長谷から由比ガ浜の通り沿いで、お弁当箱に総菜を詰めつつまち歩き
2022年1月30日日曜日、風情ある江ノ島電鉄の長谷寺駅付近に位置する2022年秋にオープン予定の古民家をスタートし、昔ながらの趣の残る建物を生かした飲食店や雑貨店などが立ち並ぶ由比ガ浜通りをまち歩きしながら、オリジナルのお弁当を完成させる「OBENTOプロジェクト」が開催された。
参加者たちは空のお弁当箱を手に、主催者に案内してもらいながら、通りに点在するさまざまな飲食店や総菜店に立ち寄って好みの総菜を選び詰めていく。事前に主催者が、和食や洋風惣菜店、パン屋、カフェ、老舗のかまぼこ店など幅広いバリエーションの店に声を掛けて協力を仰ぎ、今回の企画が実現した。ゴール地点は由比ガ浜通りの入り口・下馬交差点付近にあるコミュニティスペース「THE ENTRANCE YUIGAHAMA」に設定された。
密を避けるため参加者たちは4つに分かれ、筆者は女性2人、男性1人のグループに加わった。女性のうちふたりは比較的距離の近い藤沢から参加、男性は昨今、このあたりに越してきたそうだ。完成したお弁当を食べながら、今回歩いた由比ガ浜通りについて、感想を聞いてみた。
「(由比ガ浜通りは気になっていたが)足を止める機会はなかった。このようなイベントだと実際に店に入り、中の様子を目にすることができるのがいい」(Nさん)
「(お弁当箱に総菜を詰めてもらったり話したりして)お店のご主人たちのことをもっと知りたくなった。(通りを眺めながら)歩いているとまちや人、歴史にも興味がわいてくる」(Iさん)
スタート地点は、オープン前の移築した古民家
イベントの主催は、由比ガ浜通りに不動産や設計、場づくりのコンサルティングなどの関連会社をもつ株式会社エンジョイワークスと、これから当該地域に拠点を移す予定の株式会社テラだ。そして、スタート地点の古民家も、そしてTHE ENTRANCE YUIGAHAMAも、テラがエンジョイワークスの協力を得つつ、活動拠点として準備を進めている建物だ。
古民家は元割烹で、数年間空き家だった。「(合掌造りの)古民家を移築したと聞いています。屋根裏部屋の現しの太い梁などにその名残を感じます」とこのイベントの企画・運営を担ったエンジョイワークス事業企画部の長澤愛美さんは話す。
今後、テラの拠点として建物のリノベーションなどの計画を進め、2022年秋にはグランドオープンの予定だという。
「テラが横浜から鎌倉に拠点を移すに当たって、ワークスペースについて、地域の方々や観光客と交流できるような形をご希望でした。ですので、元割烹という規模の大きな建物の利用を提案。オフィスに限らず、自由に交流できるようなカフェやレンタルスペースなども併設予定です」(長澤さん)
地域の盛り上がりを目指し、場とイベントの一体企画を提案
2022年2月5日、「THE ENTRANCE YUIGAHAMA」は、テラの拠点として先んじてオープンした。こちらも地域との交流を促す工夫を盛り込んだ施設である。由比ガ浜の入り口=entranceに当たる場所であるため、このような施設名を発想した。
「テラの皆さんもエンジョイワークスも同様に、由比ガ浜通り付近に複数の拠点を持ち、根を下ろし始めました。ならば、この通りを地域の皆さんと一緒に盛り上げていきたい、そうすることで地域も私たちもともに成長していけるのではないか、と考えています」と、エンジョイワークス事業企画部の世良信一郎さんは話す。
冒頭で紹介したOBENTOプロジェクトもその一環だ。コロナ禍以降、来訪者が減ったこの通りで、地域内外の人たちが食を楽しむイベントを継続的に行い、多くの人に改めて通りそのものを知ってもらい、盛り上げたいという。鎌倉・小町通り付近に滞留しがちな観光客なども、魅力ある店が多い由比ガ浜通りまで誘引するきっかけにしたいとする。
地域と、地域でチャレンジする人をサポートしたい
地域を盛り上げるために、THE ENTRANCE YUIGAHAMAと今後オープン予定の古民家双方のコンセプトにはいずれも「地域でチャレンジする人をサポート」を掲げた。
ではここから、同施設について詳しく紹介していこう。奥に長い75m2のスペースにあえて仕切りは設けずに複数の“場”を配置し、それぞれでの活動も来場者同士の交流も促せるようにしている。入口付近はカウンターつきのキッチンを設けた。飲み物や食べ物などを販売するほか、利用開始から3ヶ月は1時間当たり1,000円(税込)と格安で時間貸しも行う“チャレンジキッチン”でもある。希望者が少しの時間でもお店を開いたり、料理教室を開催できるように企画した。
「これからこのまちで出店したい人が、ここで腕試しをするイメージです。最初から起業するのはハードルが高いので、まず小さなビジネスで感触を確かめる」(世良さん)
施設完成後に行った現地見学会で、すでに使用希望の申し出があったという。
スペースの中ほどには、ギャラリー&カフェ。壁面の棚に飾られた地元のアーティストやクリエイターの作品を眺めながら、飲食できるスペースだ。実は棚は「チャレンジボックス」で、希望者が借りて作品や商品を飾りPRできる。1ボックスのレンタル料は一ヶ月当たり3,000円(税込)だ。
そして奥にはレンタルスペース。場所を借りて教室やイベントを開催するほか、このレンタルスペースとキッチンを同時に借りて、ホームパーティをするなどの使い方も想定している。そのほか、地域の方々と一緒に、定期的に子ども食堂を開催する計画もあるそうだ。
「地域の方々と一緒に、子育てのサポートや多世代交流を図れるような使い方を目指しています」(世良さん)
地域の方々を巻き込んだTHE ENTRANCE YUIGAHAMAでの活動は、コミュニティが広がるにつれ、盛り上がっていきそうだ。また、OBENTOプロジェクトは参加者や協力店の声を吸い上げてブラッシュアップし、4月以降、並行して定期的に開催予定。
「私たちの事業のひとつ、不動産業はまち形成の原点でもあります。まちに関わるからには、盛り上げるための(日々の暮らしの中での)実践も大切にしていきたい」と世良さんは結んだ。
■協力
株式会社エンジョイワークス https://enjoyworks.jp/
株式会社テラ https://www.terracom.co.jp/
公開日:













