広島弁で「~してみよう!」を意味する広島県の空き家情報サイト『みんと』

総務省の住宅・土地統計調査(平成25年)によると、日本全国の空き家の総数は、この20年で約1.8倍に増加し約820万戸と報告されている。

「家が空いているなら売れば良いし、売れないなら貸せば良いのに…」とついつい素人的に発想してしまうが、これらの空き家はなかなかそう簡単にはコトが運ばない。そもそも、資産価値としてはゼロに等しい物件も多いため、一般の不動産マーケットでは「流通しにくい物件」となってしまうからだ。

そんな一般の流通市場では埋もれてしまう過疎地域の空き家にスポットライトを当て、新たな利活用を促進しようと独自の取り組みを行っているのが広島県だ。

広島県では2年ほど前から移住促進のための情報サイト『HIROBIRO.』を運営しており、「県が作った情報サイトらしからぬお洒落なサイト」として評判になっていたことは以前当LIFULL HOME'S PRESSでもご紹介したことがあるが、今年(平成29年)3月に立ち上がったばかりの『ひろしま空き家バンク みんと』も「空き家情報サイトらしからぬ読み応えのあるホームページ」としていま注目を集めているのだ。

▲市町村単位で運営されるケースが多い空き家バンクだが、広島県では県全体の空き家バンク情報を『みんと』でまとめて発信(写真はホームページ画面の抜粋)。『みんと』というのは、広島弁で「~してみよう!」という意味で、『みんと』にちなんだ爽やかなミントグリーンの画面がまず目を惹く。若い世代に受けそうな写真やイラストを多用したホームページで、専属カメラマンが旅日記風の物件紹介を行っている点も“旅行サイトのようでおもしろい”と評判だ▲市町村単位で運営されるケースが多い空き家バンクだが、広島県では県全体の空き家バンク情報を『みんと』でまとめて発信(写真はホームページ画面の抜粋)。『みんと』というのは、広島弁で「~してみよう!」という意味で、『みんと』にちなんだ爽やかなミントグリーンの画面がまず目を惹く。若い世代に受けそうな写真やイラストを多用したホームページで、専属カメラマンが旅日記風の物件紹介を行っている点も“旅行サイトのようでおもしろい”と評判だ

他の情報に埋もれない「トガった物件紹介」を目指す

▲広島県土木建築局住宅課住宅指導グループの山野内さん(左)と小崎さん(右)。「この『みんと』は“地域のことはよくわからないけど、なんとなくこの町、良さそうだな”という人へのファーストコンタクトの窓口になっています」と山野内さん。「実は、僕はこの部署に配属される前からすっと『みんと』をチェックしていて、“おもしろいサイトだな”と思って見ていたので、僕と同じように読み物として気楽に関心を持ってくださる読者の方が増えたら嬉しいですね」と小﨑さん▲広島県土木建築局住宅課住宅指導グループの山野内さん(左)と小崎さん(右)。「この『みんと』は“地域のことはよくわからないけど、なんとなくこの町、良さそうだな”という人へのファーストコンタクトの窓口になっています」と山野内さん。「実は、僕はこの部署に配属される前からすっと『みんと』をチェックしていて、“おもしろいサイトだな”と思って見ていたので、僕と同じように読み物として気楽に関心を持ってくださる読者の方が増えたら嬉しいですね」と小﨑さん

「この『みんと』を立ち上げるにあたり、いろいろな行政のホームページをチェックしたのですが、どこの空き家情報を見てもちょっと地味で暗いイメージのものが多かった…そこで、数ある情報の中に埋没しないように、“もっとお洒落にトガった感じにしたい!”と上司に相談したところ、“ちゃんと効果が出るなら”とOKをもらいました。県が作るホームページらしからぬ仕上がりだとよく言われます(笑)」

広島県の空き家情報サイト『みんと』を運営しているのは、土木建築局住宅課の山野内孝宏さんと小﨑鼓太郎さん。「単なる物件紹介だけでなく、空き家の実情もひっくるめて発信し、こういう地域があるんですが、よかったら住んでみませんか?と、もう一歩踏み込んで提案したかった」と話す。

「広島県には23の市町がありますが、そのうちの17市町で空き家バンクを運営しています。ただ、地元の人ならまだしも、県外の人たちが広島への移住を考えてネットで空き家を探す場合は“広島・空き家”とキーワード検索をします。すると、知名度の低い市町の物件はダイレクトにヒットせず、せっかくの情報が埋もれてしまうんです。

そこで、市町の空き家バンクをひとくくりにした総合サイトを作り、圧倒的な知名度を誇る『広島県』を窓口にすることで、市町の空き家バンクを支援していこうということになったのです。まずは、広島県のサイトから各市町の窓口へつなげる仕組みです」

閲覧数は増えたが、登録物件数をいかに伸ばしていくか?が今後の課題

確かに、空き家情報の発信をおこなっている自治体は近年増えているが、移住情報のホームページの隅っこに空き家バンクのリンクバナーが貼られている程度だと、なかなかその次のアクションを起しにくい。しかし、県内の空き家情報のトピックスがひとつのページに取りまとめられ、『普通の家』『古民家』『間取りがやばい家』『驚きの坪単価』などユニークなジャンルに振り分けられていると、ついつい「どんな家なのか?」と詳しい情報を覗いてみたくなる。

ページビューは徐々に増えており、月間約3万9000PV。約7割が県外からのアクセスで、月に4件程度は各市町への問い合わせなど具体的なアクションにつながっているという。これは立ち上げから半年ちょっとの空き家情報サイトとしては上出来の数字だそうだ。

「現在『みんと』の中で紹介している空き家は約200件。この登録数は他の自治体の空き家バンクと比較してみても圧倒的に多い件数なのですが、広島県下の潜在的な空き家の数を考えるとまだまだ登録数が足りません。登録物件の数をどうやって伸ばしていくか?が今後の課題です」

▲『みんと』の中で紹介されている北広島町の『お試し賃貸住宅』の一例。1日1000円、1週間から“体験生活”ができる。『みんと』で紹介している空き家の賃貸住宅は月額3万円程度と格安物件が多いのが特徴だが、単に「住まいを安く借りる」だけで終わってしまうことのないよう、各空き家担当の地元サポーターがお世話役となって、入居者と地域の人たちとの円滑な交流を進めている▲『みんと』の中で紹介されている北広島町の『お試し賃貸住宅』の一例。1日1000円、1週間から“体験生活”ができる。『みんと』で紹介している空き家の賃貸住宅は月額3万円程度と格安物件が多いのが特徴だが、単に「住まいを安く借りる」だけで終わってしまうことのないよう、各空き家担当の地元サポーターがお世話役となって、入居者と地域の人たちとの円滑な交流を進めている

登録が進まない理由は『心理的要因』が大きい

▲『お試し賃貸住宅』の一例(北広島町)。農村が広がる広島県北部には豪農の立派な空き家も多く、伝統ある日本家屋での暮らしを体験することもできる。「空き家バンクの登録が進んでいるのは、都心部よりも過疎化が進んだエリア。“人が増えてほしい”という切実な問題を抱え、それをちゃんと“認識”している地域は、新しい居住者を受け入れてくれる傾向にあります」▲『お試し賃貸住宅』の一例(北広島町)。農村が広がる広島県北部には豪農の立派な空き家も多く、伝統ある日本家屋での暮らしを体験することもできる。「空き家バンクの登録が進んでいるのは、都心部よりも過疎化が進んだエリア。“人が増えてほしい”という切実な問題を抱え、それをちゃんと“認識”している地域は、新しい居住者を受け入れてくれる傾向にあります」

