅の登録状況の推移(出典:国土交通省)

海外投資家からの評価では、情報の透明性が課題に

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、世界的に注目が高まる日本の不動産市場。
国土交通省が平成28年度に実施した、海外投資家に対するアンケート調査結果によれば、海外投資家が投資地域の選択の際に重視することとして、「不動産投資関連制度の安定性」(85.6ポイント)が最も高く、次いで「不動産以上の流動性」(82.2ポイント)、「不動産投資リスクの水準」(80.0ポイント)、「不動産市場の規模」(78.3ポイント)、「不動産市場の安定性」(75.6ポイント)が重視されている。
一方、日本の不動産市場に対する評価では、上位から「不動産市場の規模」(68.8ポイント)、「不動産市場の流動性」(64.4ポイント)、「信頼できるパ―トナーの存在」(59.1ポイント)、「不動産投資関連の制度の安定性」(58.0ポイント)となっており、これを重要度と比較した場合、重要度が高いにも関わらず日本の評価が低い項目としては、「不動産関連情報の充実度」、「不動産投資関連情報の入手容易性(透明性)」であり、海外投資家に対する情報提供についての評価が低い結果となった。
また、「不動産市場における平均的な利回り」、「不動産市場の成長性」についても重要度が高いにも関わらず評価が低い結果となっている。

不動産市場に対する評価が低かった項目も含め、2020年以降にどのような施策が打ち出されていくのだろうか。引き続き注目していきたい。

海外投資家の我が国の不動産市場に対する評価(出典:国土交通省「海外投資家アンケート調査」)<BR />
海外投資家の我が国の不動産市場に対する評価(出典:国土交通省「海外投資家アンケート調査」)
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2017年 09月17日 11時05分