多摩川、尾根幹コースに近いことからサイクリスト向けに

複数の建物を利用しており、Living-Garageと他の建物は繋がっていないが、それ以外は繋がっている複数の建物を利用しており、Living-Garageと他の建物は繋がっていないが、それ以外は繋がっている

Panoma Park(パノマパーク)を運営する株式会社Panomaは、家具店(当時はヨシノ家具)として東京都調布市でスタートした。現在Panoma Parkとして使われているのはその当時、店舗や倉庫、その他として使われていた建物。それを、現在はリノベーションなど内装を手掛けている同社が改装し、自転車好きの女性に向けたシェアハウスを中心にした複合施設として再生した。

建物は敷地内に4棟ある。当時、店舗として使われていた真ん中の1棟は、現在デイサービス施設として使われており、改装されたのはそれ以外の3棟。きっかけとなったのは2021年春の、現在はシェアハウスに改装された一番北側の建物2階に入っていた施設の退去だ。

入居していたのはNPO法人ファミリーハウスが運営する、重い病気の子どもとその家族のための滞在施設「かんがる~の家」。小児慢性特定心疾患を持つ子どもたちが家を離れて長期入院する場合に付き添う家族の負担を軽減するために、1993年に国内初の施設として造られたそうだ。

「近年は各種宿泊施設、滞在施設も増え、役目を終えたということでしょうか、クローズすることになり、その跡をどうしようかと考えたとき、以前の間取りをそのまま生かせるということでシェアハウスという案が出ました」と同社DM部グループリーダーの掛谷亮太さん。

複数の建物を利用しており、Living-Garageと他の建物は繋がっていないが、それ以外は繋がっているもともと個室+共用部という作りだったため、シェアハウスにするにも間取り変更がなく、主に内装に手を入れた

「ただ、どうせ造るならターゲットを絞る必要があるだろうと社内でいろいろな案を検討。サイクリングコースのある多摩川に近いこと、サイクリストには有名な尾根幹コース(調布市から町田市を結ぶ南多摩尾根幹線)の入口が2~3キロ先にあること、近くにトライアスロンチームがあって近隣に自転車に乗る人がいることなどを考慮し、自転車好きの女性をターゲットにすることにしました」(掛谷さん)

また、他に倉庫として使われている建物も併せて複合施設とすることで場を魅力的にしようという考えから、シェアハウス以外に3つのスペースが生まれることになった。順にご紹介していこう。

複数の建物を利用しており、Living-Garageと他の建物は繋がっていないが、それ以外は繋がっている他に自転車をテーマにした物件がないかを探してみたところ、あまりないことが分かり、それも決め手のひとつとなったそうだ

地域に開かれたラウンジ、ドッグラン

広いウッドデッキがあり、建物と一体として使えるようになっている広いウッドデッキがあり、建物と一体として使えるようになっている

京王線調布駅から武蔵境通りを行くと最初に目に入るのはウッドデッキのある平屋の建物。Living-Garageと呼ばれる地域に開かれた誰でも利用できる施設で、キッチン、トイレ、エアコンに自動販売機が用意されており、Wi-Fiも使える。

「もともとの倉庫の雰囲気を生かして天井その他はそのまま、塗装しただけで使っています。大きく変えたのはウッドデッキ側。壁だったところを全面開けられるようにし、ウッドデッキと一体化して広い空間として使えるようにしています」

周辺は住宅街で店舗なども少ないため、買い物の行き帰りに一息つくために利用する人などが多く、カフェをやって欲しいという要望もあるとか。シェアハウスの居住者にとっても朝の6時半から20時まで無料で使える場がすぐ近くにあるのはありがたい限り。

広いウッドデッキがあり、建物と一体として使えるようになっている開放して使うとこんな感じ。アウトドアリビングという言葉がぴったり
キッチン、トイレ、自販機、テーブルなどが用意されており、一休みはもちろん、ちょっとパソコンを開いて作業、ということも可能。こちら側にも絵が飾られているキッチン、トイレ、自販機、テーブルなどが用意されており、一休みはもちろん、ちょっとパソコンを開いて作業、ということも可能。こちら側にも絵が飾られている

Living-Garageに飾られているのはNPOファーストステップに所属する障がいを持つ方たちの描いた絵。年に3~4回程度テーマを変えて展示しているそうで、取材時のテーマは空。自由な筆致がなんとも楽しげである。

また、リビングテラスの隣にあるデイサービスの脇にはドッグランが設けられており、ここも地元の人が自由に使える空間となっている。

他の建物へはリビングテラスの後ろを通って向かう。まず、一番手前にあるのが会員制のラウンジ&サイクルピットSTAIRS。1階が作業場、2階がラウンジとなっており、自転車の手入れをしたり、仲間と集まったりするための場となっている。トレーニング後のためにシャワー室、更衣室に鍵付きロッカーが設置されている。雨の日にもトレーニングできるキッカーローラーも2台用意されている。

広いウッドデッキがあり、建物と一体として使えるようになっている地域に開かれたコンパクトなドッグラン

会員制の自転車メンテナンススペースにラウンジ

建物の前に設置された水道で自転車の汚れを落とし、室内のコンプレッサーを利用して乾かせるようになっている建物の前に設置された水道で自転車の汚れを落とし、室内のコンプレッサーを利用して乾かせるようになっている

外部利用は会員制で月額3,300円(税込)というSTAIRSだが、シェアハウス居住者はここを無料で使える。後でご紹介するが、シェアハウス内にも広いラウンジがあることを思うと、2ヶ所の雰囲気の違う空間を利用できるわけで、これは他のシェアハウスにはない特徴だろう。

日曜日には工具を備えた施設1階で自転車整備の専門学校に通う、メンテナンスに詳しいスタッフ・村中洋輝さんが整備のサポートをしてくれる。個人で全部揃えるにはちょっと躊躇する工具が揃っており、そこに詳しい人がいれば鬼に金棒。大事な自転車を安心して整備することができるだろう。

「外で洗車後、建物内のコンプレッサーで乾かすことができるようになっているのも利用者には好評です」と村中さん。

隣の建物にはトランクルームNESTがある。ここは基本的には自転車やメンテナンスに必要な道具などを置いておくことを想定したもの。0.9m2から4.5m2までのスペースが用意されており、24時間利用できる。利用料金は月額料金6,270円(税込)~。自転車以外にも利用できる。

建物の前に設置された水道で自転車の汚れを落とし、室内のコンプレッサーを利用して乾かせるようになっているメンテナンススペース全景。天井の高いスタイリッシュな空間だ

2階のラウンジには大型プロジェクターが備えてあり、自転車仲間が集まってレースを一緒に観戦するなどの利用が多いとか。もちろん、自転車絡みでなくても、映像を眺めながらみんなでわいわいというのも楽しいはず。広さは46m2。10数人集まれるほどの広さがある。ヨガマットも用意されている。

建物の前に設置された水道で自転車の汚れを落とし、室内のコンプレッサーを利用して乾かせるようになっている2階ラウンジの天井。元倉庫だった雰囲気を残した改装になっている
建物の前に設置された水道で自転車の汚れを落とし、室内のコンプレッサーを利用して乾かせるようになっているラウンジ全景。壁の白い部分はスクリーンとして使えるようになっている

小さな工夫が複数凝らされたシェアハウス

家庭的な雰囲気の玄関。もともとがわが家を離れていても寛げるようにと作られた場所だったためだ家庭的な雰囲気の玄関。もともとがわが家を離れていても寛げるようにと作られた場所だったためだ

2階のラウンジから通路を通って隣の建物2階がシェアハウスESTALIST。もともとが滞在施設だったため、個室7室とキッチンのある広いラウンジ、水回りなどの配置はほぼそのまま。内装、インテリアは居住者となるサイクリストを意識したものになっている。

部屋の広さは8.4m2から10.2m2で約5畳から約6畳くらいと考えると分かりやすい。賃料は3万8,000円~4万8,000円。共益費・管理費は全室1万7,000円となっている。室内は部屋ごとに壁紙が異なり、それがアクセント。近くを走る中央道に面した部屋は音に配慮、2重窓になってもいる。

