外国籍の人が住宅を借りるときに知っておきたいこと

日本で暮らし、部屋を借りることになったときに、外国籍の方々はどのようなことに困るのだろうか。自国の手順との違いや、「敷金」「礼金」のような日本独自の契約ルールに、戸惑う声を聞く。また、入居後も、生活習慣の違いから近隣や大家とのトラブルに発展することもあるという。
今回は外国籍の方に向けて、日本の賃貸住宅の「物件探し」から「引っ越し」の間に知っておきたいルールを紹介する。

物件探しから契約締結まで

住みたいエリアや住む時期が定まったら、物件探しが始まる。日本では、部屋を借りる際、複雑な公的書類の取り交わしがあるため、そのプロフェッショナルである不動産会社を利用する。不動産会社の店舗や雑誌、インターネットで住みたい物件の候補を絞り、内見をして、「ここに住みたい」という希望の物件を決めると本格的な手続きが始まる。
この先少なくとも2回は、不動産会社の担当者と会う必要がある。

1回目/申し込み
気に入った物件を借りるための申し込みを行う。
借りたい物件を紹介した不動産会社が用意する入居申込書に記入し、そのほか必要な書類とあわせて提出する。申込書を受け取るときに不動産会社から、どんな書類が必要か説明がされるだろう。

・本人を確認するもの(パスポート、在留カードなど)
・仕事や学校を確認できるもの(勤務証明書、在学証明書など)
・収入や給料を確認できるもの(源泉徴収票、給与明細書、銀行等の預貯金の証明など)

具体的にはこのような書類が必要になる。国土交通省のガイドブックにあるチェックシートも参考にしたい。

また、賃貸の契約には緊急連絡先と連帯保証人が必要で、日本に住む人にお願いするのが望ましいとされている。連帯保証人になる人には、不動産会社から連絡が入ることを事前に伝えておこう。
連帯保証人を立てることが難しい場合は、家賃保証会社を利用できるかを確認したい。
提出された書類をもとに入居審査が行われる。審査には平均3日~1週間程度かかるだろう。

2回目/契約
審査が通ったら契約に進む。
不動産会社の担当者から重要事項説明を受け、契約書に署名捺印し、初期費用を支払う。自分の印鑑を作成しておこう。
初期費用とは、敷金、礼金、仲介手数料、初月の家賃(場合によっては、日割になることもある)、保険(賃貸物件は主に火災保険に入ることが必須)、諸費用を合わせたもののことを指す。合計すると家賃の4~6ヶ月分程度の金額が必要になる。

借主が署名捺印した契約書をオーナーに渡し、不動産会社を仲介して、オーナーが署名捺印すると、無事成約だ。賃借人用の契約書の控えと鍵を受け取り、いよいよ新生活がスタートする。

物件探しから契約締結まで

<この項目で出てきた用語の解説>
内見(ないけん)
…実際に物件を訪れて部屋の中を見て調べること。内部見学を省略した言葉。

入居申込書(にゅうきょもうしこみしょ)
…入居の申し込みのための書類。どの物件か、申し込む人の情報、保証人の情報など、審査に必要な情報を記入する。(申込書の見本が国土交通省のHPにある)

連帯保証人(れんたいほしょうにん)
…賃借人による家賃の未払いや設備を壊してしまい弁償できないなど、問題が発生した場合、本人に代わって支払いをする人のこと。賃借人と同じ責任を負うことになる。

家賃保証会社(やちんほしょうかいしゃ)
…連帯保証人を有料で代行する会社。保証料は2年契約の場合、初回時に1~3万円程度、あるいは家賃の30~70%が主流だ。

重要事項説明(じゅうようじこうせつめい)
…不動産の契約に際して、重要事項説明書に基づき、不動産会社が契約に関する重要事項を契約者に説明すること。

印鑑(いんかん)
…自分の名前が彫ってある「はんこ」ともいう。日本の公的証書に必要なもので、認印(みとめいん)と呼ばれる種類のもので問題ない。はんこ専門店などで作ることができる。

敷金(しききん)
…家や部屋を貸し借りする際、家賃の担保や修繕の目的で、物件を借りる人が貸す人に預けておく保証金。「家賃の●ヶ月分」という単位で支払うことが多い。

