鎌倉を盛り上げるために。2018年4月、働く人を応援する食堂と保育園をオープン

上/鎌倉の人気店のメニューが週替わりで楽しめる「まちの社員食堂」 下/「まちの保育園」外観上/鎌倉の人気店のメニューが週替わりで楽しめる「まちの社員食堂」 下/「まちの保育園」外観

「あのまちに住んでみたい」。そう考えた時に気になるのは何だろうか?暮らすための物件はもちろんのこと、仕事の有無、共働き夫婦に必須ともいえる保育園、会社や学校までの通勤・通学時間などを気にする人が多いのではないだろうか。仕事をしている人にとって、職住近接はやはり魅力的である。

職住近接の実現、また働く人々を応援したいと、2018年4月16日に鎌倉にオープンしたのが「まちの社員食堂」。インターネット関連の事業をメインで行い、鎌倉に本社を置く面白法人カヤック(正式社名/株式会社カヤック:以下カヤック)が運営を行う。鎌倉の人気店のメニューを週替わりで楽しめるこの食堂は、自社社員への福利厚生に加え、地域で働く人に利用してもらいたいとつくられたという。「まちの社員食堂」オープンのわずか半月前には、社員のほか鎌倉に住む人や働く人のために「まちの保育園 鎌倉」をオープンさせたカヤック。その想いやコンセプトなどを、同社の渡辺さんと植杉さんにお聞きした。

福利厚生+ビジネスのための出会いの場としても期待される「まちの社員食堂」

「まちの社員食堂」は、40ほどの鎌倉の人気店のメニューを週替わりで楽しめる食事処。同社社員とフードコーディネーターが合同で、出店して欲しい店舗をリストアップし、各店へ話を持ち掛けたという。

鎌倉は言わずと知れた一大観光地。仕事中にちょっとランチに出かけても1,000円を超える店が多く、毎日働く人にとって決しておサイフに優しいまちではないという。そこで同社は「美味しくて栄養があるものを、手頃な価格で食べてもらいたい」と、自社社員の福利厚生のために「まちの社員食堂」をオープン。

「まちの社員食堂」は、鎌倉市内で働く人なら誰でも利用できる。店のオープンに賛同し、月会費を支払う会員企業の社員は1割引で食事ができ、会員企業の福利厚生にも貢献している。鎌倉には社員食堂を持つ企業が少なく、鎌倉市役所も月会費を支払いこの店を利用しているそうだ。

さらに、「まちの社員食堂」のオープンは、福利厚生のほかにも大きな目的があった。
「鎌倉が発展し、より豊かなまちになるための、鎌倉で働く人々の出会いの場の提供です。様々な業種の方がこの店でご一緒した縁から、新たなビジネスチャンスが生まれることを期待しています」と渡辺さん。

そこには、カヤックをはじめ様々な企業が独自に鎌倉を盛り上げようとするのではなく、鎌倉でビジネスを行う会社が手をつなぎ、より大きなビジネスや鎌倉を豊かにするビジネスを行いたいという狙いがあったという。現在、「まちの社員食堂」が縁となった人のつながりも生まれており、そのつながりをもっと大きくしていきたいと渡辺さんは話す。
「鎌倉市の人口は約17万人。働く人の多くが東京都内や横浜市に通勤しています。遠くまで通うのではなく、鎌倉で仕事を創出し、鎌倉で暮らす人が鎌倉で働ける、職住近接のための取り組みにも力を注ぎたいと考えています」

そのひとつが、次段落で紹介する「まちの保育園 鎌倉」の事業化である。

地元の食材をふんだんに使った「まちの社員食堂」のランチは900円。朝食は600円、夕食は1000円で食事ができる。</br>「ランチだけでなく、朝や夜も利用できることをアピールしていきたいですね」と渡辺さん地元の食材をふんだんに使った「まちの社員食堂」のランチは900円。朝食は600円、夕食は1000円で食事ができる。
「ランチだけでなく、朝や夜も利用できることをアピールしていきたいですね」と渡辺さん

社員の福利厚生&地域貢献のために保育園をオープン

「まちの社員食堂」ができる少し前、2018年4月1日に開園した「まちの保育園 鎌倉」。内閣府から助成金が支給される「企業主導型保育事業」を国が進めるにあたり、その仕組みを利用したものだ。都内にある「まちの保育園」代表の松本理寿輝氏が鎌倉に住んでおり、カヤックの柳澤大輔氏と知り合いだったご縁により生まれた。カヤック社員の平均年齢が30代になり、子育てに配慮する必要が出てきたこと、さらに鎌倉で働きたくても子どもを預けられる場所がないという問題を解消し、鎌倉をより暮らしやすいまちにしたいと、開園に踏み切ったのだという。