家庭的な雰囲気の玄関。もともとがわが家を離れていても寛げるようにと作られた場所だったためだ部屋ごとに異なるアクセントクロスが貼られている。アーティスティックなものもあれば、夕日を思わせる癒し系までさまざま
リビングにあるトイレ、シャワーブースなどの使用状況を示すランプ。良いアイデアだと思うリビングにあるトイレ、シャワーブースなどの使用状況を示すランプ。良いアイデアだと思う

面白いのは各室のドア脇に用意されたStay、Okayとランプがつくようになっている黒いボックス。室内からスイッチを入れることができ、在室している、話しかけてもいいよという意思表示ができるようになっているのだ。同様のボックスはリビングにもあり、こちらは浴室、シャワーブース、トイレの利用状況を表す。浴室まで行かなくても利用状況が分かるようになっているのである。

廊下を抜けた先の左にあるのがキッチンのある45m2ほどのLDK。リビングを取り囲むようにバルコニーがあるため、明るく、開放的なのが特徴。居住するのが7人と考えるとそれ以上に余裕のある広さである。キッチン、ダイニング、リビングとそれぞれの場所にスツール、椅子、ソファが用意されており、好きな場所で寛げるようになっている。

リビングに各個人用の収納ボックスが用意されているのもアイデア。シェアハウスでキッチン、浴室に個人用収納スペースが設けられているのは一般的だが、もうひとつ、リビングにもあれば寛ぎタイムに使う小物類、読みかけの本、コーヒータイムのおやつその他いろいろなものが置けそうである。

家庭的な雰囲気の玄関。もともとがわが家を離れていても寛げるようにと作られた場所だったためだ7人で使うと考えるとかなりゆったりしたリビング。コーナーごとに雰囲気が異なる

自転車好きが集まる場としての活用を

自然光の入る明るい洗面所。朝から光が入るのはうれしいポイント自然光の入る明るい洗面所。朝から光が入るのはうれしいポイント

リビングと反対側に配されているのは水回り。こちらも洗面所に窓があって明るい空間となっている。化粧は自然光の下でするのがベストと言われるが、まさにそうした場所である。奥にはバスルーム、シャワールームが各1室に洗濯機、乾燥機が各1台。トイレは2ヶ所用意されている。内装を手掛ける会社がリノベーションをしただけあり、深いブルーの床、黒を基調した照明などスタイリッシュなインテリアも特徴だ。

入居条件は女性でかつサイクリングやランニング、トライアスロンなどをやっている、またはこれから始める人というもの。そうした人に認知してもらうため、STAIRSを利用して自転車関連のイベントなどを開催しているそうで、講師として国内外のMTBレースにメカニックとして帯同した経験を持つSpike佐藤氏、競輪でS級選手として活躍した高橋大作氏、自転車競技者として活躍後サイクルトレーナーとして活動している高橋秀作氏、トライアスリートとして数々の大会で優勝を果たした河原勇人氏など著名な方々が登場している。

自転車好きの集まる場となりつつあるが、もっと広く使われるようになってもらいたいところだ自転車好きの集まる場となりつつあるが、もっと広く使われるようになってもらいたいところだ

「今もLiving-Garageはツーリングの集合場所として使われていますが、今後はもっと近隣の自転車好きが集うような場所になればいいと思っています。集合するだけでなく、イベント利用などもできるので、どんどん使われてほしいところです」と掛谷さん。これまでにはバザー、各種ワークショップ、ママ友の集まりなどに使われてきたそうだ。

せっかく地域のためにと作られた場である、ご近所の方々、自転車好きなら一度は訪れてみる、利用してみるのもいいと思う。

個人的にはキッチンに多数飾られていたグラスに心を動かされた。IH3口の広いキッチンには食器類、鍋類も用意されており、明るいキッチンでの料理は楽しそう。スポーツ、食事で健康になりたい人にはお勧めである。

自然光の入る明るい洗面所。朝から光が入るのはうれしいポイントキッチンにはグラスだけでなく食器もいろいろ用意されており、自炊する人にはうれしい

公開日:

ホームズ君

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