「この『みんと』を見てくれる人が増えても、そもそもの受け皿となる“良い空き家”の登録が増えないと意味がありません。

家主がほったらかしにしておく時間が短ければ短いほど“良い空き家”と言える可能性が大きいですから、できれば本当の空き家になる前の早いタイミングで、空き家バンクへの登録を検討していただくよう啓蒙活動を進めたいですね。

家主の方が心身ともに健康でお元気なうちじゃないと『住まいの終活』はなかなかできませんから…」と山野内さん。

しかし、空き家バンクへの登録が進まない理由の大半は、実は『心理的要因』にあるという。近所や親族から「どう言われるか?」を気にしたり、先祖代々の土地を「誰かわからん人に売りたくない・貸したくない」といった理由だ。

「中には“別に家をほっといても、誰も困らんからいいだろう”と結論を先延ばしにしてしまう方もいらっしゃるのですが、こうした心理的要因を抱える人たちに対しては、『地域に空き家が増えるとどうなるでしょうか?』『建物が寂れてしまうだけでなく、治安や防災面でも大きな問題につながる可能性があります』ということを説明する必要があるのではないかと思います。

また、心理的要因の他には『そもそも未登記の物件である』とか『片付け費用が出せない』などのお金の問題もあって登録を阻害しているケースもありますから、そうした相談を受けたときに、実際の空き家バンク担当窓口でもある市町の職員の方たちがどう対応するれば良いかという勉強会を定期的に行い、空き家に関する知識を深めるように努力しています」

山野内さんも小崎さんも『みんと』の取材に同行して空き家現地へ足を運ぶ機会が増えたため、地元の人たちに直接空き家登録の大切さを伝えたり、空き家登録の協力者を募ったりと地域とのつながりを大切に育んでいるという。長年暮らしてきた愛着ある住まいを貸す・売ることに抵抗がある人の理解を得るためには、こうした草の根的な活動も必要なのだ。

空き家をつくるのも、生かすのも、最終的には『人』

▲『お試し賃貸住宅』の一例。「ひとりでも多くの人に『みんと』を見てもらい、広島での暮らしに関心を持ってもらうことが目標です。今後は360度のパノラマカメラを導入したりして、もっと詳しく物件の魅力を発信していきたいですね」と山野内さん。民間の不動産ポータルサイトも顔負けの充実コンテンツを目指している▲『お試し賃貸住宅』の一例。「ひとりでも多くの人に『みんと』を見てもらい、広島での暮らしに関心を持ってもらうことが目標です。今後は360度のパノラマカメラを導入したりして、もっと詳しく物件の魅力を発信していきたいですね」と山野内さん。民間の不動産ポータルサイトも顔負けの充実コンテンツを目指している

「実は、“空き家を使ってお店を開きたい”というご要望も増えているのですが、いざお店をやろうとすると、建築基準法、消防法などの規制にかかってしまうことがあり、我々の知識だけでは解決できないケースが多いのです。そのため、地域の専門家の方たちのアドバイスを受けながら、適切な活用方法を一緒に考えていくことも大切だと感じています」

最終的に、空き家の利活用に欠かせないものは『人のネットワーク』だと山野内さん。

「あそこに良い空き家があるよ」と地域の中に埋もれている空き家を見つけてくれるひと、「どうやったらこの空き家を使えるか?」についてアイデアを出してくれるひと、それを広く県内外に発信してくれるひと、そして「この地域に住んでみたい」と思ってくれるひと、これが地域にとって“欲しい人材”だ。

「空き家をつくってしまうのも、それを生かすことができるのも『人』なんです。『みんと』を通じて、こうした人材のネットワークも広がり、“広島県オール”で空き家の利活用を活性化できたらうれしいですね」

広島県では、今後空き家の利活用促進に係る人材育成も進める予定だという。地方行政の中でも突出して“トンガった空き家活用”に力を注いでいる広島県。全国の空き家バンクの良きお手本となるかどうか…これからの『みんと』の展開に注目したい。

■取材協力/ひろしま空き家バンク みんと
http://minto-hiroshima.jp/

2017年 12月18日 11時05分