「まちの保育園 鎌倉」は、カヤックと鎌倉の企業である株式会社豊島屋(鳩サブレーが有名)が共同で設置。松本氏が経営する「まちの保育園」と連携しながら、さらに鎌倉の海や山、自由な雰囲気や文化など、鎌倉独自の文化を保育に生かすことを視野に入れて開園した。葉山町で『おうちえんTelacoya921』を運営し、カリキュラムに定評のある一般社団法人Telacoya921に運営を委託している。

「『まちの保育園 鎌倉』は、園児23名のうち約半分は、カヤックをはじめ福利厚生としてカヤックと利用契約を結んだ企業の社員の子どもを預けるための企業枠。残りの約半分が契約していなくても預けられる地域枠です。鎌倉で暮らす人や働く人のための保育園となっています」と、カヤックの植杉さん。このような仕組みを実践するために、あえて認可外保育園としている。

「鎌倉のまちの人たちにこの保育園を一緒に育てていただきたいと考え、鎌倉に拠点を置く企業様にご協力をお願いしたいと考えています。例えば、毎日外に出ながらも、園児の健康は守る。そういうことに共感いただき、現在パタゴニア様に園児が毎日かぶる帽子やレインコートを園児向けに提供していただいております。私たちの活動をどんどん外にアピールしているところで、様々な企業様とかかわりご縁を広げながら、園児を育てていきたいと考えています」

鎌倉をもっと暮らしやすい町にしたいと、あえて認可外保育園として企業枠と地域枠を設けている「まちの保育園 鎌倉」鎌倉をもっと暮らしやすい町にしたいと、あえて認可外保育園として企業枠と地域枠を設けている「まちの保育園 鎌倉」

「鎌倉の街の人にも一緒に園児を育てて欲しい」と積極的にイベントに参加

写真左から、面白法人カヤック 労務・人事部の植杉佳奈恵さん、広報・人事部の渡辺裕子さん。「まちの社員食堂」店頭で。今後、鎌倉のまちとの接点をさらに増やしながら、より魅力的にしていく取り組みに期待したい写真左から、面白法人カヤック 労務・人事部の植杉佳奈恵さん、広報・人事部の渡辺裕子さん。「まちの社員食堂」店頭で。今後、鎌倉のまちとの接点をさらに増やしながら、より魅力的にしていく取り組みに期待したい

幼稚園や保育園など、開園した初年度は様子見のため、定員がすぐに埋まらない傾向があると聞く。しかし、「まちの保育園 鎌倉」は今年春のオープンながらすぐに満員になった。
「都内にある『まちの保育園』のファンの方、葉山町で『おうちえんTelacoya921』を経営し、『まちの保育園 鎌倉』の園長を掛け持ってくださる中尾薫さんの知名度や保育の仕方に興味を持たれ、『ぜひ入園させたい』という方が多かったですね。初年度から満員となるのは、新設の園ではかなり珍しいと思います」と植杉さん。

保育園はセキュリティ面も重視しなくてはならないものの、「まちの保育園 鎌倉」では、「鎌倉のまちの人に育てていただきたい」「園の外でも活動したい」という想いから、地域の方々とのイベントに積極的にかかわるようにしている。そのひとつがボランティアスタッフとのつながりだ。

「絵本の読み聞かせなど、保育園でのボランティアを募集すると、『私たちの経験を活かして子育て貢献したい』と、50~60代の女性を中心に多くの方がすぐに手を挙げてくださいます。先日行った顔合わせでは、わらべ歌を歌える方、手芸が得意な方、織物、染め物などを教えられる方、働くお母さんに食育を考えたご飯づくりのアドバイスができるフードコーディネーターの方などが集まってくださり、園児のために何ができるかを話し合いました。元教師の方や保育士だった方もいらっしゃいましたね。鎌倉は日本でも有数のNPO法人が多い地域で、自分たちが暮らすまちを良くしたいと考える方が多いように感じています。
地域の方との積極的な交流、また目の前にある大切なこと、例えばわずかではありますが先日の西日本の豪雨被災者への募金活動など、逆に皆さんにこの保育園を俯瞰して見ていただいて、『まちが保育園をつくる』みたいなことが広まるといいですね」

「まちの社員食堂」「まちの保育園 鎌倉」ともに、鎌倉で働く人、鎌倉で暮らす人をもっと増やし、住み良い魅力的なまちにしたいというカヤックの強い意気込みがうかがえる。
カヤックでは「まちの人事部」と題した鎌倉で働きたい人を支援するウェブサイトもオープン。鎌倉ならではの魅力の発信、出会いやプロジェクトのバックアップ、子育てや仕事の支援。鎌倉に本社を置き、地域貢献を後押しするカヤックの事業と、歴史あるまち鎌倉の今後の発展に注目したい。


■まちの社員食堂
https://kamakura-shashoku.machino.co/

■まちの保育園 鎌倉
https://hoikuen.kayac.com/

■面白法人カヤック
https://www.kayac.com/

2018年 10月15日 11時05分