東京都の人口の推移は?
2022年1月1日現在の東京都の人口は13,988,129人。前年同月比で48,592人の減少となっており、26年ぶりに人口が減少している。2021年の内訳は、他県との移動増減を示す「社会増減」は3,897人増加している。出生数と死亡数との差を示す「自然増減」は30,682人減少。都内間移動増減および出入国等を示す「その他」は21,807人減少している。
一方で、1年前の2020年においては東京都の人口は8,600人増加している。2020年の内訳は、社会増減が29,618人増加、自然増減が18,537人減少、その他が2,481人減少となっている。
出典:東京都
https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/jsuikei/2022/js221f0000.pdf
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/01/28/documents/01_01.pdf
2020年と比べると、社会増減の増加数が大幅に減少していることがわかる。
東京都は、近年は他県から流入してくる社会増によって人口が増えてきたが、社会増の数が減少したことで、全体の人口が減少するに至っている。
少し過去に遡ると、東京都も1996年1月1日時点では人口が前年比で19,001人減っており、同様に減少していた時期があった。1990年代前半はバブルのピーク時であり、都内の住宅価格が高過ぎることが原因で神奈川県や埼玉県、千葉県といった近郊3県に人口が流出していた。
バブルが崩壊すると、都内でも土地価格の下落や企業の土地放出の動きが見られるようになり、マンションデベロッパーが大規模マンション用地を取得しやすくなった。その結果、1990年代後半以降になると、都内でも手ごろな価格でマンションが購入できるようになり、都心回帰の動きが出始めるようになる。
その後も25年間都心回帰の動きは続き、東京都は2020年まで人口が増え続けたことになる。
過去の予想と実際の減少との違い
少し古い資料になるが、2016年12月に東京都が公表した「都民ファーストでつくる(新しい東京) ~2020年に向けた実行プラン~」において、当時に予想された2060年までの東京の人口推計が掲載されている。
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/actionplan-for-2020/plan/pdf/honbun4_1.pdf
当時の推計では、2015年国勢調査を基に東京都の人口のピークは2025年と予想されていた。資料では、東京都の人口は2025年の1,398万人をピークに、その後は減少が見込まれると試算されている。ピークの予想は2025年頃であったが、その予想は外れ2020年に前倒しになったということになる。
ちなみに、上記資料の2年前の2014年に公表された「東京都長期ビジョン」(2014年)では、2010年国勢調査を元に東京の人口のピークは2020年であるとピッタリ予想していた。人口の予測値は資料によって多少の差が出てしまうようであるが、いずれにしても2020年または2025年には東京の人口はピークを迎えると予想されており、概ね的中していたことになる。
よって、2021年に生じた人口減少は、全くの想定外というわけではなく、予想の範囲内の出来事といえる。
減少要因①:コロナで社会増が減少したため
東京都の人口が減少した理由は、社会増の人数が大幅に減少したところが大きい。2021年は3,897人の社会増となっているが、2020年の29,618人と比べると25,721人も減少している。
新型コロナウイルスによって、テレワークが普及したことから、部屋数を求めるニーズが増えている。都内で2DKに暮らしている人たちが仕事部屋を確保するために、近郊3県に3LDKのような広めの間取りを求めたことで転出者が増えた。
テレワークといっても、完全にリモートで完結する企業は少なく、月に数回の出社が求められるケースが多い。
そのため、東京からの転出といっても首都圏の通勤圏内にとどまっているケースが多く、「部屋数の確保」と「たまにある通勤」の2つが両立するようなエリアに人が動いているといえる。
