増加傾向の重要犯罪

「ストーカー」「裏バイト」――。最近は、犯罪に関する比較的新しい言葉をよく耳にする。同時に凄惨な事件のニュースが流れて、耳をふさぎたくなった人も多いのではないだろうか。警察庁「令和4年の犯罪情勢」によると、刑法犯の認知件数は2002年の285.4万件をピークに下がり続けていた。しかし最新のデータである2022年は、戦後最小であった2021年の56.8万件から約5.8%増加して60.1万件となっている。そのなかでも特に注目したいのが、殺人や強盗といった重要犯罪の増加だ。2021年では8,821件だったが、2022年には9,535件と約8.1%も増えている。

このような犯罪の話をすると、「うちは中高層マンションだから安心」といった声も聞く。しかし、決して楽観視してはいけない。警視庁の「東京の犯罪(2022年版)」を確認すると、侵入強盗の発生場所の17.8%が4階建て以上の中高層住宅だった。これは一戸建て住宅(13.3%)を上回る数字だ。

そこで気になるのが地域の治安だろう。住まい選びの際に、治安のよい地域を探す人は多いはずだ。治安のよい地域を探すには、各都道府県が作成している「犯罪発生マップ」が役立つ。これは過去一定期間に発生した犯罪の件数を、サイト上でエリア別に数値や色分けして示したものだ。今回は「警視庁犯罪情報マップ」(東京都)を例に、「犯罪発生マップ」からわかることと使い方を解説する。

減少傾向だった刑法犯の認知件数は、2022年(令和4年)に増加に転じた(出典:警視庁「令和4年の犯罪情勢」)減少傾向だった刑法犯の認知件数は、2022年(令和4年)に増加に転じた(出典:警視庁「令和4年の犯罪情勢」)

わかることは「前兆事案情報」「アポ電情報」「犯罪情報」の3つ

「警視庁犯罪情報マップ」でわかることは、大きく分けて「前兆事案情報」「アポ電情報」「犯罪情報」の3つだ。

「前兆事案情報」は、子どもと女性に対する声かけ・つきまといの発生情報。「アポ電情報」は、いわゆる「オレオレ詐欺」などの発生情報。「犯罪情報」は、侵入窃盗や車上ねらいといった刑法犯の発生情報だ。

これらの情報を「統計情報」と「メールけいしちょう配信情報」に分けて確認できる。「統計情報」とは、一定の期間内に「どこで」「何が」発生したのか地図上で示すものだ。

「メールけいしちょう配信情報」とは、警視庁がタイムリーにメールで発信している犯罪発生情報だ。登録者は、「2023年3月19日(日)、午前8時40分ごろ、文京区湯島3丁目付近で強盗事件が発生しました」といったリアルな情報を受け取ることができる。「警視庁犯罪情報マップ」では、過去にどこの、どのような情報が発信されたかマップ上で示す。

前兆事案情報の例。女性への被害と子どもへの被害を分けて表示する前兆事案情報の例。女性への被害と子どもへの被害を分けて表示する

「警視庁犯罪情報マップ」の使い方

この3つの情報を以下の流れで絞り込むことができる。

①地域を指定

上部の検索窓から知りたい地域を指定する。入力するのは区市町村はもちろん、学校名や施設名でも可能だ。たとえば「東京ドーム」「上野動物園」といった施設名を入力すれば、その場所を中心とした犯罪情報が地図上に表示される。

②データ期間を指定

確認したい犯罪の発生時期を指定する。期間は今年、前年、時系列(過去約2年のうちの1ヶ月間)から選択できる。

すると「統計情報」の場合は、地図が地域ごとに犯罪の発生件数によって薄い黄色からオレンジ色の5色に色分けされる(「アポ電情報」「犯罪情報」の場合)。また「メールけいしちょう配信情報」の場合は、犯罪の発生場所付近にメールのマークが表示され、クリックすると上記のような内容を確認できる。

さらに地図表示を切り替えることもできる。選択肢は、「Googleマップ」「Googleモノクロマップ」「Open Street Map」「地形」「航空写真」の5つだ。そのうえで、地図上に警察施設や区市町村境界を表示することも可能だ。

「メールけいしちょう配信情報」の例。メール配信された詳細な犯罪情報が地図上に表示される「メールけいしちょう配信情報」の例。メール配信された詳細な犯罪情報が地図上に表示される

実際に使ってみた感想

実際に使い勝手を確認してみた。調べたのは「犯罪情報」。犯罪の種別は、「全刑法犯」「侵入窃盗」「車上ねらい」「自動車盗」「オートバイ盗」「自転車盗」「万引き」「特殊詐欺」「置引き」「部品ねらい」「路上強盗」「ひったくり」の12種類から選択できる。

まず、東京都全体を表示し、「全刑法犯」を確認した。すると23区はすべていちばん件数が多いオレンジ色に染まった。しかし都下はまだら模様に。区市町村によって人口が違うので、これで「あの市より、この市のほうが治安がいい」とは言えないが、犯罪の発生状況を俯瞰して確認できるのは興味深い。さらに地図を拡大し、各区画をクリックすると、丁目単位でその年に発生した犯罪の件数が表示された。黄色い地域は自転車盗など比較的軽い犯罪ばかりだが、オレンジ色の地域は侵入窃盗など重い犯罪が表示されることが多い。

このような発生件数の確認は、「侵入窃盗」だけといったように事案ごとに表示することも可能だ。また、地図表示をGoogleマップから航空写真に切り替えることで、「なるほど、こういう街並みだから車上ねらいが多いのか」といったことも予想できた。

東京都全体の「全刑法犯」を確認すると、区市町村によってまだら模様になった。色が濃くなるほど犯罪件数が多いことを示す東京都全体の「全刑法犯」を確認すると、区市町村によってまだら模様になった。色が濃くなるほど犯罪件数が多いことを示す

引越し先選びに役立つ!

警視庁ホームページでは、「警視庁犯罪情報マップ」のほかに、さまざまな犯罪を防ぐ方法も公開している。たとえば子どもの安全については、「いかのおすし」の徹底を呼びかけている。

「いかのおすし」とは、ついて「いか」ない、車に「の」らない、「お」おごえをだす、「す」ぐにげる、おとなの人に「し」らせる
だ。

また、防犯性能の高い建物部品の紹介など、侵入窃盗の防犯対策なども紹介している。仮に賃貸住宅へ住み替えする場合でも、これらの部品や設備の有無を確認することは防犯上有効だ。ない物件を気に入ったなら、オーナーへ設置を依頼してもいいだろう。「警視庁犯罪情報マップ」によって引越し先を選択し、その地域に合わせた防犯対策を行えば、より安全度は増すはずだ。

「警視庁犯罪情報マップ」は、非常に使いやすく、わかりやすかった。ただしそれはパソコン版で、スマホ版の操作性は、やや難あり。いずれにしてもこのようなサイトは、引越し先選びに役立つはずだ。使い勝手は異なるものの、ほとんどの都道府県にもあるので、ぜひ確認してほしい。

スマホ版もある。だが、どこにどのボタンがあるのか直感的にはわかりにくく、操作性はパソコン版に劣るスマホ版もある。だが、どこにどのボタンがあるのか直感的にはわかりにくく、操作性はパソコン版に劣る

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