現代社会が抱えるゴミ屋敷問題
日常生活を送っていると、どうしてもゴミは出てしまう。物が手に入りやすい便利な社会となった分、ゴミの量が増えているといえるかもしれない。そんななかで、家がゴミであふれてしまう、いわゆる“ゴミ屋敷”は現代の切実な問題になっている。遠く離れた実家の空き家がゴミ屋敷という話も聞く。
名古屋に本社を構える株式会社Good Serviceが「ゴミ屋敷にしてしまう、なってしまう人の心理」に関する調査を実施した。対象としたのは全国の30~50代の男女1,044人で、過去に部屋を片付けられずに困ったことがある、ゴミ屋敷状態にしてしまったことがある、片付けが苦手、自宅の片付けを清掃会社などに依頼したことがあるという人々だ。
家・部屋の片付けや遺品整理、また孤独死の現場などの特殊清掃の業務を行っている同社。アンケート結果をもとにしつつ、代表取締役の山村直秀さんに話を伺った。
片付けられない理由、アンケートの結果は…
アンケートではまず初めに、自治体のゴミ収集ルールについて聞いた。すると82.5%の人が把握していると回答。
次に、不要な物が増える要因を探るため、買い物の際の行動について聞くと、「つい無駄な物まで買ってしまう」が34%と最も多かった。
そして「忙しくて片付ける時間がない」と聞くことが多いことから、「“時間がない”というのは、片付けられない原因の一つだと思いますか?」と問い掛けた。結果は、「とてもそう思う」が24.5%、「ある程度そう思う」が49.7%と、70%を超えた。
アンケートではさらに一歩踏み込んだ質問も。「片付けられないのは、“なまけ”や“だらしない”など、自分の性格が原因だと思いますか?」に、「とてもそう思う」が28.5%、「ある程度そう思う」が58.1%となった。
片付けられない要因として、「面倒臭くて毎週ごみは捨ててない。まとめてから月に何度かに分けて捨ててる。たまに捨て忘れる(30代/男性/自営業・自由業)」「時間が無いのと、片付けをし出すと徹底的にしてしまう為、する前からハードルが高くなってしまう(40代/女性/パート・アルバイト)」「部屋にあるものを把握していない。捨てる捨てないの判断ができない(50代/女性/無職)」といった意見があった。
ゴミ屋敷におけるゴミの実態
自治体のゴミ出しルールは把握していても、時間がなくて出すことができなかったり、忘れてしまったり。また、少なからず自分の性格が原因ではないかと思っていることも分かった。
アンケート結果について山村さんは「実際に片付けられないと思っている方たちがたくさんいて、片付けられない要因を自己分析されているんだなということを実感しました」と話す。
そこで、業務を通して見てきたゴミ屋敷といわれる部屋の状態の実態について聞いてみた。
「大きく分けて2パターンあります。若い方の多くは、定期的に捨てればすんだはずのゴミがどんどんたまってしまう傾向。一方、お年を召した方の場合は、新聞や日用品などの物がたまってしまっていることが多かったです」
まさにアンケートにあったように、ゴミ出しの時間をつくれないことが起因して考えられる。そのなかで、可燃ゴミ以外がたまっていた、缶と瓶だけが天井まで積み上がっていたという部屋の依頼を受けたことがあるそうだ。
環境面の観点からゴミの分別ルールは、昔と比べてかなり細かくなっている。それもゴミ出しが難しくなることの一つになっているのではないかと、ふと思った。
近隣からのクレームに発展することも
アンケートでは、「現在のゴミ屋敷レベルになってしまったきっかけとして思い当たること」についても聞いている。
「転職して帰宅時間が遅くなったことで、入浴・食事など必要なことを除いて他のことをする体力が残っていない(30代/女性/会社員)」、「物が増えすぎて収納しきれずに隅の方にいったん置き始めてから(30代/女性/パート・アルバイト)」、「子どもの頃から、家の中はなんとなくいつも散らかっていたので物がごちゃごちゃしているのが普通だと思っている(30代/女性/パート・アルバイト)」、「ゴミやすぐ使わない物をあとで片付けようと思いその辺に置いていたらどんどん溜まっていってしまった(40代/男性/会社員)」
片付けられない理由は、さまざまだ。しかし、そのままにしておいていい状況ばかりではない。
山村さんの会社で依頼を受ける際、きっかけとなるのが、引越しするとき、次いで近隣からのクレームだという。「引越ししようと思ったときに自分では手がつけられないと思った方が多いのかなと感じます。そういうこともあれば、近隣の苦情が原因のことも。本当にひどいゴミ屋敷になると玄関が閉まらなくなってしまいます。それに伴ってクレームが出て、強制的に管理会社に何とかしてくれということで。もっとひどくなると、本人では手に負えなくなって、保証人の方が代わりに清掃会社を手配するということもあります」
ゴミによる臭い、害虫の発生は、近隣の迷惑に。また親や子など、身近な人に手間をかけることにもなってしまう。
難しい問題だが、ゴミ屋敷にしない対策は…
長く放置されたゴミの片付けは、一筋縄ではいかない。食べかすや飲み残しなどによって壁や床にシミができたりカビがはえたり。ひどい場合は、埋もれてしまったさまざまなゴミが圧縮され、スコップで掻き出さないとどうにもならないこともあるそうだ。
ゴミ屋敷ではペットボトルに必ずといっていいほど飲み残しがあるという。ゴミ屋敷になっている場合は、ゴミの分別や飲み残しを捨てるなど、膨大な手間がかかるため、清掃会社などに依頼するのも一つの手だ。山村さんも「片付けを専門の会社に依頼すること自体が社会インフラ化されてきている」と語る。
片付けを依頼する場合、その金額も気になるところ。会社によって違うのはもちろんだが、ためたゴミの程度でも大きく変わるという。山村さんいわく「どんなゴミ屋敷かのパターンで変わりますね。それから部屋の広さによっても違います。かなり状態が悪い場合だと、例えば1Kで60~70万円かかることも。その金額で3DKの部屋を片付けられることもあります。最近依頼を受けた例では、3DKで90万円のところもありました」とのこと。ゴミの量、片付けにかかる日数、必要になるスタッフ人数などによって計算される。山村さんの会社のように見積りを行っているところも多いので、それで把握し、納得してから依頼先を決めるのがおすすめだ。
現場を見てきた山村さんにゴミ屋敷にしないためのヒントを伺った。「やはり、日々のゴミ捨てでしょうか。ひどいゴミ屋敷の場合、ゴミ袋にさえ詰められていないことがあります」
アンケートにも出ていたように、「やろうと思ってもできないという方たちが大半だと思うので、解決するには家事代行サービスを利用するのも手」とも。
とはいえ、取材中に「解決が難しい問題」との言葉が何度か出た。ゴミをためてしまう自覚があっても対処ができないというと、非常にセンシティブな問題もからんでいるように思われるからだ。心の病や、高齢者の場合は認知症も考えられる。
ゴミ屋敷で孤独死する人もいる。社会問題は幾重にもからみあっている。山村さんの会社では、グループ企業として「ケアパーク」という老人ホームや介護施設を紹介する業務も行っているのだが、孤独死になる前に助けることができればという思いから始めた。
しかしそこにはジレンマも。「老人ホームなどに入られる場合、実は周囲のサポートがある方なんです。本当に困っている方には手が届かなくて…」と。それはゴミ屋敷の問題にも通じることだ。
今回の対策法は小さな一歩でも、きっと解決の一つの糸口ではあるはず。周囲のサポートの必要性も強く感じた。社会全体でしっかりと考え続けていかなければならない。
取材協力:株式会社Good Service https://www.kataduke-kaitori.com/
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