障害者の住まい探しの平均的な契約までの期間は2週間~2ヶ月!スムーズに進めるためのポイントとは?
春の引越しシーズンを迎え、転居について考える機会が増える季節。身体に障害があって実家やグループホーム住まいの人が、独立して一人暮らしやパートナーとの同居をしてみたいと考えることも少なくないのではないだろうか。
LIFULL HOME’Sが実施した2022年度「住宅弱者の『住まい探し』に関する実態調査」によると、障害者の部屋探しにおいて、おおよそ半数が2週間~2ヶ月以内で物件を探し始めてから契約に至っている。ただ、車いすユーザーが賃貸物件で快適に暮らすためには、契約ができていても、事前の準備と工夫が欠かせない点に注意が必要だ。
理想の暮らしや希望に合う物件を見つけるための不動産会社選びから、内見時のポイント、入居前に室内を改装する計画までのステップを押さえておくと、より心身への負担を抑え、スムーズに新生活へ移行できる。
本記事では、当事者からのヒアリングをもとに、車いすユーザーが安心して新生活をスタートできるポイントを紹介。賃貸物件をスムーズに借り、自分の生活にマッチするよう室内に手を加えるカスタマイズで注目すべき点を詳しく解説する。
ポイント1)安心して任せられる不動産会社を探し、希望を固めておく
部屋探しには、自分の状況を理解してもらえる不動産会社との出会いが、今後の鍵を握るといっても過言ではない。障害者であることを理由に不動産会社で門前払いに遭う人も少なくないため、物件を探すより前に障害者に理解のある、障害者フレンドリーな不動産会社を探すことが先決だ。
障害者フレンドリーな不動産会社と出会うには、引越しを希望するエリアの社会福祉協議会や居住支援法人、ソーシャルワーカーに相談する、といった手段がある。
そのほか、LIFULL HOME'Sが運営する『FRIENDLY DOOR』の「障害者フレンドリーな不動産会社を探す」からでも、エリアや路線を絞って不動産会社を探すことができる。
車いすの利用が必須となる身体障害といえども、利用頻度や車いすの形状、また病状や障害の程度は千差万別。不動産会社が決まったら、“自身の状況”を把握してもらう時間を設けると安心だ。話を聞いた車いすユーザーの体験では、
「お部屋を貸してくださる方が不安にならないように、『どういったことならできる・できない』『どういった福祉器具を利用するか』なども伝えました」
不動産会社からしても、こうした情報は仲介時に大家や管理会社に伝える補足情報として役に立つ。そのほかにも、代替物件や譲歩できるポイントを考えることができ、不動産のプロの目線で車いすユーザーの部屋探しの選択肢を広めてくれるだろう。
併せて、希望条件は事前に細かく決めておくのがベター。
物件情報に“バリアフリー対応”の表記があっても、居室内がリフォームされているだけで建物には段差がある…といったことも。内見に赴いてから譲歩できない箇所が見つかると、無駄足になってしまいかねない。優先順位をつけつつ、「エレベーター有」「エントランスが自動ドア」「室内はスライドドア必須」など、希望条件は細かく決めておこう。
住宅弱者への調査や当事者へのインタビューによると、「入居審査が通るか不安」と感じる人は多い。オーナーや管理会社の安心材料となるよう、収入や預貯金も開示できるようにしておくとよい。
自治体を移動する場合には、今住んでいる自治体と転入予定自治体、両方の障害者福祉担当窓口に相談をしておこう。
自治体間で情報の共有が行われて、申請や支援費の支給などがスムーズに進められるからだ。手続きが遅れて福祉サービスの調整がつかず、引越し後数日間ヘルパーの介助を受けることができなかった、という話もある。特に引越し直後は環境に慣れるのに苦労しがちなので、引越し前に並行して福祉関連の手続きも進めよう。
ポイント2)内見は体調との兼ね合いも鑑みて。設置物に考慮した動線にも注目
物件を決めるうえで重要な内見。見落としがちだが、内見時は室内の仕様だけでなく、“体調が悪いとき”のことも想定して室内を見ることが重要だ。
「私のときもそうでしたが、内見は体調がよいタイミングに合わせて行う人が多いと思います。調子がいいときだと、多少の不便を瞬発力でカバーできてしまうこともあります。ですが、日常では体調が優れない日もありますよね。室内に限らず最寄り駅からの道のりも含めて、体調の悪いときでも大丈夫かどうかを見るといいと思います」
といった話も。無理が利かない日は当然難しくなるもの。些細なことでも無理のない動作で確認することを心がけよう。
車いすの動線で肝心な幅。ドアや廊下など、一般的に75~80cm以上が必要といわれている。角を曲がる際に車いすでクロスを傷つけないようにL字クッションを設置したり、移動の補助のために手すりを設置したりする場合、その分幅が狭くなる。設置する用品の分も考慮して、計算する必要がある。
IoTや無線で可動するボタンや自動開閉カーテンの取り付けを検討する場合も、その設置幅を確認しておこう。
物件が決まったら、次は入居申し込みとなる。
その際、どういったカスタマイズをする予定かを伝えておくと、福祉用具の知識があまりないオーナーにも理解を得やすくなるだろう。
加えて、室内の原状回復に努める意思も併せて示すこと。原状回復は、入居者が部屋を本来あるべき状態に戻して貸主に返す義務。とはいえ、車いすで室内を利用する場合は特に、室内への傷を懸念されるだろう。大切に部屋を使う姿勢は、懸念を払しょくするのに有効に働くはずだ。
ポイント3)入居前の下準備には時間がかかることを想定する
身体に障害がある場合、入居する前に部屋のカスタマイズが必要となることが多い。実際に新生活をスタートするのは、カスタマイズ完了後になる点をお忘れなく。
車いすユーザーが賃貸物件に住む際、床の傷防止や、防音効果や衝撃緩和のために、クッションフロアを敷くのが一般的。
敷く作業を施工業者に頼まず自らで行う場合、6畳の部屋でおよそ1万8千~3万円程度の材料費がかかる。作業をする家族やヘルパーさんのタイミングにもよるが、1ヶ月かかる場合もあるのでそのスケジュールも考慮しなければならない。
施工業者に依頼する場合、6畳あたりの費用はおよそ4万円。施工期間は1~2日程度が一般的だ。
費用や入居までのスケジュールなど、好みや状況を加味して選ぼう。
また、クッションフロアを選ぶ際は、素材にもぜひ目を配ろう。
「接着がうまくいかなくてめくれたりと、何度か張り替えました。そのなかの通販で買った製品に肌がチクチク痛むものがあったんです。這って移動する際に擦り傷になってしまっていたことがありました。それと、パネル型のクッション材など、柔らかい素材は車輪が沈んでしまったり、摩擦係数が上がって車輪を回しにくくなったりしてしまうので、車いすには向かないです」
ヒアリングの中にあった「肌がチクチクした」というのは、クッションフロアに使用されているグラスウール(ガラス繊維)が原因とみられる。製品によっては、グラスウール不使用のものや表層に出ないよう工夫されているものもある。
質感やクッション性の確認には、サンプルを取り寄せたり、ショールームに足を運んだりして、実際に触れて確認するのがおすすめだ。
昨今はクッションフロアもヘリンボーン柄やタイル調など、スタイリッシュなデザインも増えている。ルームコーディネートと合わせて楽しんでみては?
ポイント4)福祉サービスを積極的に利用する
賃貸において車いすユーザーが気になるのが、どれだけ福祉用具を取り付けられるか、だろう。手すりや入浴補助具など、日常生活に必須ともいえる福祉用具の中には、突っ張り棒タイプの手すりや床置き型手すり、バスボードなど、設置工事が不要で、賃貸物件でも使えるものがある。
通販で気軽に個人購入ができるものも増えているが、自身の体の動きに合っているか、部屋のサイズに合っているかの検討も必要。引越し先のケアマネジャーなどの介護のプロフェッショナルや、かかりつけ医に相談のうえ、自分に合ったものを利用すると無駄な出費を防ぐことができる。
さらに、日常生活用具給付等事業を利用すれば、購入前の試用や、設置する用具の選定、福祉用具の購入・レンタル費用、施工業者の手配もすべてケアマネジャーが計画してくれ、給付金も下りる。
施工の手配などは特に、専門知識のある人が間に入ってくれることで、自身の負担がぐっと下がる。福祉制度を上手に活用しよう。
“したい暮らし”を計画的な準備でかなえよう
車いすユーザーが賃貸物件で快適に暮らすためには、準備と工夫が必要だ。
住まい探しは短期間で進むことが多いが、焦らず計画的に入居までの環境を整えることで、より快適な生活が実現できる。
自分らしい暮らしを始める前に挫けてしまうことのないよう、段取りや確認事項を踏まえ、ゆとりを持った計画を立てよう。
今回紹介したポイントを参考に、納得のいく住まい探しと安心感のある新生活のスタートを目指してほしい。
■「障害者」の表記について
FRIENDLY DOORでは、障害者の方からのヒアリングを行う中で、「自身が持つ障害により社会参加の制限等を受けているので、『障がい者』とにごすのでなく、『障害者』と表記してほしい」という要望をいただきました。当事者の方々の思いに寄り添うとともに、当事者の方の社会参加を阻むさまざまな障害に真摯に向き合い、解決していくことを目指して、「障害者」という表記を使用しています。
【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」や「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。
公開日:
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