礼金(れいきん)
…物件のオーナーに対して支払う謝礼金。昔、賃貸物件が少なかった頃に場所を提供してくれたことに対するお礼として払っていた風習の名残といわれている。「家賃の●ヶ月分」という単位で支払うことが多い。

仲介手数料(ちゅうかいてすうりょう)
…物件の案内、契約条件の交渉、重要事項の説明、契約の締結など、取引を成立させてくれた対価として不動産会社に支払う料金。「家賃の●ヶ月分」という単位で支払うことが多い。

諸費用(しょひよう)
…物件によって必要になる費用。契約書の特記事項で確認できる。たとえば、退去後にセキュリティの目的で鍵を取り換える費用を賃借人が支払う、などがある。

引越し

住まいが決まったらいよいよ引越しだ。スムーズな引越しのために、事前に用意しておくことと、引越し当日に気をつけておきたいことを知っておこう。

引越し前
第一に、引越し業者の手配だ。すでに日本に住んでいる人で、別の新居に移る予定の人は、早めに引越し業者の予約を取ろう。
2月末~4月は繁忙期のため、希望日で予約が難しかったり値段が高くなったりするので、注意が必要だ。

引越す日程が決まったら、電気・ガス・水道・場合によっては電話会社やインターネット環境といった、新居でのライフラインの使用開始日を各所に連絡する。

日本では、寮やシェアハウスのような一部の共同住宅を除いて、ライフラインの手続きは部屋を借りる人が自分で行わないといけない。管轄の電気会社、ガス会社、自治体の水道局など、不動産会社で各所の連絡先を教えてもらい、引越してすぐに使えるように事前に連絡をしておこう。特にガス会社は、引越し当日に開栓の説明があるため、新居に滞在している時間を伝えよう。不動産会社への連絡も忘れないようにしたい。

また、すでに国内に住んでいる人は、今使っているライフラインの契約解除の連絡もこのタイミングでしておこう。

そして入居前のこのタイミングで重要なのが、現況確認のチェックだ。契約書と一緒に不動産会社から渡されるチェックシートを参考に、室内に不具合がないか事前に確認しておく。その際、写真に収めておくと更によいだろう。“居室内のダメージが入居後にできたものではない”という証明になり、退去時に修繕費用を求められるといったトラブル回避につながる。

引越し後
引越し当日、家財を運び終わったら、オーナーや管理員や集合住宅の場合には上下両隣に引越しの挨拶をしたい。名前など簡単な自己紹介をしよう。その際には、ちょっとした手土産を持っていくのもよい。
管理員さんがいる場合は、ゴミの出し方や回収日についてこのタイミングで尋ねておくと安心だ。いつ、何を、どこに出すのかを把握しておこう。
住民票の登録、各種住所変更の手続きは、転居後のなるべく早いタイミングで済ませておきたい。

引越し

<この項目で出てきた用語の解説>
引越しの挨拶
…最近では少なくなってきたが、昔からある風習だ。お菓子や日用品をご挨拶の品として渡すことが多い。オーナーには1,000~2,000円、上下両隣には500円~1,000円程度のものが主流のようだ。

住民票
…市区町村の自治体が、その地区に住む人を記録するための帳簿。住民票の写しは、その人が日本国内のどこに住んでいるか確認するための公式な証明になる。
観光目的などの短期滞在者等を除く、在留期間が3ヶ月を超える外国籍の人で日本に住所を有する人も、住民票の作成や住民票の写しの交付をしてもらえる。該当する人の詳細は、総務省HPを参考にしてほしい。また住民票登録済で、他所へ引越す場合には、新しく住む自治体への転入届が必要になる。

気に入った部屋でトラブルなく暮らすために

お部屋を借りて入居するまでの手順を紹介した。自国での引越しと違う点がったことだろう。寮やシェアハウスならば煩雑な手続きを簡単に済ませることもできるが、自由な生活を望むなら、賃貸住宅という選択肢は魅力的だ。
とはいえ、自由ばかり求めるとトラブルになることも考えられる。
自分の気に入った部屋で安心して暮らし、地域の方と良好な関係でいるためのヒントとして役立てていただきたい。

次回は、日本の暮らしのルールやマナーを中心に、住み始めてから退去までの手続きについて紹介する。

気に入った部屋でトラブルなく暮らすために

【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。

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