少し広い範囲で東京をメガシティの「TOKYO」として捉えると、TOKYOには近郊3県を含み3,000万人以上の人が暮らしている。メガシティとは、主に都市圏人口が1,000万人以上の都市部を指し、TOKYOは世界最大のメガシティとされている。東京都というのは人が作った行政上の境界であり、TOKYOの自然に生まれた境界とは異なる。
テレワークの普及によって「東京の人口が減った」というよりは、「TOKYOで部屋数のニーズが増えた」と捉えた方が実態に近いかもしれない。「部屋数と価格」のバランスの取れた物件が、たまたま東京都の行政上の境界の外に存在していたため、東京都からは転出した人は多いがTOKYOから転出した人は少ないといえる。
減少要因②:東京都の住宅価格が高いため
「コロナで社会増減の社会増が減少した」こととも重複するが、東京都の住宅価格が高いことも転出理由が増えた遠因となっている。株式会社不動産経済研究所によると、2021年における首都圏の新築分譲マンションの平均価格は6,260万円となっており、バブル期の1990年の6,123万円を上回って過去最高となっている。
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/493/s2021.pdf
テレワークで仕事部屋を確保したいというニーズがあっても、都内で手頃な価格で広い間取りの家を購入できる状況であれば、都内にとどまった人も多かったと思われる。しかしながら、都内では価格が高過ぎて広めの物件を購入できない人も多いため、近郊3県に人が流れる状況となった。都内の物件の価格が高いことは、転出者を増やした遠因となっている。
過去にもバブル期には東京都の人口が減少する現象が見られたが、バブル期と同等以上の価格水準となった2021年も住宅価格が人口減少に影響を与えたといえるだろう。
減少要因③:外国人が減ったため
新型コロナウイルスにより外国人の入国制限が行われたことで、外国人が減ったことも東京都の人口減少要因となっている。2021年における「社会増減」と「自然増減」以外の要因である「その他」は21,807人の減少となっている。
「その他」の内訳は、日本人が2,979人の増加、外国人が24,786人の減少となっており、外国人の登録人口が減ったことの影響が大きい。外国人の居住に関しては、新型コロナウイルスの影響が収まれば、一定数の回復は期待できると思料される。
減少要因④:自然減が拡大傾向にあるため
自然減が拡大傾向にあることも東京都の人口減少要因となっている。自然減は、2020年の▲18,537人から、2021年は▲30,682人となっており、12,145人も増えている。
前出の「都民ファーストでつくる「新しい東京」 ~2020年に向けた実行プラン~」においても、東京は今後後期高齢者が増えていくことから、自然減が増えることが予想されている。同資料では2025年には自然減が社会増を上回ることが想定されており、東京都の人口減少は近い将来に常態化することが見込まれる。
人口減に伴う不動産市場への影響
人口減少が不動産価格に与える影響は大きいが、不動産価格は人口減少だけでは決まらない。実際、日本全体の人口は2008年頃から減少が継続しているが、日本全体の地価公示の平均価格は2016年から2020年にかけて上昇している。つまり、人口だけでは不動産の価格は決まっていないということになる。
国土交通省の不動産鑑定評価基準によれば、不動産の価格を形成する要因は、一般的要因、地域要因、個別的要因の3つがあり、さらに一般的要因は自然的要因、社会的要因、経済的要因、行政的要因の4つに分かれている。
人口は一般的要因のうち、社会的要因の1項目にすぎず、数ある価格形成要因の1つにすぎない。そのため、東京都の人口が減ったからといって、すぐさま売買や賃貸に影響が出るとは言い切れないのだ。
しかしながら、東京都の人口減少と合わせて気になるニュースもある。それは2022年に入ってから住宅ローンの金利が上昇基調に変化してきたということだ。住宅ローンの低金利は、不動産価格上昇の主たる要因となってきた。日銀は超低金利政策を貫いてきたが、海外の中央銀行が利上げに踏み切っている流れを受け、金利を上げざるを得ない状況になりつつある。
そのため、東京都の人口減少に住宅ローンの価格上昇が加わることで、不動産価格が下がるということは予想できなくもない。不動産価格が下落する材料は揃いつつあり、楽観視できない状況となっている。
公開日:







